コロナ融資を受けたものの、いまとなってはそれほどおカネを使うこともなく、かなりの預金残高になっている。とはいえ、一括返済・繰り上げ返済にはデメリットがあるので気をつけましょう、というお話です。
たしかに、ひとつの選択肢ではある。
コロナ禍では、多くの中小企業が融資を受けました。いわゆるコロナ融資です。
そのコロナ融資については、返済に苦慮する会社があるいっぽうで、それほどおカネを使うこともなく、かなりの預金残高になっている会社もあります。
後者の会社にあっては、「一括返済・繰り上げ返済」を考えている社長もいるようです。たしかに、ひとつの選択肢ではありますが、デメリットもあるので気をつけましょう。
具体的には、次のとおりです↓
- 次に借りられるかはわからない
- 返済期間が短くなる
- 変動金利になる
- 信用保証料の負担がある
- 手数料・コベナンツもありうる
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
コロナ融資を一括返済・繰り上げ返済するデメリット
次に借りられるかはわからない
いまは、預金残高が多いからいいでしょう。ですが、この先もずっと多いかどうかはわかりません。事業は山あり谷ありだからです。まさか、もあります。
そんなときに、必要になるのがおカネです。そのときになって、「あのとき一括返済しなければよかったぁ…」というのでは遅すぎます。
いやいや、また借りればいいでしょう。と、おもわれるかもしれませんが。会社が借りたいときほど借りられないのが銀行融資でもあります。業績不振の会社は、融資が受けにくくなるものです。
だとしたら、一括返済・繰り上げ返済などせずに万一に備えて、預金をたくさん持っておくことは財務戦略だと言えます。
コロナ融資に限った話ではありませんが、一括返済・繰り上げ返済をするのであれば、「次に借りられるかはわからない」ということを忘れないようにしましょう。
基本的には、いちど借りたおカネは一括返済しない、繰り上げ返済しないことをおすすめします。
返済期間が短くなる
コロナ融資は、通常の融資に比べて返済期間が長い融資でした。コロナの影響が長引くことも考慮してのことです。
なので、一括返済・繰り上げ返済したのち、また融資を受けるのであれば、こんどは返済期間が短くなるものとおもわれます。すると、どうなるか?
当然、同じだけの額を借りたとしても、返済期間が短い分だけ、毎月の返済額が多くなります。結果として、資金繰りが厳しくなる… というのが問題です。
というように、コロナ融資の融資条件は、借り手にとっては有利な条件であるため、一括返済・繰り上げ返済によって、その有利な融資条件を手放すのが得策ではないこともあります。
またいずれ、融資を受けるようなケースです。以後、絶対に融資を受けない・受けずにすむという会社であればよいですが、そうでもないのであれば、やはり一括返済・繰り上げ返済しないことをおすすめします。
変動金利になる
コロナ融資が固定金利であったとして。その融資を一括返済・繰り上げ返済したのち、別の融資を受けたときには「変動金利」ということもあるでしょう。
ご存知のとおり、いま世の中は低金利から高金利に向かおうとしています。実際に高金利となれば、変動金利の融資は、借り手にとって金利負担が増えるということです。
それなら、固定金利で受けた融資をわざわざ一括返済・繰り上げ返済したりしないで、そのまま借りておく(その後に変動金利の融資を受けずにすむようにする)のも、1つの選択肢になります。
したがって、今後は金利が上がっていくだろうと考えるのであれば、コロナ融資はそのまま借りておくことも検討しましょう。
もちろん、「今後は絶対に融資を受けることはない」と言い切れる会社に関しては、その限りではありません。が、そのような中小企業は、割合としてはかなりの少数派になるはずです。
信用保証料の負担がある
民間銀行のコロナ融資は、いわゆる「保証付き融資」でした。保証付き融資となると、通常、信用保証協会に対して、会社は「信用保証料」の支払いが必要になります。
融資金額にもよりますが、これがけっこうな金額になります。金利に置き換えると、年利1%ていどになることもあるので、かなりの負担感だといえるでしょう。
ところが、コロナ融資では「補助」がありました。これにより、信用保証料が免除・減免されていたのは、会社にとって大きなメリットだったわけです。
では、そのコロナ融資を一括返済・繰り上げ返済したのち、いずれ保証付き融資を受けることになったとしたらどうでしょう。せっかく免除・減免されていたメリットが台無しですよね。
なので、もう絶対に保証付き融資は受けない! という場合を除いては、コロナ融資は借りたままにしておくほうがよい、ということになります。
手数料・コベナンツもありうる
この先、保証付き融資は借りない。ウチはもう優良企業だからプロパー融資(保証付きではない融資)だけでだいじょうぶ。という会社でも、コロナ融資の一括返済・繰り上げ返済には注意しなければなりません。
なぜなら、プロパー融資には「手数料」や「コベナンツ」などを求められることがあるからです。
銀行は、利息以外の収入源として「手数料」を増やそうとしています。名目はいろいろですが、とにかく、融資にともない「〇〇手数料」を請求されるケースは、以前よりも増えてきました。
また、「コベナンツ」とは、カンタンに言うと「特別な約束」のようなものです。たとえば、融資後は、定期的・継続的に情報開示をしてくださいとか、連続赤字や純資産急減はダメとか。
それらの約束を守れなかった場合には、最悪、一括返済を求められることになります。そういったコベナンツを求められるケースも、やはり以前に比べて増えてきました。
手数料にしてもコベナンツにしても、会社にとってはデメリットになりますから、それがないコロナ融資をわざわざ返済するのもどうなのか…(返済しないほうがいい) と考えることもできるでしょう。
まとめ
コロナ融資を受けたものの、いまとなってはそれほどおカネを使うこともなく、かなりの預金残高になっている会社があります。
とはいえ、一括返済・繰り上げ返済にはデメリットがあるので気をつけなければいけません。そもそも、コロナ融資は、会社にとっては有利な融資条件であることを理解しておきましょう。
- 次に借りられるかはわからない
- 返済期間が短くなる
- 変動金利になる
- 信用保証料の負担がある
- 手数料・コベナンツもありうる