税理士が銀行融資支援をするときの注意点をまとめます。知らないまま支援に関われば、お客さまも税理士自身にも不利益が及ぶところです。ぜひとも、押さえておきましょう。
銀行融資支援をしている税理士は少数派
税理士として、お客さまが銀行から融資を受けるお手伝いをしています。この点で、ふだんは「社長向け」の情報が多い当ブログですが、きょうは「税理士向け」のお話です(社長にも役立つ内容ではあります)。
では、どんなお話かというと。「税理士が銀行融資支援をするときの注意点」になります。言うまでもありませんが、どんな仕事にも「注意点」は存在するわけで、銀行融資支援も同様です。
とはいえ、積極的に銀行融資支援をしている税理士は、どちらかといえば少数派でしょうから、その注意点は「知らない」という税理士は、けして少なくないものと考えます。
知らないまま銀行融資支援に関われば、お客さまも税理士自身にも不利益が及ぶことはあるものです。そうならないように、本記事の内容をお役立ていただければとおもいます。
ずばり、税理士が銀行融資支援をするときの注意点は、次のとおりです↓
- すべてのお客さまを支援する
- 銀行とのコネを強みと考える
- 借りることを目的と捉える
これらは、銀行融資支援においては「勘違い・間違い」と言えるものです。このあと、順番に確認していきましょう。
税理士が銀行融資支援をするときの注意点
すべてのお客さまを支援する
使命感が強い税理士であるほど、誠実で親身な税理士ほど、「すべてのお客さまを支援する」ことを目指しがちです。ところが、銀行融資支援については注意しなければいけません。
なぜなら、どんなに支援をしようとも、融資が受けられないお客さまは存在するからです。
たとえば、3期連続で赤字、加えて債務超過、見るべき担保もない… こういったお客さまが、銀行から融資を受けるのは困難だと言えます。ぜったいにムリ! とまでは言いませんが、かなり難しい状況です。
お客さまに対して税理士が「がんばります」と伝えるのも悪くはありませんが、過度な期待をいだかせないように気をつけたほうがよいでしょう。
また、税理士が支援に時間をかけたのにもかかわらず、結局、融資が受けられない確率も高く、無報酬の仕事になることもありえます。税理士にとっては、正直に言って「損失」です。
これとは別に、融資の支援をしてはいけないお客さま、というケースもあります。たとえば、粉飾決算をしている・しようとしている会社や、資金使途違反をしている・しようとしている会社です。
粉飾決算も、資金使途違反(当初の資金使途とは違うことにおカネを使う)も、ルール違反であり、銀行に見つかれば、融資が受けられなくなってしまいます。そもそも、倫理的にも問題がありますから、そういった会社を税理士が支援するわけにもいきません。
ですから、わたしは「すべてのお客さまを支援することはできない」と考えるようにしています。
税理士自身、あるいは、職員を含めた税理士事務所としてのリソースは「有限」です。限られたリソースをどう使うか? という「優先順位」が必要になります。
すべてのお客さまを支援しようとするあまり、融資を受けられる見込みが少ないお客さまに時間をかけすぎて、融資を受けられるはずのお客さまを支援できない… ということがないように。注意が必要です。
銀行とのコネを強みと考える
銀行とのコネが大事だ、と考えている社長がいます。また、銀行とのコネを強みだと考えている税理士もいます。それ自体を、否定したり、非難するつもりはありません。
が、コネには、それほど大きな重要性や強みはない、というのがわたしの考えです。
なにをもって「コネ」と言うのか? という疑問はありますが。ひとまず、「どこかの銀行の、どこかの支店長と面識がある」のをコネだとしてみましょう。
では、その支店長に対して、税理士が「うちのお客さまに融資をお願いします」と言えば、融資が受けられるのかどうなのか?
もし、そのお客さまが、前述したような「3期連続で赤字、加えて債務超過、見るべき担保もない…」という会社であれば、コネがあったとしても融資を断られることでしょう。
コネがあるからといって、「融資審査が甘くなる」ことはないからです。それでも甘くなるようであれば、「大問題」であり、そんな銀行・そんな支店長でだいじょうぶなのか?(だいじょうぶじゃない)ということになってしまいます。
それはそれとして、コネがまったく役に立たないわけではありません。面識がないよりは、あったほうがよいのは確かです。銀行も、初見の会社は警戒しますから、税理士の紹介であれば、その警戒をやわらげることができます。
なので、コネがないよりはあったほうがいい。けれども、コネを強みにできるほど、銀行融資支援に「必須」のものではない。と、考えておくことをおすすめします。
借りることを目的と捉える
銀行融資支援の目的は、借りることではありません。銀行融資は、資金調達の「手段」に過ぎず、その目的は「手元のおカネを増やすこと」だと、わたしは考えています。
極端な例ですが、「預金 100万円、借入ゼロ」のA社と、「預金 1億 100万円、借入1億円」のB社と、どちらが財務的に安全そうか? といえば、わたしが選ぶのはB社です。
B社の借入は多いかもしれませんが、実質的にはA社と同じ「預金 100万円、借入ゼロ」で、いわゆる「実質無借金」ですし、なにより、手元に1億円のおカネがあります。
ちょっと赤字になったとしても、そのおカネでしばらくはしのぐことができますから、B社はA者に比べて「安心・安全」だと言ってよいでしょう。
では、ただただ借りるだけ借りればいいのか、といえば。もちろん、そんなことはありません。融資支援によって借入できたとしても、そのおカネを会社がムダ使い(将来の利益・将来のおカネにつながらない支出)をしてしまえば、借入だけが残ってしまいます。
したがって、銀行融資支援では、融資を受けられるように支援をするのと同時に、手元のおカネを増やす・手元のおカネを減らさない支援も重要です。
また、借りること自体を目的に考えていると、「借りたいときに借りられればいい」という発想になってしまいます。それが実現できればよいのですが、実際には「借りたいときほど借りられない」ものです。
繰り返しになりますが、「3期連続で赤字、加えて債務超過、見るべき担保もない…」といった会社であれば、できれば借入したい状況でしょうが、借りられるケースは少ないでしょう。
ですから、銀行融資支援をするのであれば、借りやすいときに借りることを支援する。さらに言えば、借りやすい状況をつくって借りることを支援するのが大切です。
そのうえで、支援を通じて、お客さま自身に「銀行対応」を覚えていただくことも大切だと、わたしは考えています。税理士のリソースに限りがあるのは前述したとおりですし、いつまでも税理士がそばで支援できるとも限りません。お客さま自身で、銀行対応ができるのがベストです。
目先の融資を借りられればいい、ということではなく。中長期で融資を受けられるかどうか、中長期で手元のおカネを増やせるかどうか、にも目を向けてみましょう。
まとめ
税理士が銀行融資支援をするときの注意点をまとめました。知らないまま支援に関われば、お客さまも税理士自身にも不利益が及ぶところです。ぜひとも、押さえておきましょう。
- すべてのお客さまを支援する
- 銀行とのコネを強みと考える
- 借りることを目的と捉える
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