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税理士に「試算表をつくってほしい」と言うのはどこか違う

税理士に「試算表をつくってほしい」と言うのはどこか違う

銀行から試算表を見せてほしいと言われた。そこで社長は、税理士に「試算表をつくってほしい」と言う… それってどこか違うかもしれません、というお話をしていきます。

目次

「試算表をつくってほしい」と言うのはどこか違う

銀行から融資を受けようとすると、「試算表を見せてほしい」と言われることがあります。そこで社長は、税理士に「試算表をつくってほしい」と言うのであれば気をつけましょう。

なぜなら、次のような問題を抱えている可能性があるからです↓

税理士に「試算表をつくってほしい」の問題点
  • 社長が他人事になる
  • 出来上がりが遅くなる
  • 社長が不理解になる

これらを聞いて、「それって、どういうこと?」とおもわれるようであれば、このあとの話を確認しておきましょう。銀行融資以前に、経営・財務において重要な内容になります。

税理士に「試算表をつくってほしい」の問題点

社長が他人事になる

そもそも、試算表とはだれのものなのか? 言うまでもなく、会社のものです。ひいては、社長のものです。では、試算表はなんのためにつくるのか?

社長が、自社の「足元の業績」を把握するためです。「1年間の業績」は決算書でわかります。が、1年に1度つくるだけの決算書では、足元(最近1ヶ月)の業績まではわかりません。

ですから、社長が決算書を見て経営判断をしていたのでは、情報が古すぎる… ということになってしまいます。社長たるもの、足元の業績を見ながら経営判断をするのがセオリーです。

銀行もそれをわかっています。だから、社長に試算表を求めているのです。

試算表の数字を見て、業績を評価するのはもちろん。社長が試算表を見て、経営判断をしているのか? しているのであれば、試算表はあるはずだ。だったら、試算表を見せてくれ。そういうことです。

ところが、当の社長が、銀行に試算表を求められてから、税理士に「つくってほしい」と言っているのだとしたらどうでしょう。まるで他人事のよう、だと言えますよね。

試算表が経営判断をするのに大事な「情報」であると考えていれば、社長は「みずからつくる(社内でつくる)」ことをまず検討するはずです。はたして、その検討はあったのかどうか。

そこをスルーして、銀行融資のためだけに「試算表をつくってほしい」と言うのであれば本末転倒です。試算表に対して、社長が他人事になっていないかを自問してみましょう。

なお、試算表を税理士につくってもらうこと自体を否定しているわけではありません。あくまで、社長の「姿勢」と、試算表をつくってもらうまでの「過程」の話をしています。

出来上がりが遅くなる

さきほど、試算表を税理士につくってもらうこと自体を否定しない、と言いました。社内に試算表をつくれるだけの人手がなければ、税理士につくってもらうのは1つの方法です。

ただし、忘れてはいけない問題があります。それは、出来上がりが遅くなるかもしれない、という問題です。他人(税理士)に頼むということは、他人の都合に左右されることになります。

頼んだ税理士が忙しければ(忙しくなくても優先順位が低ければ)、試算表の出来上がりが数カ月後… ということはあるでしょう。これでは、前述した試算表をつくる目的を果たせません。

目的をもって試算表をつくるのであれば、どんなに遅くても、「毎月10日には前月分の試算表ができている」ことが必須だ、というのが私見です。

また、税理士に試算表をつくってもらうためには、会社が、試算表をつくるのに必要な情報を準備しなければいけません。領収書やら請求書やら、給与明細やら。

そういった準備に時間がかかるようなら、いっそ会社のほうで試算表をつくってしまうほうが早い、ということだってあるでしょう。

結局のところ、税理士に試算表づくりを頼むと、ていどの差こそあれ、出来上がりが遅くなるのは間違いありません。

なので、わたしのおすすめは「試算表は自社でつくる、確認を税理士にしてもらう」というスタイルです。確認が多少遅れたとしても、試算表ができていれば、社長はそれを経営判断に活かすことができます。

社長が不理解になる

社長が税理士に「試算表をつくってほしい」と言うと、他人事になると前述しました。これに関連して、社長が不理解になるという問題もあります。

ここで言う不理解とは、試算表に対しての不理解です。つまり、社長が「銀行融資のために試算表があればいい」と考えているとすれば、試算表は「ありさえすればいいモノ」になってしまいます。

すると社長は、試算表の内容に対する理解が不足することになるわけです。具体的には、数字による業績の把握、財務的な課題の抽出などが不足します。

結果として、社長の経営判断の精度が下がるのは、大きな問題だと言ってよいでしょう。

もしかすると、「試算表を見なくても、数字はアタマのなかにある」とおもわれるかもしれません。ですが、多くの先人社長が「数字を可視化する」ことの重要性を説いています。

アタマのなかにある数字だけでは不足だ、ということです。実際、アタマのなかの数字と、実際の数字とのあいだに「乖離」があることは、けして少なくありません。

さらに言えば、「利益の増減」と「おカネの増減」は別モノであり、その両方を正しく把握するのにアタマのなかだけでは難しいものがあるでしょう。

にもかかわらず、社長が利益だけを考えている、おカネだけを考えていると、利益もおカネも大事なものであるがゆえに、いずれトラブルに発展するものとおもわれます。

ですから、社長は試算表を「ありさえすればいいモノ」とは考えずに、その内容を理解することに努めましょう。このとき、銀行が試算表のどこに注目しているかを知るのも有効です↓

まとめ

銀行から試算表を見せてほしいと言われた。そこで社長は、税理士に「試算表をつくってほしい」と言う… その場合、問題を抱えている可能性がありますよ、というお話をしてきました。

銀行融資以前に、経営・財務において重要な内容です。ぜひ、押さえておきましょう。

    税理士に「試算表をつくってほしい」の問題点
    • 社長が他人事になる
    • 出来上がりが遅くなる
    • 社長が不理解になる
税理士に「試算表をつくってほしい」と言うのはどこか違う

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