設備資金の融資を受けたのち、「返済がツラい…」というときに、社長が知っておくべきことをまとめます。知らずにいると、慌てることになりますから押さえておきましょう。
設備資金と運転資金とがある。
銀行から融資を受けるためには、「資金使途」が必要です。資金使途とは、「借りたおカネの使いみち」を言います。その資金使途は大きく分けて2つ、「設備資金」と「運転資金」です。
このうち、設備資金とは「設備投資をするためのおカネ」であり、運転資金とは「設備資金以外(仕入代金や諸経費などの支払い)のために使うおカネ」を言います。
本記事では「設備資金」について、借入をしたのち「返済がツラい…」ときに、社長が知っておくべきことをまとめます。具体的には次のとおりです↓
- 借り換えができない
- 折り返しができない
- 代わりにできること
- 返済が厳しくなる原因
これらを知らずにいると、いざ返済がツラくなったときに慌てることになってしまいます。というわけで、このあと順番に確認していきましょう。
設備資金の返済がツラい…ときに社長が知っておくべきこと
借り換えができない
運転資金の融資は、返済が厳しくなったときに「借り換え」という方法があります。
つまり、あらたに返済期間が長い融資を受けて、既存の融資を返済する。これにより、毎月の返済負担を減らそう、という方法が「借り換え」です。
では、設備資金も返済が厳しくなったら借り換えをすればいい。と、考えるのは間違いです。なぜなら、設備資金については「借り換え」という考え方がありません。
設備資金の融資はもともと、「融資の対象である設備から生み出される利益によって返済する」という前提でおこなわれています。つまり、融資と返済原資である利益が「ひもつき」なのです。
ゆえに、返済が厳しいのなら「その利益を改善して返すべし」ということであり、銀行が借り換えによって対応することはない。社長は、この理屈を知っておかねばなりません。
折り返しができない
運転資金の融資は、返済が厳しくなったときに「折り返し」という方法があります。
たとえば、当初 1,000万円の融資を受けて、そののち 400万円ほど返済したところで(融資残高 600万円)、もういちど融資残高 1,000万円まで借り直す。つまり、返済した分の 400万円を借り直すことを「折り返し」などと呼びます。
というように、運転資金の融資についてはしばしば見られる「折り返し」もまた、設備資金の融資については当てはまりません。設備資金の返済がツラくても、折り返しはできないということです。
ではなぜ、設備資金の融資は折り返しができないのか?
その理由は、前述した「借り換え」と同じです。融資の前提が「設備から生じる利益で返済する」であり、融資と利益はひもつきなのですから、銀行としては「追加で融資をする」というわけにはいきません。
これもまた、社長が知っておくべきことになります。
代わりにできること
設備資金の返済がツラい… でも、借り換えはできない。折り返しもできない。ではいったいどうしたらいいのか? 銀行はなにもしてくれないのか? と言えば、そうでもありません。
実際には、設備資金の返済困難はそれなりに起きていることであり、銀行も放置するわけにはいかず、現実的な対応が求められます。ではその、現実的な対応とは?
運転資金としての融資です。もともとの設備資金の融資については、借り換えも折り返しもできない以上、あらたに「別の融資」として対応することになります。
このときの注意点は2つです。まず1つは、運転資金の融資を返済できることについて、設備投資計画の見直しや、資金繰り予定表をもって銀行に説明できるようにすること。
これができなければ、銀行は運転資金の融資を検討しづらくなってしまいます。
加えて、もう1つ。運転資金の融資を依頼するのであれば、もともとの設備資金の融資を受けている銀行にすることです。これが別の銀行となると、銀行にしてみれば「なぜウチが尻拭いを…?」となってしまい、融資を受けるのが難しくなります。
このあたりの対応も、社長が知っておくべきこととして押さえておきましょう。
返済が厳しくなる原因
さいごに、もうひとつ。社長が知っておくべきことがあります。それは、なぜ返済がツラくなってしまったのか? の「原因」です。これがわからずにいると、また同じことが起きてしまいます。
では、その原因とは? ひとことで言えば、当初の設備投資計画の誤りです。その誤りは、「利益計画の誤り」と「返済計画の誤り」とに分かれます。
まずは、利益計画の誤りから。たとえば、1,000万円の製造機械を買うにあたって、設備資金の融資を受けたとします。このとき、その製造機械から 1,000万円以上の利益が出るものとして計画をしていたはずです。
ところが、その利益が計画よりも少なければ、返済は厳しくなります。利益を過大に見誤ったか、1,000万円の製造機械はオーバースペックだったか? その究明が必要です。
いっぽうで、返済計画の誤りとは。返済期間を短くしすぎたケースです。たとえ、設備投資から生じる利益の「総額」がじゅうぶんであっても、その「利益が生じるペース」よりも、借入を「返済するペース」のほうが早ければ資金繰りは厳しくなってしまいます。
ですから社長は、設備資金の融資を受ける際、返済期間を短くしすぎないように気をつけなければいけません。目安は「設備の耐用年数=返済期間」です。「設備の耐用年数>返済期間」となると、返済が厳しくなります。
まとめ
設備資金の融資を受けたのち、「返済がツラい…」というときに、社長が知っておくべきことをまとめました。知らずにいると、慌てることになりますから押さえておきましょう。
- 借り換えができない
- 折り返しができない
- 代わりにできること
- 返済が厳しくなる原因