メインバンクがネット銀行、という会社が増えています。ネット銀行にはメリットがあるものの、銀行融資についてはデメリットもあるので気をつけましょう、というお話です
メリットばかりのようにも見えますが。
銀行から融資を受ける会社にとって、「メインバンク」は大事な存在です。最近では「ネット銀行」をメインバンクとする会社が増えていると言われます。
ここで言う「ネット銀行」とは、「リアルの店舗を持たずに、インターネット上での取引を中心に営業している銀行」です。ネット銀行はなんと言っても便利だし、振込手数料も安い。それにいまは、融資だってしくれる。しかも速い!
と、メリットばかりのようにも見えますが。実はデメリットもある、ということは理解しておくようにしましょう。では、そのデメリットとは? 具体的には次のとおりです↓
- 融資条件が悪くなる
- いざというときに困る
- 事業支援が受けられない
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
メインバンクがネット銀行の会社に起きる銀行融資のデメリット
融資条件が悪くなる
冒頭でもふれたとおり、いまは、ネット銀行も融資をしています。
申込みから入金まで、インターネット上で完結することから、「オンライン融資」とも呼ばれるものです。通常の銀行融資に比べると、審査が速く、提出書類がない(あるいは少ない)のは、会社にとってメリットでしょう。
いっぽうで、「融資条件が悪くなる」のは、ネット銀行で融資を受けるデメリットになります。通常の銀行融資に比べると、「融資金額が少ない、返済期間が短い、金利が高い」というのが、オンライン融資の特徴です。
たとえば、「融資金額 300万円、返済期間 1年、金利 3%」でしか借りられないとしたら、多くの会社にとって、通常の銀行融資に比べると「あまりに不利」な条件だと言えます。
通常の銀行融資であれば、会社の規模や状況にもよりますが、融資金額は数千万円単位、返済期間は3〜5年くらい、金利は1%〜2%ていど、といったところでしょう。
したがって、メインバンクがネット銀行の会社が融資を受ける場合には、おのずと融資条件が悪くなるのはデメリットです。
ただし、オンライン融資は年々、融資条件が良くなっています。融資金額の上限は上がり(1,000万円単位)、返済期間の上限は長くなり(5年ていどまで)、金利の下限も下がりました(1%台)。今後はますます、良くなるものとおもわれます。
とはいえ、オンライン融資を利用するためには、特定の銀行を利用していたり、特定の会計ソフトや特定のサービスを利用していなければならない、という「条件」がツキモノです。
よって、オンライン融資は、通常の銀行融資に比べると「利用者の範囲は狭い」というデメリットもあることを覚えておきましょう。
いざというときに困る
売上が減ってしまった、急な損失が発生した… そんなときには、おカネが必要になるものであり、銀行からの融資を必要とすることもあるでしょう。
通常の銀行融資であれば、銀行は「これまでの実績」と「これからの将来性」を評価して、融資の検討をおこないます。これに対して、ネット銀行の融資はどうかというと。
基本的には、「いま現在の状況」を重視します。これまでの実績や、これからの将来性をまったく加味しないわけではありませんが、通常の銀行融資に比べるとウエイトは低いと言ってよいでしょう。
したがって、いま現在の状況が悪いと、ネット銀行からの融資は受けにくくなる。受けられるとしても、融資条件が悪くなる(とくに、融資金額が少なくなる)。というのは、会社にとってデメリットです。
また、新型コロナのときのように、国や地方自治体の支援による融資(いわゆるゼロゼロ融資)を受けられないというデメリットもあります。あくまで、ネット銀行独自の融資に限られますから、いざというときには心元ないものがあるでしょう。
だったら、いざというときには、通常の銀行に駆け込めばいい。というのは、間違いです。銀行は、初めての相手を警戒します。言うまでもなく、素性も状況もわからないからです。なので、ふだんからお付き合いをしておくことが大切になります。
これに関連して、通常の銀行融資では、ふだんから「預金取引(売上入金や経費・給与の振込など)」をしておくことが、いざというときには役立つことを覚えておきましょう。
預金取引には「手数料」が発生するからです。現状の低金利にあっては、手数料収入が銀行の大事な収入源になっています。これが、いざというときにでも、銀行が会社を支援する「動機」になりえるのです。
つまり、預金取引が活発な会社は、銀行にとって重要顧客。困っているのであれば、支援を検討しよう、ということにもなるわけです。
振込手数料が安いからといって、ネット銀行ばかりで預金取引をしていると、ふだんはよくても、いざというときには融資が受けられない・受けにくくなるかもしれません。
事業支援が受けられない
銀行は、融資をするだけが仕事ではありません。いま、銀行では「再編(提携・統合・合併)」が進んでいることもあり、生き残りをかけて、融資先の「事業支援」にも積極的です。
ここで言う「事業支援」とは、たとえば、ビジネスマッチング(売上先・仕入先などの紹介)や、経営・財務に関するコンサルティング、事業承継支援など。
大企業に比べると、社内リソースや情報不足の状況にある中小企業にとって、銀行の事業支援は「ありがたいもの」でもあるはずです。が、ネット銀行に「事業支援」はありません。
これを聞いて、「別に事業支援など必要ない」というのも、1つの考え方でしょう。
けれども、数多くの会社を見てきた「銀行の目」が、中小企業にとって、社長にとって、大きなチカラになりうるものなのではないか? というのが私見です。
そもそも本業支援の「本質」は、「課題の共有」にあります。つまり、会社が抱えている課題を、銀行にも共有してもらう。そのうえで、銀行の「知見」を活かして、会社と銀行がいっしょに課題の解決を目指す。これが本質であって、ビジネスマッチングやコンサルなどは手段に過ぎません。
では、課題が共有できるとどうなるか? 社長は「孤独」ではなくなります。中小企業では、「相談相手」がいなくて(あるいは少なくて)困っている社長がいるものです。
また、課題の共有ができれば、銀行は融資にも積極的になれます。課題の解決を目的とした資金であれば、融資をしようと考えられるようになるからです。
課題の解決は、融資先の持続・成長につながるものであり、銀行にとってもメリット(たとえば融資拡大)があります。とくに、メインバンクは積極的にとりくむことでしょう。
そういった事業支援を、会社にとってのメリットと考えるのであれば、ネット銀行をメインバンクにするのはデメリットです。
まとめ
メインバンクがネット銀行、という会社が増えています。ネット銀行にはメリットがあるものの、銀行融資についてはデメリットもあるので気をつけましょう、というお話をしてきました。
いざ、ネット銀行以外の銀行(リアル店舗の銀行)から融資を受けようとしても、銀行との関係性を築くのは時間がかかるものです。そのときになってあわてることがないように、ネット銀行以外の銀行とのお付き合いについても検討しておきましょう。
- 融資条件が悪くなる
- いざというときに困る
- 事業支援が受けられない