社長にとって、いちばんの心配事である「資金繰り」。その資金繰りが厳しくなる会社に無いものとは…? についてお話をしていきます。反面教師として押さえておきましょう。
社長にとって、いちばんの心配事。
社長にとって「資金繰り(=おカネのやりくり)」は、いちばんの心配事だと言ってよいでしょう。当然ながら、おカネがなくなれば会社はつぶれてしまうからです。
なので、社長は「資金繰りが厳しくならないように」しなければいけません。にもかかわらず、資金繰りが厳しくなるのはなぜなのか? どうしたら、資金繰りが厳しくなるのを避けることができるのか?
そのヒントとして、「資金繰りが厳しくなる会社に無いもの」を3つ挙げてみます。次のとおりです↓
- 預金が無い
- 借入が無い
- 社長のおカネが無い
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
資金繰りが厳しくなる会社に無いもの3つ
預金が無い
資金繰りが厳しくなる会社に無いもの、1つめは「預金」です。つまり、会社の預金残高が無い、あるいは少なくなると、資金繰りは厳しくなります。
って、そんなのあたりまえじゃないか! と、おもわれるかもしれません。預金が無いから困っているんだ! と、おもわれるかもしれません。
が、ほんとうは預金を持てたはずなのに、社長みずから預金を無くしてしまった。そういう会社もありますので気をつけましょう、というお話です。
ほんとうは預金を持てた、とはどういうことなのか? 大きく2つあります。まず1つは、節税という名目で、おカネをムダ使いしてしまったケースです。そして、もう1つは、おカネがあるうちに銀行借入をしなかったケースになります。
ケース1・節税の名目でムダ使い
利益が増えるほど税金も増えるため、利益を減らすために費用を増やす社長がいます。
飲み食いをしたり、モノを買ったり。それ自体が悪いわけではありませんが、そられが将来、利益を産まない費用であれば、ムダ使いだと言ってよいでしょう。
それに加えて、費用としておカネを支払えば、当然、その分だけ預金は少なくなります。たしかに、利益が減って税金は減るのですが、支払ったおカネ以上に節税できるわけではありません。
したがって、節税するよりも、節税しないほうが、おカネを残すことができたのです。また、利益が減ることで、銀行借入がしづらくなってしまいます。
目安として、減った利益の金額の 10倍の借入が難しくなる… と、考えておきましょう。節税できた金額に比べて、大きな代償です。そのあたり、くわしくはこちらの記事にも書きました↓
ケース2・銀行借入をしなかった
銀行は、おカネを貸すときに「返済原資」を気にしています。貸したおカネが返してもらえるかどうかが、心配だからです。
この点で、もっとも頼りになる返済原資は「預金」になります。預金、つまり、おカネがあれば、その会社が少々赤字になったとしても、しばらくは返済もできるからです。
なので、預金があるときほど銀行借入がしやすい、ということを覚えておきましょう。にもかかわらず、預金があるときには「借入は不要」と考えて、借入をしない社長は多いものです。
さらには、繰り上げ返済をする社長もいます。すると、どうなるか? 「預金が無い」という現在につながるわけです。もちろん、預金が無い今となっては、銀行借入は困難です。
いっぽうで、預金があったときに、できる借入をしておけば、「違った今(預金がある)」があったかもしれません。
借入が無い
資金繰りが厳しくなる会社に無いもの、2つめは「借入」です。借入が無いのはいいことじゃないか? と、おもわれるかもしれませんが。必ずしも、そうとは言えないのです。
端的に言えば、借入が無い(あるいは少ない)けれど、預金も無い(あるいは少ない)というケースが、それにあたります。
たとえば、「預金 100万円で、借入ゼロ」のA社と、「預金 1億 100万円、借入 1億円」のB社と。どちらがつぶれにくそうか? といえば、B社だと考えられます。
両社は、どちらも「正味 100万円の預金」ではありますが、B社には1億 100万円の預金残高があるからです。たしかに、借入が1億円あるものの、なにかあっても1億 100万円の預金で、しばらくしのぐことはできるでしょう。
ところが、A社にはそもそも 100万円の預金残高しかありません。なにかあったら、一気に資金ショートを起こす可能性があります。
だったら、そのときに銀行借入をすればいい。と、考えるのであれば間違いです。銀行は、借入が無い会社を警戒します。「借入しない会社」ではなく、「借入できない会社」だと考えるからです。
借入は「負債・債務」であると同時に、「信用」でもあります。信用があるからこそ、借入できるのであって、「借入ゼロ」は「信用ゼロ」と同じだ、という見方もあるわけです。
結論として、ふだんから銀行との「お付き合い(=借入)」はしておきましょう。そのお付き合いが、信用になり、いざというときにも支援をしてもらえる可能性が高まります。
今後いっさい、将来にわたって絶対に銀行借入はしない。借入するくらいなら、会社をつぶしてもかまわない。というのであれば、「借入が無い」のもいいでしょう。
ですが、今後、借入をする可能性があるのなら、借入できるとき(利益が出ている・預金があるとき)に借入をしておくのがおすすめです。
社長のおカネが無い
資金繰りが厳しくなる会社に無いもの、3つめは「社長のおカネ」です。会社のおカネではなくて、社長個人のおカネの話になります。
会社と社長とは「一心同体」というのは、中小企業の特徴の1つです。実際に、「社長=大株主」の中小企業は多く、会社になにかあれば、社長が個人の財布からおカネを出すことは少なくありません。
それが良いか悪いか、という議論はさておき。会社の資金繰りをなんとかするには、社長個人のおカネを入れるしかない… というケースはあるでしょう。そのときに、おカネはあるのか?
あれば、なんとかできますが、なければ、なんとかできません。すると、会社の資金繰りはいっそう厳しいものとなります。と考えると、社長個人のおカネがあるかどうかは重要なポイントです。
では、どうするか? 社長は、会社から受け取る役員報酬のなかから、いざというときのおカネをためておきましょう、ということになります。
そういったおカネがあることを、銀行に情報提供することで、融資を引き出す材料にすることも可能です。銀行もまた、会社と社長は一心同体と見ています。ですから、社長個人のおカネがあれば、それも返済原資と見るのです。
個人のおカネのことまで銀行に教えたくはない! と、おもわれるかもしれませんが。教えたからといって、担保に取られるわけでもないのですから、あえて情報提供することで借入しやすくすることも検討してみましょう。
社長個人のおカネがあるのに、かたくなに隠しているようだと、銀行に対しては「無いのといっしょ」ということになってしまいます。それはそれで、もったいない話です。
まとめ
社長にとって、いちばんの心配事である「資金繰り」。その資金繰りが厳しくなる会社に無いものとは…? についてお話をしてきました。反面教師として押さえておきましょう。
- 預金が無い
- 借入が無い
- 社長のおカネが無い