会社の銀行融資・銀行対応について、「借りられるうちに借りられるだけ借りましょう」とお伝えしています。が、「借りられるだけ」とはいくらを言うのか? お話をしていきます。
借りられるだけ、っていくらだよ?
わたしは、こうして「会社の銀行融資・銀行対応」についての発信をしています。そのなかで、たびたびお伝えしているのが「借りられるうちに借りられるだけ借りましょう」ということです。
これを聞いて、こうおもわれるかもしれません。「借りられるだけ、っていくらだよ? そもそも、借りられるだけ借りるだなんて借りすぎではないのか?」と、おもわれるかもしれません。
というわけで、銀行融資の「借りられるだけ」とはいくらを言うのか、についてお話をしていきます。具体的には、次のとおりです↓
- 年間売上高の半分まで
- 銀行が貸せるところまで
- プロパー融資で借りられるところまで
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
銀行融資の「借りられるだけ」とはいくらを言うのか?
年間売上高の半分まで
いきなりあたりまえのことを言いますが、会社は「資金(手元のおカネ)」が尽きたときがおわりです。いくら売上があろうと、利益があろうと、資金が尽きたら倒産してしまいます。
そういう意味では、会社にとって「もっとも大事なものはおカネ」だと言ってもよいでしょう。そのおカネは「あればあるほどよい」とはいえ、うなるほどのおカネを持つ会社はまずありません。
そこで、1つ目安を提示するのであれば、「年間売上高の半分」です。もし、自社の売上高が年間 5,000万円であれば、半分の 2,500万円が「あるとよいおカネ(金額)」の目安になります。
つまり、半年のあいだ売上ゼロが続いたとしても、なんとかやっていけるであろう金額です。
事業には「まさか」があります。実際、自然災害や新型コロナなどもあるわけで、売上の激減を経験している社長もいるでしょう。そのときに「年間売上高の半分」のおカネがあれば、時間稼ぎができる分、立て直せる可能性は高まるものです。
とはいえ、それだけのおカネを「自前(自己資金=利益を貯める)」で用意するのも、カンタンではありません。売上高 5,000万円、税引前利益 500万円の会社だとすれば、税引後に残るおカネは 350万円です(税率が 30%として)。
このペースで年間売上高の半分のおカネ(2,500万円)を貯めるには、7年かかります。事業は山あり谷ありですし、投資も必要でしょうから、実際にはもっとかかるかもしれません。
そのあいだに「まさか」が来ては困るので、だったら、借りてでもおカネを持ちましょう。借りられるうちに借りておきましょう」と、おすすめしているしだいです。
以上をふまえて、銀行融資の「借りられるだけ」とは、ひとまず「手元のおカネが年間売上高の半分になるまで」ということになります。
言い換えると、手元のおカネが年間売上高の半分になるまでは、銀行から借りられるだけ借りることを考える、ということです。
銀行が貸せるところまで
年間売上高の半分になるまで、銀行から借りましょう、と言いました。しかしながら、これは「会社都合」にすぎません。会社が「借りたい」というだけのハナシであり、銀行が貸してくれるかどうかは別のハナシです。
したがって、現実的には、社長は「年間売上高の半分」のおカネを目指しつつ、銀行が貸せるところまで借りる、ということになります。では、銀行はどこまで貸せるのか?
いろいろと要素はありますが、前述した「年間売上高の半分」が、実は銀行にとっての目安でもあります。それがギリギリ貸せる金額の目安、という感じです。
年間売上高が 5,000万円の会社であれば、総借入額(すべての銀行あわせて)は 2,500万円が限度。それ以上は危険だから貸すことができない、という見方が銀行にはあります。
だったら、年間売上高の半分まで借りるのは容易なのか? というと。そうでもありません。年間売上高の半分というのは、目安の1つに過ぎず、銀行が考える「要素」はほかにもいろいろあるからです。
たとえば、利益。売上がどれだけ多くても、利益がマイナス(赤字)ならどうでしょう? 銀行は、「返済原資が無い」ということで、融資を躊躇することになります。
つまり、会社が借りたくても、結局は「銀行が貸せるところまでしか借りれない」ということです。
借りられるだけ借りましょう、と言うと、「そんなに借りたら、会社がつぶれてしまう!」といった反論もありますが。そもそも、銀行は「会社がつぶれるほど」に貸すことはないのです。
それでも会社がつぶれるのは、借りたことが原因ではなく、それ以外に別の原因があるからだ、ということになります。ですから、「借りる時点での借りすぎはない」と、覚えておきましょう。
プロパー融資で借りられるところまで
では、銀行が貸せるところまでは「めいっぱい」借りてしまってよいか、というと。実は、そうでもなかったりするので注意が必要です。
結論、借りてもよいのは、「プロパー融資で借りられるところまで」になります。
銀行からの融資は、大きく分けて2つ。プロパー融資と、信用保証協会の保証付き融資があります。このうち、保証付き融資は、銀行にとって貸しやすい融資です。
信用保証協会の保証が付いているため、会社が返済できなくなったときには、信用保証協会が代わりに返済をしてくれます。なので、銀行にとってはリスクが小さく貸しやすいのです。
いっぽうで、プロパー融資に信用保証協会の保証はありません。会社が返済できなくなれば、その損失は銀行がこうむることになります。
なので、銀行はできるだけプロパー融資を避けて、できるだけ保証付き融資で貸したい、と考えるものです。社長が黙っていると、保証付き融資ばかり… ということになりかねません。
ゆえに、社長は銀行に対して、プロパー融資の交渉をすることが大切になります。プロパー融資には、保証付き融資のような制度上の上限はありませんから、「銀行が貸せるところまで」を狙いましょう。
そのうえで、保証付き融資も「あるていど」は借りておきますが(そうしないと、銀行はプロパー融資を出したがらないから)、限度額いっぱいまでは借りないようにします。
つまり、保証付き融資の「余裕」を残しておくということです。すると、業績悪化時など、銀行が融資をしづらいときにも、保証付き融資であれば融資を受けられる可能性が高まります。
なお、保証付き融資は「一般枠」の場合、無担保で 8,000万円が上限です。ただし、会社の規模や状況によって、実際の上限は異なりますので、銀行担当者に確認をしてみるとよいでしょう。
まとめ
会社の銀行融資・銀行対応について、「借りられるうちに借りられるだけ借りましょう」とお伝えしています。が、「借りられるだけ」とはいくらを言うのか? について、お話をしました。
会社は、資金(手元のおカネ)が尽きたときがおわりです。資金繰りをより安定させるためにも、「借りられるうちに借りられるだけ借りる」ことを考えてみましょう。
- 年間売上高の半分まで
- 銀行が貸せるところまで
- プロパー融資で借りられるところまで