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期首の売上減少は銀行融資にダメージがある

期首の売上減少は銀行融資にダメージがある理由

銀行融資を受けるにあたって、売上減少はよくありません。とくに、期首の売上減少はダメージがある。その理由と対策についてお話をしていきます。

目次

売上減少がとりわけよくないタイミング

会社が銀行から融資を受けるうえで、「売上減少」がよくないことは、多くの社長が理解しているでしょう。

その売上減少について、とりわけ銀行融資にダメージがある「タイミング」があります。それは、「期首」です。つまり、決算日を過ぎてしばらくのあいだに売上減少があると、銀行からの融資が受けにくくなります。

その理由は、次のとおりです↓

期首の売上減少は銀行融資にダメージがある理由
  • 粉飾決算を疑われる
  • 決算日に問題がある
  • 決算予測が危ぶまれる

これらの理由について、このあと順番に確認していきましょう。期首の売上減少を避けるために何ができるかの「対策」も、あわせてお話をしていきます。

期首の売上減少は銀行融資にダメージがある理由

粉飾決算を疑われる

3月決算の会社があったとします。直前の決算は黒字でした。そのうえで、決算日(3月31日)以降の4月や5月の売上が、前年に比べて大きく減少していたらどうでしょう?

銀行は、直前の決算の「粉飾(利益の水増し)」を疑います。実際に、決算日以降の売上を「前倒し」して、直前の決算を黒字にしようとする会社があるのを知っているからです。

もちろん、その前倒しが「適正」であればよいのですが、まだ売上とはいえない状態で前倒しする経理処理には問題があります。それを、銀行は警戒しているわけです。

4月や5月の売上を3月以前に前倒しすれば、当然、4月や5月の売上は少なくなります。また、3月以前の売上が「不自然」なほど大きくなっていることもあります。

そのあたりを銀行は、決算書や試算表から確認していることを覚えておきましょう。社長は「(粉飾が)バレていない」とおもっていても、実はバレていたりするものです。

銀行は粉飾だと気づいても、わざわざクチにすることはあまりありません。別に黙って、融資を断る、融資を引き上げればよいだけのことだからです。

したがって、「なにも言われていないからバレていない」とは考えないようにしましょう。

なお、粉飾をしていないとしても、「事実、3月の売上が大きく、4月や5月の売上が少ない」というケースもありえます。その場合、粉飾を疑われないように、売上の内容や納品状況などについて、銀行に説明をするのがおすすめです。

また、決算日以降の4月や5月などに、大きな費用・損失がある場合も、粉飾を疑われることがあります。本当は3月までの費用・損失を「先送り」したのではないか? と、銀行は考えるからです。やはり、事情を説明しておくのがよいでしょう。

決算日に問題がある

期首に売上減少がある会社では、資金繰りに問題が起きやすくなります。なぜなら、期首には「納税」があるからです。

さきほどの例で、3月決算の会社が黒字であれば、5月末までに納税をしなければいけません。ところが、4月・5月の売上減少によって、納税するおカネがない… ということが起こりえます。

こうなると、銀行融資も受けにくくなるわけで、1つの対策は「事前に納税資金の融資を受ける」ことです。ポイントは「事前に」というところで、「直前に」となると融資が受けにくくなります。

銀行は、「計画的な借入ができる会社(余裕を持って融資申込ができる会社)」を好みますし、融資をするにも審査に時間がかかるからです。

それはさておき、そもそもの話として、決算日は「売上が少なくなる時期(=閑散期)」にするのがよい、とされています。言い換えると、「期首は売上が多くなるように決算日を決める」ということです。

たとえば、毎年3月の売上が多くなるのであれば、3月を期首にして2月末を決算日にする、ということになります。すると、どうなるか? さきほどとは、逆のことが起こります。

決算後の期首は売上が多いので、資金繰りもよく、納税に困ることがありません。また、期首から好調なので、銀行からの融資が受けやすくなります。結果、さらに資金繰りは安定するので、社長は資金繰りから解放されて、経営に集中できるのがメリットです。

ちなみに、決算日を売上が少ない月に変えたはずなのに、その月の売上が多くなってしまった… というハナシが散見されます。お尻に火が点かないと(決算が近づかないと)動けない会社で見られる現象です。

決算日の変更を考えるときには、自社の「繁忙・閑散が起きている原因」を追及してからにしましょう。

決算予測が危ぶまれる

さきほど、期首から好調だと、銀行からの融資が受けやすくなる、という話をしました。

銀行融資については、期首の時点で「向こう1年に必要なおカネ(年度資金、と呼びます)」を借りてしまうのがセオリーです。期首が好調だと、それを実現しやすくなります。

ところが、期首に売上減少があると、銀行は決算予測を危ぶみます。つまり、「今期は赤字になるのではないか…?」と、心配をするわけです。すると、融資が受けにくくなります。

期首の時点で、年度資金の融資が受けられないと、社長は「1年中ずっと」資金繰りのことを考えなければなりません。そうなれば、経営に集中することができず、事業の持続・成長に悪影響が出ます。結果、資金繰りが悪くなり、ますます融資が受けにくくなる… 悪循環です。

銀行から年度資金の融資を受けるタイミングは、決算書(のコピー)を提出するとき。具体的には、決算日から2ヶ月前後のあたりとなります。

期首から現在までの試算表の提出を求められるタイミングでもありますから、社長はなんとしてでも、期首に売上減少が起きないように、売上維持・増加の算段をしておきましょう。

もちろん、試算表の粉飾はいけません。銀行は、試算表と決算書との整合性も確認していますから、粉飾は遅かれ早かれバレるものです。バレたときには銀行からの信用を失い、その後の融資が受けられなくなります。大きすぎる代償です。

まとめ

銀行融資を受けるにあたって、売上減少はよくありません。とくに、期首の売上減少はダメージがある。その理由と対策についてお話をしてきました。

同じ売上減少でも、タイミングによってダメージの大きさが異なることを理解しておきましょう。

期首の売上減少は銀行融資にダメージがある理由
  • 粉飾決算を疑われる
  • 決算日に問題がある
  • 決算予測が危ぶまれる
期首の売上減少は銀行融資にダメージがある理由

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