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事業性評価融資を受けるためのコツ3選

事業性評価融資を受けるためのコツ3選

以前に比べて浸透しつつある事業性評価融資。とはいえ、すべての会社が受けられるわけでもありません。というわけで、事業性評価融資を受けるためのコツについてお話をしていきます。

目次

銀行単独で収集できる情報は限られている。

融資を受けている会社の社長が、知っておくべきことの1つに「事業性評価」があります。

その事業性評価とは、「財務データや担保・保証の有無に依存せず、事業の内容や将来性を評価する」ことです。

かつては、銀行が融資の審査をする際、「財務データや担保・保証の有無に依存」をしていました。つまり、決算書(財務データ)の良し悪しを重視して、担保・保証ありきの融資が多かったわけです。

が、金融庁はそのような状況を良しとせず、2014年以降、事業性評価を推し進めてきた経緯があります。その結果、いま現在では、事業性評価による融資が浸透しつつある状況です。

とはいえ、すべての会社が事業性評価による融資を受けられる、というわけでもありません。なぜなら、銀行は「事業性評価に必要な情報」がなければ、事業性評価をすることはできないからです。

そして、その情報は「会社のほうから提供」しなければ知り得ないことも多く、銀行単独で収集できる情報は限られていると言えます。では、会社がどのような情報を銀行に提供すればよいのか?

本記事では、事業性評価融資を受けるためのコツとしてお話をしていきます。具体的には次のとおりです↓

事業性評価融資を受けるためのコツ3選
  1. だれに・なにを・どのように売るか
  2. 技術よりも効果をあきらかにする
  3. これからどうするかを伝える

事業性評価融資を受けるためのコツ3選

だれに・なにを・どのように売るか

冒頭でもふれたとおり、事業性評価とは「事業の内容や将来性を評価する」ことを言います。そこで、まずは「事業の内容」です。自社の事業の内容は何なのか?

そんなことは、銀行だって知っているだろう。と、おもわれるかもしれませんが。必ずしも、そうではないことに注意が必要です。

そもそも、事業性評価で言う「事業の内容」とは、「小売業」や「製造業」といったレベルのものではありません。もう一歩踏み込んだレベルの、いわゆる「ビジネスモデル」がそれにあたります。

では、ビジネスモデルとはどういうことなのか? 端的に言えば、「だれに・なにを・どのように売るか」です。それらを具体的に、銀行へ伝えられるようにしましょう。

たとえば、同じ小売業であっても、どのような「客層(だれ)」に売るかという点で、会社ごとに違いが生じます。また、どのような「商品(なに)」を売るかという点でも、違いが生じます。

さらには、「リアル店舗での販売か、ネット販売か(どのように)」といった違いもあります。また、「販売価格」や「アフターサービス」なども、「どのように」に関わるところです。

こういった「ビジネスモデル」を銀行がわかっていないと、事業性評価をすることはできません。事業性評価という言葉が示すとおり、「事業」の把握が評価の起点になるからです。

決算書を見れば、事業の内容はわかるはずだ、と考える社長がいます。けれども、決算書を眺めるだけでは「だれに・なにを・どのように売るか」はわからないものです。試しに、知らない会社の決算書を眺めてみればわかるでしょう。

ですから、いくら銀行員といえども、決算書を渡すだけでは事業の内容はわからず、事業性評価は進まないものと考えておかねばなりません。

なお、いちどクチで言ったらわかるだろう、というのも注意が必要です。たったいちどの説明を聞いただけでは、すべてを記録・記憶できるものではありません。

伝えるのであれば、まずは「文書」にすること。そのうえで、折に触れて、事業の内容についてを話題に、銀行担当者と話をするのがおすすめです。

でも、どのような「文書」をつくればよいのか? 経済産業省が提供しているツール「ローカルベンチマーク」のなかにある、「商流把握」と「業務フロー」を利用するとよいでしょう。自社のビジネスモデルを、わかりやすく整理することができます。

技術よりも効果をあきらかにする

事業性評価の対象である「事業の内容」には、自社が持っている「技術」や「ノウハウ」も含まれます。他社にはない、独自の技術やノウハウがあれば、「事業の将来性」にもつながるところです。

その技術やノウハウを伝えるときに、気をつけるべきことがあります。それは、技術やノウハウの「内容」ばかりを伝えようとしすぎることです。

たとえば、ネジを製造している会社が、製造技術のすばらしさを伝えようと、専門用語たっぷりのお話に終始してしまうことがあります。これだと、聞いているほうは「なんかスゴそうだけど…」くらいの理解しかできません。

そこで、銀行に伝えるのであれば、技術やノウハウの「内容」よりも、その「効果」に重点を置きましょう。自社の技術やノウハウは、どのような「効果」をもたらしているのか? です。

なお、ここで言う「効果」とは、「借りたおカネの返済に、どれだけ貢献できるか?」ということでもあります。言い換えると、「どれだけの利益を生み出すのか?」です。

さきほどのネジの例であれば、その技術・ノウハウを用いたネジは「どれくらの金額(単価)で、どれくらい売れるのか(売上高)」。同業他社との比較(業界平均・業界シェアなど)もしながら伝えられるとよいでしょう。

あわせて、「そのネジがどこに使われているのか?」も重要な情報です。言い換えると、「エンドユーザーはだれなのか?」ということでもあります。

再度、ネジの例で言えば、「ホームセンターなどで一般消費者向けに売られているネジ」と、「大手メーカーが製造する医療用器械に使われるネジ」とでは、事業の内容や将来性に差が出るというものです。

ゆえに、「ウチの会社はネジをつくっています」というのでは、銀行に対する説明としては不十分であることを理解しておきましょう。

これからどうするかを伝える

繰り返しになりますが、事業性評価の対象には「事業の将来性」が含まれます。将来性を示すにあたって必要になるもの、ずばり「経営計画書」です。

経営計画書とは、文字どおり「計画」であり、会社の将来に対する考え方や、目指す方向、具体的な行動などの情報をまとめた書類をいいます。

ですから、まず「計画がある」という点で、「計画がない」会社に比べて、将来に対する関心・意欲の高さがあらわれている、と言えるでしょう。

実際、経営計画書を作成している中小企業は少ないことから、「経営計画書がある会社に対しては一目置いている」という銀行員のハナシがあります。

とはいえ、もちろん、計画書がありさえすればよいわけではありません。極端を言えば、その計画が「絵に描いた餅」なら、将来性を評価する情報にはなりえないからです。

では、将来性を評価するのに値する計画とはどのようなものなのか?

まずは、「現状分析・現状把握」があるかどうかです。いきなり計画を立てるのではなく、前提条件としての「現状」はどうなっているのか? これが抜け落ちている計画は少なくありません。

つまり、社長が鉛筆ナメナメつくった「数値計画」を、銀行は信用しないということです。

なので、経営計画をつくるのであれば、「3C」や「SWOT」といったフレームワークを利用しながら、現状分析・現状把握するところからはじめましょう。そのうえで、現状の課題・問題点を特定し、その解決策としての「行動計画」を立てます。

数値計画は、行動計画の「結果」として捉えるべきものです。現状分析・現状把握なき経営計画書、行動計画なき経営計画書は、真の経営計画書にあらず… と心得ておきましょう。

また、経営計画書は「つくっておしまい」ではありません。ところが、つくっておしまいの会社も少なくないのです。銀行は、それを知っています。ゆえに、「経営計画書作成、その後」に銀行は注目しています。

まずは、行動計画どおりに「実行」しているのかどうか? です。決めたことを実行できない会社は、数字の良し悪し以前に信用を失ってしまいます。

次に、数値計画に対して「実績」がどうか? です。8割以上の計画達成が、ひとつの目安になります。この点で、大風呂敷を広げた数値計画をつくっているとアダになります。

ちなみに、毎月の試算表をつくっていない… というのは論外です。計画を立てておきながら、実績との比較、検証をしていないことになります。やはり、銀行の信用を失うものと考えておきましょう。

まとめ

以前に比べて浸透しつつある事業性評価融資。とはいえ、すべての会社が受けられるわけでもありません。というわけで、事業性評価融資を受けるためのコツについてお話をしてきました。

そのコツとして、会社は銀行に対して、どのような情報を提供すればよいのか? を押さえておきましょう。

事業性評価融資を受けるためのコツ3選
  1. だれに・なにを・どのように売るか
  2. 技術よりも効果をあきらかにする
  3. これからどうするかを伝える
事業性評価融資を受けるためのコツ3選

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