会社が事業計画書や経営計画書をつくるときには、現状分析が大切です。とはいえ、現状分析っていったい何をすればいいの? というお話をしていきます。
社長にとって役に立たない計画書。
会社が融資を受けるにあたって、銀行から計画書を求められることがあります。具体的には、「事業計画書」や「経営計画書」などと呼ばれるものです。
そういった計画書をつくるときに、前提としてやるべきことに「現状分析」があります。逆に、現状分析がない計画書は「絵に描いた餅」だと言ってよいでしょう。
現状分析がないということは、計画の「根拠」がないということもあるからです。したがって、現状分析が付されていない計画書は、銀行からの信用を得られないものと考えておきましょう。
また、銀行融資以前に、社長自身にとって「役に立たない計画書」になってしまいますから、気をつけなければいけません。現状分析がない計画書というのは、意外と多いものです。
とはいえ、現状分析って何をすればいいの? と、おもわれるかもしれませんので。本記事では、そこをお話ししていきます。次のとおりです↓
- まずは商売を定義する
- 内部と外部環境の洗い出し
- 商売を再定義する
これは、現状分析の「手順」でもあります。このあと、順番に確認していきましょう。
会社が計画を立てるときの現状分析で何をするか?
1.まずは商売を定義する
まずは、自社の商売を定義することから始めます。商売とは、言い換えると「ビジネスモデル」です。さらに具体的に言い換えると「だれに・なにを・どのように売るか」になります。
商売をあきらかにできると、「選択(だれに)・集中(なにを)・差別化(どのように)」という、いわゆる「経営戦略」もあきらかになるのがポイントです。
ところが、そこがあいまいなまま… という会社はけして少なくありません。戦略があいまいなままでは、計画を立てるにもブレてしまいますから、芯としての戦略をはっきりさせましょう。
で、「だれに・なにを・どのように売るか」です。
このうち「だれに」は、自社にとっての「顧客」を指します。いわゆる「顧客ターゲット」です。ひとまず、現状の顧客を分析することからはじめてみるのがよいでしょう。
続いては、「なにを」です。これは、自社にとっての「商品」を指します。商品メニューを洗い出し、それぞれの売上構成比や、市場でのシェアなどについてまとめてみましょう。
さいごに、「どのように」です。これは、自社の「売り方」を指します。前述した「だれに」と「なにを」が同じであっても、売り方を変えることで差別化が可能です。
言うまでもありませんが、差別化が上手な会社は、他社との競争に巻き込まれにくく、成長がしやすいという特徴があります。
売り方については、他社との「違い」に注目して洗い出してみましょう。「他社はこうしているけど、ウチはこうしている」というところが、自社特有の売り方であり、自社の戦略にもなります。
2.内部と外部環境の洗い出し
商売を定義できたら、次に、「内部と外部環境の洗い出し」をします。外部環境・内部環境ともに、プラス要因とマイナス要因とに区分して考えてみましょう。図にすると、次のとおりです↓
このうち、内部環境のプラス要因は「強み(Strength)」、内部環境のマイナス要因は「弱み(Weakness)」とします。外部環境のプラス要因は「機会(Opportunity)」、外部環境のマイナス要因は「脅威(Threat)」とします。
それぞれ英語の頭文字をとって、「SWOT分析」とも呼ばれる手法です。
たとえば、「強み」であれば、独自の仕入ルートがあるとか、地元での知名度が高い、など。「弱み」であれば、郊外で立地が悪いとか、同業他社よりも売値が高いとか。
「機会」であれば、マスコミで注目の商品であるとか、市場が拡大しているとか。「脅威」であれば、競合店が近隣にオープンするとか、人手不足で人材が集まらないとか。
そういったことを、まとめてみましょう。現状を4つの視点で区分することで、現状の把握がしやすくなるはずです。
そのうえで、4つの区分の組み合わせで、戦略を検討するのが一般的な流れになります。具体的には、次のとおりです↓
- 強みと機会の組み合わせ → 積極戦略
- 弱みと機会の組み合わせ → 改善戦略
- 強みと脅威の組み合わせ → 差別化戦略
- 弱みと脅威の組み合わせ → 撤退戦略
上記戦略の名称から、どのような戦略かのイメージはできるでしょう。とはいえ、そのような戦略を検討する前に、いまいちど商売について考えることをおすすめします。
3.商売を再定義する
内部と外部環境の洗い出しをしたら、いまいちど商売について考える。すなわち、「商売を再定義する」ということを考えていきます。ではなぜ、再定義が必要なのか?
それは、再定義することで、弱みが強みにもなり、脅威が機会にもなるからです。具体例で考えてみましょう。
現状の商売が「地元の住民に・いろいろな定食を・低価格で提供する飲食店」だったとします。すると、郊外で立地が悪いのは「弱み」です(近隣の人しか来ない)。もし近隣に、低価格が売りの飲食チェーンが出店するとなれば「脅威」になります。
では、ここで商売を再定義して「ラーメン好きに・とことん素材と製法や体験にこだわったラーメンを・高価格で提供するラーメン屋」としたらどうでしょう?
ちなみに、「ラーメン」自体に意味はありません。ラーメン一品に絞り込み、高付加価値に切り替えたところがポイントです。
ここで、郊外の立地を活かして駐車場を整備すれば(郊外なので地代は安い)、ラーメン好きが遠くからでもクルマで来てくれるかもしれません。商圏を広げられるので、弱みは強みに変わります。
また、高級ラーメン一本勝負ですから、近隣に飲食チェーンができても、お客を奪い合うことはありません。むしろ、飲食チェーンによりできた人の流れは、あらたな認知につながるかもしれず、だとすれば、脅威は機会に変わります。
やや極端で単純な例ではありましたが、本質は「商売を再定義する」ことです。そのうえで、もういちどSWOT分析をやりなおしてみましょう。4つの区分に変化が起きるはずです。
そこまでできたら、「現状(SWOT分析と商売の定義)」をもとに、理想(目標)について考えます。現状と理想のギャップを埋めるものが「課題」であり、課題解決のための手段が「行動計画」です。
そして、行動計画にもとづく行動の結果が「数値計画」、という繋がりを考えるようにしましょう。現状分析なき行動計画・数値計画が「絵に描いた餅」である理由がわかるはずです。
まとめ
会社が事業計画書や経営計画書をつくるときには、現状分析が大切です。そこで本記事では、現状分析っていったい何をすればいいの? ということについてお話をしてきました。
計画の前提として、あるいは計画の根拠として、現状分析ができるように。本記事の内容を押さえておきましょう。
- まずは商売を定義する
- 内部と外部環境の洗い出し
- 商売を再定義する