設備資金の借入について、繰り上げ返済をしようか、どうしようか…? というのは、社長が迷うことの1つです。するのも選択肢の1つではありますが、デメリットもあるので気をつけましょう。
デメリットもあるから気をつけて。
繰り上げ返済をするかどうか…? というのは、銀行融資を受けている社長が迷うことの1つでしょう。実際に、そのようなご相談は少なくありません。
では、このうち「設備資金の借入」について、繰り上げ返済をするかどうか? をどのように考えればよいのか。
ちなみに、設備資金とは「設備投資をするためのおカネ」です。具体的には、工場や倉庫を建てる、製造機械を設置する、営業用車両を購入する、パソコン・ソフトウェアを買い換えるなど。
そういったときに必要になるおカネが設備資金であり、設備資金を「資金使途(おカネの使いみち)」として、銀行から融資を受けることができます。
その設備資金の借入について、返済期限を待たずして繰り上げ返済をする。それも1つの選択肢ではありますが、デメリットも少なくないので気をつけましょう。というのが、本記事のお話です。
では、そのデメリットとは、次のとおりになります↓
- 資金繰りが悪化する
- もう1度借りられない
- 低金利のメリットを失う
- 次の融資が受けにくくなる
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
設備資金の借入を繰り上げ返済するデメリット
資金繰りが悪化する
これは、設備資金の借入に限りませんが、繰り上げ返済の一番のデメリットは「資金繰りが悪化する」ことです。
言うまでもなく、繰り上げ返済をするためにはおカネが必要ですから、「手元のおカネ(預金残高)」を減らすことになります。結果として、繰り上げ返済する前に比べると、資金繰りは悪くなるわけです。
いま悪くなかったとしても、のちに売上や利益が減少したときには、資金繰りの悪化を実感することになります。あぁ、あのとき繰り上げ返済していなければ… といった具合です。
そもそも、設備資金の返済原資は、その設備から生じる「利益」になります。たとえば、製造機械であれば、その機械によって製造された製品を販売することで得られる利益です。
ところが、当初の予定どおりに製品が売れなかったとしたらどうでしょう。利益は得られませんから、資金繰りは厳しくなっていきます。返済期間(耐用年数)が長い設備資金ほど、不確定要素は増えますから、そのようなケースも想定しておかなければいけません。
さらには、時間がたてば、製造機械の劣化によるメンテナンス費用もかかります。そのときに利益が不十分だと、やはり資金繰りが厳しくなってしまいます。購入金額が高い設備ほど、メンテナンス費用も大きなものですから注意が必要です。
というように、資金繰りが悪化する可能性はいろいろあります。その可能性がある以上、よほど手元資金に余裕がある場合を除いては、繰り上げ返済を控えたほうがよいと言えるでしょう。
1つの目安が、「手元資金に余裕がある=売上高半年分以上の預金残高」です。
もう1度借りられない
いましがた、繰り上げ返済をしたら、資金繰りが悪化するという話をしました。これを聞いて、「だったら、また借りればいいじゃないか」と、おもわれたかもしれません。
ところが、こんどは「同じ理由・同じ条件」では借りられないことを理解しておきましょう。つまり、もう1度借りるときには、設備資金として借りることはできないということです。
設備資金の借入ができるのは、設備投資をするタイミングだけ。そのときの借入を繰り上げ返済してしまうと、次は「運転資金」として借りるしかありません。
とはいえ、なんらかの事情によって「資金繰りが悪化している」から、もう1度借りようとしているわけなので、それを見た銀行は融資に消極的になるものです。借りたくても借りにくい状況になります。
そもそも、設備資金の場合には、運転資金に比べて返済期間が長い融資になることが多く、その分、同じ金額の融資を受けるにしても「毎月の返済額」を抑えられるのは利点です。
よって、繰り上げ返済後に、なんとか運転資金として借入できたとしても、毎月の返済額は多くなることから、やはり資金繰りの悪化を免れない… このリスクを忘れてはいけません。
低金利のメリットを失う
中長期的に見れば、この先、金利が上がることが予想されます。ですが、いまのところ(令和5年3月17日現在)はまだ、低金利の水準にあると言ってよいでしょう。
この点で、設備資金を「固定金利」で借りていたのであれば、世の中の金利が上がったときにはメリットがあります。利息の支払いは、低いときの金利のままで済むからです。
では、その固定金利の借入を繰り上げ返済したらどうでしょう。その後、2度と銀行融資は受けません! というのであればよいですが、なにかしらの融資を受けるのであれば金利負担が大きくなる可能性があります。
固定金利で借りていたときの金利よりも、あらたに融資を受けるときの金利のほうが高くなるかもしれないからです。
それに、設備資金の借入金利が低金利なのだとすれば、繰り上げ返済による効果は小さくなります。だったら、わざわざ繰り上げ返済をする必要もないだろう、という考え方もあるはずです。
中長期の視点で、金利についても検討するようにしましょう。
次の融資が受けにくくなる
繰り上げ返済をすることで、次の融資が受けにくくなることもありえます。
その理由は、繰り上げ返済によって、「手元の資金(預金残高)」が少なくなるからです。もう少し言うと、手元の資金が少ないほど、銀行は融資をしづくらくなるからです。
言い換えると、手元の資金が多いほど、銀行は融資をしやすくなります。資金繰りの心配が少なくなるので、安心・安全な会社だと銀行は評価するためです。
なかには、手元の資金を少なくしてまで繰り上げ返済をしようとする社長がいます。早く借金を減らしたいという気持ちは理解できますが、その結果、資金繰りを悪くしてしまい、そのうえ次の融資も受けられないのでは本末転倒です。
では、どのていどまで手元の資金を持っておけばよいのか? 平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の2ヶ月分以上がひとつの目安です。これより少なくなると、融資が受けづらくなることがあります。プロパー融資となればとくに、です。
また、どんなに少なくても「平均月商の1ヶ月分未満」にはならないように気をつけましょう。銀行から見ると「自転車操業」の水準になってしまい、極端に融資が受けづらくなります。
まとめ
設備資金の借入について、繰り上げ返済をしようか、どうしようか…? というのは、社長が迷うことの1つです。
するのも選択肢の1つではありますが、デメリットもあるので気をつけましょう。それらデメリットから見て、多くのケースでは「いちど借りたら返済しない」のが得策だとおもわれます。
- 資金繰りが悪化する
- もう1度借りられない
- 低金利のメリットを失う
- 次の融資が受けにくくなる