銀行融資・銀行対応の情報発信をしています。この点で、社長や税理士の方から言われたことがある反論を挙げつつ、あらためて、わたし自身の考え方をまとめてみました。
反論もまた良し。
2016年4月に独立してしばらくしてから、「銀行融資専門」という立ち位置で、銀行融資・銀行対応の支援をしています。
以降、このブログをはじめとして、メルマガ、YouTube、SNS、自主開催セミナーなどで、銀行融資・銀行対応に関する情報発信も続けているところです。
それら情報発信に対して、ときに、社長・税理士の方から「反論」をいただくことがあります。もっとも、人それぞれ考え方や意見があるのですから、反論と呼ぶのもおかしなものかもですが。
なにはともあれ、わたしが考えていることや、わたしの発言とは思いを「異にする」という点では反論として。実際に言われたことがあるものを挙げてみることにします。次のとおりです。
- そもそも借りないほうがいい
- 小手先のテクニック
- 銀行に媚を売りたくない
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
ちなみに、これら反論に対して非難する意図はありません。わたし自身がどう考えているかの「比較対象」として挙げるにすぎないことを申し添えておきます。反論もまた良し、です。
銀行融資・銀行対応について社長・税理士から言われたことがある反論
そもそも借りないほうがいい
わたしは、「中小企業は、基本的に銀行融資を受けたほうがよい」という考え方で一貫しています。すると、言われることがあるのは「そもそも借りないほうがいい」という反論です。
借金なんてないほうがいい、しないほうがいいに決まっている。銀行借入があると、決算書の内容も悪くなってしまう! みたいな。たしかに、それはそれでそのとおりでしょう。
が、わたしはわたしなりに、「それでも、銀行融資を受けたほうがよい」と思っています。いやいや、なんで? という話をはじめると長くなるのですが。
端的に言えば、「中小企業の業績は不安定だから」という理由が1つ、「中小企業の自己資本は過小だから」という理由が1つになります。
業績が不安定であれば、業績が悪くなったときにはおカネが足りなくなるものです。さらには、もともとが過小資本(出資額が少ない、社長個人も会社に出せるおカネが限られる)ときています。
これらの問題をおぎなう、もっとも有効な手段は「いまのところ」は銀行融資だ、というのがわたしの考えです。
いざというときには、おカネが不足する以上、常日頃から銀行とはお付き合いを深めておくのがよい、そう考えています。つまり、原則的には「借入し続ける」ということです。
例外は? もう2度と銀行から借入しなくてもよいくらいにまで、おカネ(会社あるいは、社長個人の)が増えたとき。でも、それって現実的ではありませんよね。
なので、「中小企業は、基本的に銀行融資を受けたほうがよい」という始めの話になるわけです。
ところで、銀行借入があると決算書の内容が悪くなる(=自己資本比率が下がる)、というのは「大企業」の見方だと言えます。中小企業の場合、まず見るべきは「預金」です。
極端を言えば、預金さえあれば、少々赤字になったとしてもしのぐことができます。逆に、いくら自己資本比率が高くても、預金がなければ、ちょっとしたことで資金破綻してしまうこともあるでしょう。
この点で、銀行は自己資本比率よりも、預金を見ているものです。借入があっても、預金が多い会社のほうに、銀行は安心・安全を感じます。借入が増えると決算書の内容が悪くなる、というのは絶対的に正しい見方ではない、ということです。
小手先のテクニック
同じ業績だとしても、経理処理や決算書の表示のしかたによっては、銀行からの評価・見方が変わることがあります。なので、経理処理や決算書の表示には気をつけましょう。
という話をすると、「そんなのは小手先のテクニックだろう」との反論をいただくことがあります。たしかに、「銀行融資・銀行対応ありき」だとしたら、そのとおりでしょう。
が、そもそもの経理処理や決算書への表示のしかたが歪んでいるのだとしたら…? わたしの個人的な経験上ではありますが、わりと多くの中小企業の決算書は歪んでいます。
ここで言う「歪み」とは、事実を正しくあらわさない経理処理、事実を正しくあらわさない決算書、という意味での歪みです。
たとえば、社長からの借入金について。会社が、社長個人からおカネを借りているケースです。中小企業では珍しいことではありません。その借入金が、返済できずに塩漬けになっていることがあります。
この場合、社長からの借入金は、会社に対する「出資」のようなものなので負債ではなく、資本とみなすという銀行の見方があります。
ただし、そういう見方をしてもらうためには、ただ単に「借入金」と経理処理して、決算書に表示するのでは不十分です。資本とみなすべき借入金であることを、銀行に気づいてもらうことができません。
ゆえに、相応の経理処理、決算書の表示を検討する必要があります。ただし、検討しなくても法律的に問題があるわけではなく、だとすれば、それって小手先のテクニックなんじゃないの? と。
ですが、そのテクニックは、銀行融資・銀行対応に終始するものではありません。
なぜなら、銀行の見方・考え方は「より事実を見極めよう」とするものであり、その見方・考え方は、社長が自社の状況を見極めるのにも役立つからです。
社長からの借入金という事例は、ほんの一例に過ぎません。ほかにもいろいろありますから、一事が万事です。
表面的には「小手先のテクニック」だとしても、その本質は「事実の正しい把握」にある。その理解があるかないかで、単なる小手先のテクニックとみるか、必要な小手先のテクニックとみるかが分かれる。わたしは、そのように考えています。
銀行に媚を売りたくない
銀行とは円満な関係を築きましょう、みたいな話をしたときに受ける反論が「銀行に媚を売りたくない」です。社長であっても税理士であっても、両者にそのような反論が見られます。
たとえば、融資の金利について。わたしは、「金利交渉はほどほどにしておきましょう」という話をすることがあります。
言うまでもありませんが、銀行にとっては「利息=収入」であり、大事な収入源です。金利交渉がいきすぎれば、銀行としては融資をするモチベーションが下がってしまいます。
もちろん、まったく金利交渉をしなければ、銀行の言いなりになってしまうことはありえますから、金利交渉自体は有効だし、必要なものです。
ただし、銀行との「中長期的な関係」を求めるのであれば、ときには銀行が求める金利をのみこむことも必要なんじゃないですか? という話をしています。
なお、銀行と「中長期的な関係」が必要なのか?(=その場限りでもいいのでは?) と、おもわれるかもしれませんが。必要性は、すでに前述したとおりです。
中小企業は基本、業績が不安定で過小資本であり、常に銀行融資を必要としています。だとすれば、銀行との中長期的に円滑な関係が必要になることはわかるでしょう。
そのときどきで、金利が一番低い銀行をとっかえひっかえしている社長がいます。個人的には、あまりおすすめできることではありません。少々金利が高くても、あえて借りる「利」はあります。
また、銀行員に対して、高圧的・威圧的な態度をとる社長や税理士はいるものです。聞けば、「銀行に媚を売りたくない」との思いをいだいているケースがあります。
でも、だれが好き好んで「高圧的・威圧的な態度」の人とお付き合いをしたいと考えるでしょうか。そういった社長・税理士は、おのずと銀行から距離を置かれるはずです。
そうは言っても、銀行担当者の言動が腹に据えかねる! というケースもあるでしょう。ただし、それさえも、怒りをあわらにすることはおすすめできません。
あまり事を荒立てれば、その銀行との関係が切れてしまう可能性もあるからです。銀行担当者には定期的な異動がありますから、数年もすれば変わります。
そのときにまた、良好な関係を築ける可能性を残すためにも、少々の怒りはガマンをすべきです。
さらに言えば、銀行との関係は「敵・味方」ではありません。きれいごとを言うようですが、「パートナー」です。事実、最近の銀行には「伴走支援」という考え方があります。
融資先の課題・問題を共有して、いっしょになって解決に取り組んでいく。結果、融資先が成長すれば銀行もまた成長できる、という考えが伴走支援です。金融庁が求めていることでもありますから、ますます浸透していくことでしょう。
銀行は、自社のパートナー。目指すのはWin-Winの関係です。
まとめ
銀行融資・銀行対応の情報発信をしています。この点で、社長や税理士の方から言われたことがある反論を挙げつつ、あらためて、わたし自身の考え方をまとめてみました。
絶対的な正解があるわけではないので、参考になるところは参考にしていただきつつ、ご自身の考え方をあらためて見直すきっかけになるようでしたら幸いです。
- そもそも借りないほうがいい
- 小手先のテクニック
- 銀行に媚を売りたくない