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経常運転資金の計算に注意を要する事例

経常運転資金の計算に注意を要する事例

銀行から融資を受けるにあたって、経常運転資金の計算が重要になります。その計算に注意を要するケースのお話です。注意を怠ると、借りられるはずのおカネも借りられなくなってしまいます。

目次

算式をうのみにしてはいけない。

銀行から融資を受けるうえで、社長が確認しておきたいことの1つに「経常運転資金」があります。経常運転資金とは、算式であらわすと次のとおりです↓

経常運転資金 = 売上債権(売掛金・受取手形)+ 棚卸資産(在庫)ー 仕入債務(買掛金・支払手形)

なぜ、経常運転資金の確認が必要かと言えば、銀行はこの金額を見て、「運転資金」の融資額を検討するからです。

とはいえ、経常運転資金の算式をうのみにしていると、「おもったとおりに融資が受けられない」「借りたい金額をじゅうぶんに借りられない」ことがあります。

言い換えると、ほんとうは借りられるはずのおカネも借りられなくなってしまう… ということです。それでは、社長も困ってしまいます。

そんな「経常運転資金の計算に注意を要する事例」がこちらです↓

経常運転資金の計算に注意を要する事例
  • 在庫のピークが月末ではない
  • 架空資産・不良資産がある
  • 増加運転資金が要る

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

経常運転資金の計算に注意を要する事例

在庫のピークが月末ではない

冒頭でお話をした、経常運転資金の算式を再掲します↓

経常運転資金 = 売上債権(売掛金・受取手形)+ 棚卸資産(在庫)ー 仕入債務(買掛金・支払手形)

この算式に、具体例をあてはめてみましょう。売上債権 300万円、棚卸資産 100万円、仕入債務 200万円の会社があったとします。この会社の経常運転資金は、

売上債権 300万円 + 棚卸資産 100万円 ー 仕入債務 200万円 = 200万円

ここで、ひとつ確認です。売上債権・棚卸資産・仕入債務の金額は、いつ時点のものなのか? 基本的には、ある月の「月末」です。

決算書で金額を見ているのであれば、決算月の月末。ある月の試算表で金額を見ているのであれば、その月の「月末」ということになります。

さきほどの具体例が、決算月の月末の金額だったとすると、「棚卸資産 100万円」は決算月の月末という瞬間的な金額にすぎません。

でも実は、月の中旬くらいが在庫のピークで、300万円くらいが平均的だとしたらどうでしょう。当然、その分の経常運転資金が必要になります。算式であらわすと、

売上債権 300万円 + 棚卸資産 300万円 ー 仕入債務 200万円 = 400万円

にもかかわらず、前述の計算結果である「200万円」しか借りることができなければ、この会社の資金繰りは厳しいものになってしまいます。

ですから、このようなケースでは、銀行に対して「在庫のピーク」に関する情報を伝えることが大切です。伝えられなければ、銀行は月末の金額しか知りえませんから、200万円の融資になってしまいます。

伝え方としては、在庫推移表があるとよいでしょう。日々の在庫増減と在庫残高とをまとめた書類です。これがあれば、銀行に対して「在庫のピーク」を伝えることができます。

棚卸資産だけではなく、売上債権や仕入債務についても同じことです。月末の金額と月中のピーク額との差が大きい場合には、やはり、その情報を銀行に伝えるようにしましょう。

架空資産・不良資産がある

また具体例で考えてみましょう。売上債権 500万円、棚卸資産 300万円、仕入債務 200万円の会社があったとします。この会社の経常運転資金は、

売上債権 500万円 + 棚卸資産 300万円 ー 仕入債務 200万円 = 600万円

ところが、売上債権のなかに回収不能の債権、つまり不良資産 200万円が含まれている。棚卸資産のなかに販売不能の在庫、つまり不良資産 200万円が含まれているとしたらどうでしょう。

銀行としては、不良資産の分までおカネを貸すわけにはいきません。売掛金は回収できず、在庫は販売できず、おカネになることはないからです。おカネにならなければ返済できません。

したがって、銀行は「不良資産」の存在を知ると、運転資金の融資を躊躇するようになります。

このとき、不良資産を除いた分の金額(具体例であれば 200万円)は融資が受けられるか? というと、実はそうでもありません。銀行は「不良資産がもっとあるかもしれない…」と考えるからです。

こうなると、会社は融資自体が受けられず、資金繰りが悪くなってしまいます。

そうならないように、不良資産については「損失計上する」という経理処理が大切です。不良資産を、売上債権や棚卸資産の金額に残したままにしない、ということです。

また、架空資産にも気をつけなければいけません。いわゆる「粉飾決算」をしている会社では、売上債権のなかに架空債権があったり、棚卸資産のなかに架空在庫があったりします。

それら「架空資産」の存在を銀行が知れば、融資をすることはありません。粉飾決算という悪事をはたらく会社に、預金者からあずかった大事なおカネを貸すことなどできないからです。

粉飾決算をしてはいけないのは言うまでもありませんが、もし、やってしまったという場合には、架空資産を解消する対応を検討しましょう。でなければ、融資が受けられなくなってしまいます。

増加運転資金が要る

またまた具体例で考えてみます。売上債権 300万円、棚卸資産 100万円、仕入債務 200万円の会社があったとします。この会社の経常運転資金は、

売上債権 300万円 + 棚卸資産 100万円 ー 仕入債務 200万円 = 200万円

なのですが、まもなく売上増加が見込まれている場合はどうでしょう。たとえば、大口の受注が決まっていて、売上債権が 500万円に増えるようなケースです。すると、経常運転資金は

売上債権 500万円 + 棚卸資産 100万円 ー 仕入債務 200万円 = 400万円

もともとの経常運転資金 200万円に対して、売上増加後には 400万円です。会社は、400万円のおカネを借りることができないと、資金繰りが厳しくなってしまいます。

とはいえ、銀行が決算書や試算表の金額を見ているだけでは、売上増加を知ることはできません。ですから、会社のほうから銀行に対して、売上増加の情報を伝える必要があります。

売上増加に関する受注書や契約書などを提示して、銀行に伝えるようにしましょう。

なお、売上が増加すると、売上債権が増えるだけではなく、棚卸資産も増えるものです(仕入債務が増えることも)。すると、経常運転資金の金額はさらに増加します。

というように、当初の経常運転資金の金額に対して、増加する部分の経常運転資金のことを「増加運転資金」と呼びます。増加運転資金については、その分のおカネが借りられないと資金繰りが厳しくなるのが問題です。

売上増加が見込めた時点で、できるだけ早く、銀行に増加運転資金の融資を相談しましょう。実際に、売上が増加してから相談していたのでは遅く、資金繰りが厳しくなってしまいます。黒字倒産… などということがないように、気をつけなければいけません。

まとめ

銀行から融資を受けるにあたって、経常運転資金の計算が重要になります。その計算に注意を要するケースのお話です。注意を怠ると、借りられるはずのおカネも借りられなくなってしまいます。

    経常運転資金の計算に注意を要する事例
    • 在庫のピークが月末ではない
    • 架空資産・不良資産がある
    • 増加運転資金が要る
経常運転資金の計算に注意を要する事例

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