損益計算書は理解しやすいのだけれど、貸借対照表はよくわからない… そんな社長初心者にもおすすめの貸借対照表の見方について、お話をしていきます。
損益計算書はわかる、貸借対照表はわからない。
会社の決算書について。
社長になったばかり、言うなれば「社長初心者」の方によくあるのが、「貸借対照表の見方がよくわからない…」という悩みです。
決算書は、大きく2つ、貸借対照表と損益計算書とに分かれています。このうち、損益計算書のほうは理解しやすいのだけれど、貸借対照表はよくわからない。どこから、なにを見ればよいのかがわからない…
というわけで、本記事では「社長初心者にもおすすめの貸借対照表の見方」について、お話をしていきます。ぜんぶで5つのステップです↓
- 純資産の部を見る
- 負債と純資産の割合を見る
- おカネの使いみちをを見る
- 資産のなかにムダ・ウソがないかを見る
- 預金がどれくらいあるかを見る
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
社長初心者にもおすすめの貸借対照表の見方
1.純資産の部を見る
まずは、貸借対照表の全体構成を把握しましょう。ずばり、「資産 ー 負債 = 純資産」です。
貸借対照表は大きく3つ、資産の部と負債の部、そして純資産の部に分かれていることを確認しましょう。そのうえで、「資産 ー 負債 = 純資産」が成り立ちます。
ここで一番のポイントは、「純資産がプラスかどうか」です。純資産の部の合計金額がプラスなら、「資産 > 負債」ということになりますからOK。マイナスなら「資産 < 負債」なのでNG、という見方になります。
資産よりも負債が多いのはマズそうだ… これは、イメージできるでしょう。なので、まずは「純資産がプラスかどうか」を確認することからはじめるわけです。
なお、純資産の部は大きく2つ、「資本金」と「利益剰余金」とに分かれます。このうち資本金は「株主からの出資」であり、利益剰余金は「創業から現在までの利益の累計額」です。
したがって、資本金の額に変わりがないとすれば(増資・原資がないとすれば)、純資産の金額が増減する原因は「利益剰余金」であり、さらに言えば、「毎年の利益」だということになります。
利益が出れば(黒字)、その分だけ利益剰余金が増える(純資産も増える)。利益が出なければ(赤字)、その分だけ利益剰余金が減る(純資産も減る)、と覚えておきましょう。
2.負債と純資産の割合を見る
次に、負債と純資産の割合を見ます。貸借対照表の「負債の部」の合計金額と、「純資産の部」の合計金額の割合を見るということです。
ここでまず理解しておきたいのは、負債と純資産の「共通点」になります。その共通点とは、「ともに資金調達」であることです。負債も純資産も「おカネの調達額」という点では共通しています。
違っているのは、「返さなければいけないおカネかどうか」です。
負債の例として、銀行からの借入金をイメージしてみましょう。借入は資金調達にあたるいっぽうで、いずれ銀行に返さなければいけない金額をあらわしています。
これに対して、純資産はどうでしょう。純資産は、資本金と利益剰余金だと前述しました。資本金は株主に返す必要はありませんし、利益剰余金もだれかに返す必要はありません。
では、負債と純資産を比べたときに、「どちらが安全な資金調達でしょうか。そりゃあ、純資産だよね」という視点の財務指標が「自己資本比率」です。
自己資本比率とは、算式でいうと「純資産 ÷(負債 + 純資産)」であり、全資金調達額に占める純資産の割合を示しています。よって、自己資本比率が高いほど、純資産が多いということです。
議論の余地はあるものの、ひとまず「自己資本比率 20%以上が合格点」と考えておきましょう。逆に、自己資本比率が 20%未満であれば、負債過多だという見方になります。
3.おカネの使いみちをを見る
ここでようやく、資産の部に目を向けます。貸借対照表を見ると、負債や純資産よりも先に資産がありますが、資産を見るなら負債や純資産のあとがおすすめです。
なぜなら、資産とは「資金運用(そのおカネを何に使ったのか)」をあらわしているのであり、「資金調達」の結果が資産だからです。
つまり、「どこから資金調達をしてきて(負債や純資産)、そのおカネを何に使ったのか(資産)」という順序で見たほうが、ストーリーとしてわかりやすいですよね? ということになります。
資産についてまずは、大きく3つ、流動資産と固定資産、繰延資産に分かれていることを確認しましょう。
このうち、流動資産とは近いうち(おおむね1年以内)に現金化される資産です。固定資産は、現金化されるまでに時間がかかる(おおむね1年超)資産をいいます。
繰延資産とは、「将来にわたって効果が及ぶ費用」です。と言われても、ピンとくる社長初心者は少ないものとおもわれますが、多くの会社では繰延資産が無い、あっても少額なので、ひとまずは忘れてしまってもかまいません。
そのうえで、1つ確認しておくとすれば「流動資産 > 流動負債」の状態にあるかどうかです。
流動資産とは、近いうちに現金化される資産だと言いました。これに対して、流動負債は近いうち(おおむね1年以内)に支払いが必要になる負債です。だとすれば、「流動資産 > 流動負債」の状態でなければ、近いうちに資金ショートを起こすことがわかるでしょう。
もし、「流動資産 < 流動負債」の状態にあるようなら、資金調達したおカネの多くが、固定資産として滞留している可能性があります。
4.資産のなかにムダ・ウソがないかを見る
資産の部について、「流動資産・固定資産・繰延資産」に区分して確認をしました。次に、資産のなかみを確認していきます。つまり、資産の部のなかにある勘定科目1つ1つを見ていくわけです。
このときのポイントは、「ムダやウソがないか?」になります。ムダとは、文字どおりのムダであり、言い換えると、「貸借対照表に記載されている金額よりも、実際の価値を落としている資産」です。
たとえば、売掛金(売上代金の未回収)のなかに、回収できそうもないもの(不良債権)がある… とか。棚卸資産(在庫)のなかに、販売できそうもないもの(不良在庫)がある… とか。
はたまた、回収できそうもない貸付金がある… とか、利益を生み出していない機械設備がある… とか、含み損を抱えた有価証券(株や投資信託など)がある… とか。
そういったムダがあれば、少しでも現金化できるように対応すべきですし、今後同じようなムダが生じないように対策する必要があります。
いっぽうで、ウソとはどういうことなのか? 端的に言えば「粉飾」です。つまり、決算書を実際よりもよく見せるために、事実とは異なる決算書をつくっている状態を言います。
たとえば、ありもしない売上を計上することによる架空債権が売掛金に混じっているとか。利益を水増しするために計上した、ありもしない架空在庫が棚卸資産に混じっているとか。
当然、粉飾は「大罪」であり、言うまでもなく「やってはいけない」ことではありますが、ここではあえて取りあげておくこととしました。
5.預金がどれくらいあるかを見る
さいごに、「預金がどれくらいあるか」を見ます。預金は、資産の部のいちぶであり、資産の部のなかにある勘定科目の1つです。
なぜ、あえて「預金を見ましょう」と言うのかといえば、「預金が大事だから」です。これを聞いて、「なにをそんなあたりまえのことを…」と、おもわれるかもしれませんが。
実は、けして少なくはない社長が、あたりまえのことをわかっているようでわかっていないのです。その証拠に、「きのうの預金残高」や「先月末の預金残高」を答えられる社長は多くありません。
1ヶ月後や、半年後、1年後の預金残高となれば、なおさらです。預金がなくなれば会社はつぶれてしまうのですから、預金預金の「過去の動き(推移)」を把握しつつ、「将来の動き(予測)」までに目を向けるのは、社長の重要な仕事の1つだとわかるでしょう。
その一環として、貸借対照表に記載されている預金について、あらためて「どれくらいあるか」を確認することです。そのうえで、半年後〜1年後くらい先の預金残高を予測しておきましょう。
具体的には、資金繰り予定表を作成することです。売上高2ヶ月分以上の預金残高をキープできるか? を1つの目安に、キープできそうもなければ、銀行から融資を受けることを検討します。
売上高1ヶ月分未満の預金残高となると、銀行からの融資が受けにくくなりますので(銀行が警戒するから)、預金が少なくなる前に「早めに融資を受ける」のは銀行対応のセオリーです。
まとめ
損益計算書は理解しやすいのだけれど、貸借対照表はよくわからない… そんな社長初心者にもおすすめの貸借対照表の見方について、お話をしました。
まずは全体像を捉える、1つ1つの勘定科目はそのあとで、という見方をするとよいでしょう。はじめから枝葉末節にこだわると、木を見て森を見ずで「迷子」になりがちです。
- 純資産の部を見る
- 負債と純資産の割合を見る
- おカネの使いみちをを見る
- 資産のなかにムダ・ウソがないかを見る
- 預金がどれくらいあるかを見る