決算が近づいたら、「決算シミュレーションをしましょう」というハナシがありますが。社長は、決算シミュレーションの結果、具体的に何をチェックすればよいのかを押さえておきましょう。
イメージはできるが、具体的にはわからない。
社長がやるべきこと、について。決算が近づいたら、「決算シミュレーションをしましょう」というハナシがあります。
これを聞いて、なんとなくイメージはできるものの、「具体的には何をすればよいのか」まではわからない… という社長もいるようです。
そこで本記事では、「決算シミュレーションで社長は何をチェックすればよいのか?」のお話をしていきます。大きくは2つ、次のとおりです↓
- 利益はじゅうぶんか?
- 預金はじゅうぶんか?
シンプルではありますが、シンプルすぎて余計にわからない… というのであれば、このあとのくわしい説明を確認していきましょう。「より良い決算」を迎えるのに役立つはずです。
決算シミュレーションで社長は何をチェックすればよいのか?
利益はじゅうぶんか?
利益を出したい社長
社長であれば、「利益を出したい!」というおもいがあるでしょう。では、いくらの利益を出したいのか? と聞かれると、「よくわからない…」という社長はいるものです。
では、そもそも、いくらの利益が「妥当(=じゅうぶん)」と言えるのか? ひとつの目安として、「債務償還年数」という指標があります。算式であらわすと、次のとおりです↓
債務償還年数は、「いまの利益だと、何年で借入金を返済できるのか?」をあらわす指標です。
算式中の「借入金 ー 預金」は、「預金がある分の借入金は無いの同じ」ということを意味しています。「税引後利益 + 減価償却費」は、「税金を払ったあとに残る利益」であり、返済原資を意味しています。
減価償却費をプラスしているのは、「支出をともなわない費用だから」です。と言われても、よくわからなければ、ひとまずいまは「そういうもんなんだな」として暗記してしまいましょう。
そのうえで、債務償還年数の値は「10以下」を目指します。つまり、「いまの利益水準が続くとして、借入金を 10年以内で返済できる」ということです。
逆に、債務償還年数が 10年を超えるようだと、借入金に対して利益が少なすぎる(あるいは、利益に対して借入金が過大)だと考えられます。
銀行もまた、同様の見方をしているため、債務償還年数が 10年を超えると、融資が受けにくくなることを覚えておきましょう。ゆえに、決算では「債務償還年数は 10年以下」を目指すことになります。
なお、算式中の「借入金 ー 預金」について、決算日時点の借入金は、返済予定表からすぐにわかるはずです。いっぽうで、決算日時点の預金は、資金繰り予定表を作成することで、確認をする必要があります。
資金繰り予定表のつくり方は、こちらも参考にどうぞ↓
利益を出したくない社長
利益を出したい社長とは反対に、利益を出したくない社長もいることでしょう。なぜなら、利益を出せば出すほど「税金」が増えるからです。
決算シミュレーションの結果、たくさんの利益が出そうだ。たくさんの税金を払うことになりそうだ。それなら節税をしよう! と、社長が考えるのは当然です。
ただし、「利益を減らす節税」には気をつけましょう(利益を減らさない節税もあります)。利益を減らせば、前述した「債務償還年数」が 10年以下に近づいてしまうからです。
すると、いずれ資金繰りも悪くなりますし(返済できるだけの利益がないから)、銀行融資も受けにくくなってしまうことは、すでに話をしたとおりです。
節税も悪くはありませんが、「節税しすぎ(利益の減らしすぎ)」には注意しなければいけません。
預金はじゅうぶんか?
不十分なら、あえて借りておく
決算シミュレーションをするのであれば、社長は「利益がじゅうぶんか?」のほかに、「預金がじゅうぶんか?」についても確認しましょう。
さきほど、債務償還年数を計算するにあたって、預金の額を把握するために「資金繰り予定表」をつくりましょう、という話をしました。
そのうえで、決算日時点で「平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の3ヶ月分」以上の預金がありそうか? を確認します。3ヶ月分未満となれば、不十分という見方です。
なぜ、平均月商の3ヶ月分なのか? 仮に、3ヶ月のあいだ売上がまったくなくても、資金ショートを起こさずにすむからです。新型コロナでは、売上が激減した会社は多く、「3ヶ月分くらいの売上減少」は織り込んでおくのがよいでしょう。
では、シミュレーションの結果、決算日時点の預金が不十分(平均月商の3ヶ月分未満)となりそうであれば、いまのうちに融資を受けておくことを検討します。
これを聞いて、「おカネが少なくなってから借りればいい」と考えるかもしれませんが、おカネが少ない会社を、銀行は警戒することを忘れてはいけません。融資が受けづらくなります。
おカネがなくなってからではなく、おカネがあるうちにあえて借りておくのが、中小企業の銀行対応です。
預金シェア・借入シェアに注意
預金は「残高」だけではなく、「シェア」にも注意しましょう。ここで言う「シェア」とは、預金の総額に占める、各銀行ごとの預金残高の割合です。
たとえば、決算日時点の預金総額が 3,000万円、うちA銀行は 1,500万円、B銀行は 900万円、C銀行は 600万円と見込まれる場合。各銀行のシェアはそれぞれ、A銀行が 50%、B銀行が 30%、C銀行が 20%となります。
では、預金のシェアをどのように考えればよいか? 基本的には、「借入のシェア」に近づけることを目指します。
なので、借入についても、預金と同じように各銀行のシェアを計算してみましょう。このとき、借入シェアに対して、預金シェアが低い銀行があると、その銀行は「不公平」だと考えます。銀行にとって、預金は「担保」のようなものだからです。
もちろん、借入シェアと預金シェアとを厳密に合わせる必要はありませんが、できるだけ合わせるようにしましょう。
各銀行が、自行の借入シェア・預金シェアを知るのは、決算書を見たときです。したがって、決算日時点における各銀行の預金残高をイメージしておく、必要があれば各銀行の預金残高を調整しておく、ということになります。
また、借入シェアについては、「どこがメインバンクなのか」も確認をしておきましょう。メインバンクとは、端的に言えば、借入残高がもっとも多い銀行です。
決算日前にメインバンク以外の銀行から借入をしたことで、決算日時点では、メインバンクが入れ替わってしまうこともありえます。この場合、旧メインバンクからの印象が悪くなることはあるものです。
借入をするのであれば、社長は「決算日時点の借入シェア」もイメージしておくことが大切です。
まとめ
決算が近づいたら、「決算シミュレーションをしましょう」というハナシがありますが。社長は、決算シミュレーションの結果、具体的に何をチェックすればよいのかを押さえておきましょう。
- 利益はじゅうぶんか?
- 預金はじゅうぶんか?
ただシミュレーションしておしまい、というのでは効果も半減してしまいます。
ちなみに、決算シミュレーションは「10ヶ月め」あたりで実施するのがおすすめです。これより遅くなると、決算日までに打てる「策」が少なく、限られてしまいます。