社長は、銀行に「自社の商売」を伝えることが大切です。そんなときに役立つ神ツールが、ローカルベンチマークの2ページめ。その理由やポイントについてお話をしていきます。
銀行に、自社の商売を伝えよ。
銀行から融資を受けている社長がすべきことの1つに、「銀行に自社の商売を伝える」ことが挙げられます。
自社の商売とは、端的に言えば「だれに・なにを・どのように売るか」です。これは、決算書や試算表といった「数字」からはわからないことであり、ゆえに、別途伝えることが重要になります。
ところが、実際にはうまく伝えられていないケースが少なくありません。結果、融資が受けにくくなっていることもあるので気をつけましょう。
銀行は、商売がよくわからない会社に対しては、融資を検討しづらいものなのです(怪しい商売ではないか? 将来にわたって利益を生み出せるような商売か? などの検討)。
この点で、銀行へ自社の商売を伝えるのに良いツールがあります。経済産業省が提供している「ローカルベンチマーク」です。Excelファイルとしてダウンロードできます。
そこから出力できる情報は、A4用紙で3ページ。このうち2ページめが、自社の商売を伝えるにあたっては「神ツール」と言ってよいでしょう。その理由は次のとおりです↓
- 図示できてわかりやすい
- 自社の強みがわかる
- 取引先がわかる
くわしくはこのあと、順番に確認をしていきましょう。
ローカルベンチマークの2ページめが神ツールである理由
ローカルベンチマークの2ページめは、こちらです↓
これを見ながら、「ローカルベンチマークの2ページめが神ツールである理由」を見ていきましょう。
図示できてわかりやすい
ローカルベンチマークの2ページめは、見てのとおり「図」です。ページ内は、大きく2つ、上下に分かれています。上が「業務フロー」であり、下が「商流把握」です。
このうち「業務フロー」は、文字どおり、業務の流れ(フロー)を図示したものになります。どういった流れをへて、どういう価値(商品・サービス)が生み出されるのかをあらわす図です。
ローカルベンチマークでは、業務を5つに区分しています。例を挙げると次のとおりです↓
- 企画→開発→製造→デザイン→販売
- 企画開発→調達→製造→販売→物流
- 企画→開発→製造→販売→アフターフォロー
- 企画→開発→提案営業→導入コンサル→運用コンサル
というように、「会社によっていろいろ」な業務フローが考えられるでしょう。その「会社によっていろいろ」を、銀行に伝えることが大切になります。
それを「口頭」や「文字」で伝えることもできないわけではありませんが、「図示」したほうがわかりやすい、ということは言うまでもないでしょう。
とはいえ、どうやって図示すればいいの…? という社長にとっては、形式にあてはめるだけで悩むことなく図示できるのが、ローカルベンチマークを利用するメリットです。
もうひとつの「商流把握」は、仕入先や外注先に始まり、得意先やエンドユーザーまでの流れを図示することで、自社のビジネスモデルを明らかにすることができます。
銀行担当者であれば、もっとも把握したい情報の1つなのですが、これがうまく描けずに悩んでいる… というのは、銀行員あるあるだそうです。
よって、社長のほうからローカルベンチマークを提供できると、銀行担当者に喜ばれることになります。ひいては、稟議書も書きやすくなるので、融資が受けやすくもなるはずです。
図示するなんてメンドーだ、とおもわれるかもしれませんが。いちど図示すれば、銀行担当者に異動があったときに、あらためて自社の説明をするのにも便利です。
なにより、図をつくる過程で、社長自身があらためて自社の商売を考えるきっかけにもなります。
自社の強みがわかる
前掲したローカルベンチマークの2ページめを見ると、「業務フロー」には、各業務について「差別化ポイント」という項目があります。
つまり、同業他社との違いをあきらかにしましょう、ということです。と聞くと、「違いなんてあるかなぁ」と悩まれるかもしれません。が、なにかしらはあるものです。
まずは、「業界の常識」に照らしてみるとよいでしょう。業界内では一般に〇〇しているけれど、ウチはそうじゃない。みたいなポイントを探してみる、ということです。
また、社長1人で考えるのではなく、社員にヒアリングをしてみるのもよいでしょう。
企画業務であれば、企画担当者に「どこにこだわりを持っているのか」を聞いてみる。製造業務であれば、製造担当者に「どの技術に自信があるのか」を聞いてみる。販売業務であれば、販売担当者に「顧客からどういった声を聴いているのか」を聞いてみるなど。参考になる情報はあるはずです。
そうしてあきらかになった「差別化ポイント」は、いうなれば「自社の強み」であり、銀行に対して「自社の商売の良さ」をアピールできる材料になります。
いっぽうで、「商流把握」の図に記載されている「選ばれている理由」という項目にも注目です。仕入先や協力先、得意先、エンドユーザーから、なぜ自社が選ばれているのかを書き込みます。
金額なのか、品揃えなのか、品質なのか、スピードなのか、技術なのか、その理由はさまざまでしょうが、「必ず」選ばれている理由があるはずです。
もしも、よくわからにようであれば、これを機会にヒアリングをしてみましょう。
そうしてあきらかになった「選ばれている理由」もまた、他社と比較したときの「自社の強み」になるものですから、銀行に対するアピール材料になります。
融資先の「強み」は、銀行担当者が融資を検討する際の重要な情報です。その情報があるかないかで、融資の受けやすさは大きく変わります。積極的に情報提供していきましょう。
取引先がわかる
前掲したローカルベンチマークの2ページめのうち、「商流把握」には、仕入先や協力先、得意先、エンドユーザーについて「社名」を記載するように指示されています。
つまり、自社の取引先を具体的に明示しましょう、ということです。なので、それぞれ主要な取引先をピックアップして記載するようにしましょう。
具体的な社名をあきらかにすることで、それを見た銀行は、より融資先の商売をイメージしやすくなります。
たとえば、仕入先の社名がわかれば「どのような規模で、どのような特徴をもった仕入先」かを調べることが可能です(銀行にはいろいろな情報源があります)。
もし、大きな仕入先1社に頼っているようであれば、その仕入先になにかあったら… というリスクがあります。仕入れ値が、相手の言い値になる(価格交渉できない)という可能性もあるでしょう。
すると、銀行からの「解決策」として、仕入先を紹介してもらえる可能性があります。ところが、具体的な仕入先がわからなければ、銀行としても支援のしようがありません。
また、「得意先」についても同様です。特定の得意先に偏っているようであれば、その得意先になにかあったときにはリスクになります。
そこで、現在の得意先と似たような立ち位置にある売上先を、銀行から紹介してもらえるかもしれません。というように、取引先の情報を具体的に開示するメリットはあるわけです。
さらには、「得意先」として、だれもが知るような大企業・有名企業が記載されていれば、銀行に対してはアピール材料になります。そういった企業からも選ばれる商品力がある、というアピールです。
そういったところまでをイメージしながら、どの取引先を記載するかを検討してみましょう。
まとめ
社長は、銀行に「自社の商売」を伝えることが大切です。そんなときに役立つ神ツールが、ローカルベンチマークの2ページめ。その理由やポイントについてお話をしてきました。
ローカルベンチマークを使えば、口頭だけで伝えようとしたり、文字だけで伝えるよりも、網羅的でわかりやすく伝えられることがわかるはずです。ぜひ、利用してみましょう。
- 図示できてわかりやすい
- 自社の強みがわかる
- 取引先がわかる