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運転資金は利益がなくても借りられる、はウソ

運転資金は利益がなくても借りられる、はウソ

運転資金は利益がなくても借りられる、というハナシがありますが。それは、ウソです。銀行から借入をするには、やっぱり利益が必要なんだ。その理由についてお話をしていきます。

目次

運転資金は利益がなくても借りられる。

銀行から借りたおカネの返済原資は「利益」、だというハナシがあります。が、半分は正解で、半分は不正解です。実は、「利益がなくても返済できる借入」というものもあります。

1つは、手元に置いておくおカネを増やすための借入です。借りたおカネを使わずに置いておく限り、利益がなくとも、そのおカネで返済をすることができます。

そして、もう1つが「運転資金」を資金使途(おカネの使いみち)とする借入です。ここで言う「運転資金」とは、「売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産(在庫)ー仕入債務(買掛金・支払手形)」で計算される金額を言います。

その運転資金の借入もまた、利益がなくても返済できる。転じて、運転資金を資金使途とする借入であれば、利益がなくても借りることができる、というハナシがあります。なぜなら、売上債権や棚卸資産はいずれ現金化できるものであり、それこそが返済原資だからです。

それに、運転資金の借入については、実質的に「毎月返済なし」で借りっぱなしにすることもできます。そのあたりくわしくは、別の記事にまとめました↓

というように、「運転資金は利益がなくても借りられる」と言われるわけですが、それはウソです。ウソは言い過ぎにしても、利益がなくても「手放し」で借りられるものではありません。

運転資金の借入であっても、やっぱり利益は必要なんだ。その理由について、お話をしていきます。具体的には、こちらです↓

運転資金もまた、利益がなくては借りられない理由
  • 赤字補てんになるから
  • 粉飾を疑われやすくなるから
  • 自己資本が増えないから

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

運転資金もまた、利益がなくては借りられない理由

赤字補てんになるから

運転資金を資金使途とする借入の返済原資は、売上債権や棚卸資産だと前述しました。売上債権とは、売上代金の未回収額であり、いずれ回収すれば「おカネ」になります。棚卸資産もまた、いずれ販売すれば「おカネ」になります。

ゆえに、運転資金を資金使途とする借入の返済原資は、売上債権や棚卸資産です。

とはいえ、もし、運転資金の借入をしようとしている会社が「赤字」だったらどうでしょうか。結果として資金繰りは悪くなりますから、運転資金として借りたおカネが「赤字の補てん」に使われることもありえます。

すると、売上債権や棚卸資産では返済原資としては不足することもあるわけですから、銀行としては融資がしづらくなるものです。

最終的に融資が受けられるかどうかは、「赤字の額しだい」というところはありますが、原則、「黒字が融資の条件」であるのは、運転資金を資金使途とする融資も同じだと考えておきましょう(いっぽうで、設備資金を資金使途とする融資は、黒字が大原則・大前提です)。

赤字に加えて、「売上が減少傾向」や「現預金がわずか(売上高1ヶ月分未満)」などの状況が重なると、ますます融資は受けにくくなります。

運転資金の借入だからといって、「利益がなくてもだいじょうぶ」などとは考えないように気をつけましょう。だとすれば、借入のタイミングは「黒字」のときです。

黒字のときこそ、銀行借入の絶好のタイミング。将来、必要になるであろう借入であれば、必要になったときに借りるのではなく、あらかじめ、借りやすいときに借りておく。これが、中小企業の財務戦略、中小企業の銀行対応です。

粉飾を疑われやすくなるから

赤字の場合に、問題があることは前述しました。これに関連して、赤字ではなくとも、「黒字がわずか(利益が数万円〜数十万円とか、売上高利益率が1%未満とか)」という場合にも、問題が生じます。

つまり、利益を返済原資としない運転資金の借入であっても、黒字がわずかであれば借りられなくなることもある。その理由は、銀行から「粉飾」を疑われやすくなるからです。

赤字になりそうな会社の社長は、赤字で銀行借入できなくなることを避けるために、粉飾(利益の水増し)をはかることがあります。

そんな粉飾の王道が、「架空売上」や「架空在庫」です。

架空売上とは、文字どおり、架空の売上であり、ほんとうはありもしない売上を「帳簿上」つくりあげることを言います。このとき、架空の売上債権が発生するのがポイントです。同様に、架空在庫によって、架空の棚卸資産が発生します。

架空債権も架空在庫も、どちらも架空であり、実際には無いものなのですから、いずれ「おカネ」に変わることはありません。あくまで、利益を水増しするために生じた「副産物」でしかありません。

にもかかわらず、「売上債権+棚卸資産ー仕入債務」で計算した運転資金の額を、銀行が融資するわけにいかないことはわかるでしょう。架空分については返済原資はなく、貸したおカネを回収できなくなる可能性が高いからです。

なにより、銀行としては「粉飾をするような会社におカネは貸せない」との思いもあります。

というわけで、「赤字の場合」や「黒字がわずかな場合」には、銀行から粉飾を疑われやすく、結果として、運転資金の借入がしづらくなるものと考えておきましょう。

自己資本が増えないから

運転資金もまた、利益がなくては借りられない理由、さいごは「自己資本が増えないから」です。銀行が、融資審査の際によく見ている指標の1つに「自己資本」があります。

自己資本とは「純資産」のことであり、具体的に言えば、貸借対照表の「純資産の部」の合計額です。その自己資本の額が多いほど、「財務の安全性が高い」というのが銀行の見方になります。

自己資本を「資産ー負債」と置き換えてみれば(自己資本=資産ー負債です)、自己資本の額が多いほど、財務が安全であることは「イメージ」としても理解できるでしょう。

実際に、資産が多くて負債が少なければ(=自己資本が多ければ)、いざとなったら資産を現金化することで負債を完済することができますから安全・安心です。

では、自己資本はどうすれば増えるのか? どのように増やすのがよいのか? 結論は、「利益を積み上げること」だと言えます。

そもそも、毎年の利益(税引後利益)は、純資産の部を構成する勘定科目の1つ「利益剰余金」に累積されます。したがって、利益剰余金の額は「創業から現在までの利益の累計額」です。その「利益剰余金」が増えることで、純資産の部の合計額も自動的に増加します。

いっぽうで、負債を減らすことで「自己資本」を増やせばいいじゃないか? という考え方もありますが。たとえば、繰り上げ返済をするとなれば、たしかに負債は減りますが、資産(現預金)も減りますから、自己資本は増えません。

なので、自己資本を増やすのであれば、本質的には「利益を増やす・利益を積み上げる」ことです。これができずにいると、前述したとおり利益剰余金は増えず(赤字の場合には利益剰余金が減ります)、自己資本は少なくなる。結果、銀行からの融資は受けにくくなる。

たとえ、返済原資が利益ではない運転資金の借入だとしても… ということになります。利益がない・利益が少ないことの影響は多岐に及ぶことを覚えておきましょう。

まとめ

運転資金は利益がなくても借りられる、というハナシがありますが。それは、ウソです。銀行から借入をするには、やっぱり利益が必要なんだ。その理由についてお話をしてきました。

運転資金の返済原資は、売上債権や棚卸資産であり、利益ではありません。ですが、だからと言って、「利益がなくても借りられるかどうか」はまた別のハナシであることを理解しておきましょう。

運転資金もまた、利益がなくては借りられない理由
  • 赤字補てんになるから
  • 粉飾を疑われやすくなるから
  • 自己資本が増えないから
運転資金は利益がなくても借りられる、はウソ

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