銀行融資を受ける会社の社長が考える「返せるかどうか」。この点で実は、銀行融資で「返せるかどうか」を考えなくてもよい、その理由についてお話をしていきます。
各所から叱られたとしても。
会社が銀行融資を受けるにあたって社長が、「借りたら返せるかどうか?」と考えることがあります。
つまり、借りたはいいけど返せなかったら困ってしまう… ゆえに、「返せるかどうか?」と考えるわけです。でも実は、「返せるかどうか」を考えなくてもよい、考える必要はないともいえます。
そんなことを言うと、各所から叱られてしまいそうです。イイ加減なことを言うんじゃないっ!
とはいえ、わたしはけしてイイ加減なことを言っているのでも、他人事におもっているのでもありません。きちんとした理屈があって、きちんとした理由があるから言っています。
というわけで本記事は、銀行融資で「返せるかどうか」を考えなくてもよい理由についてのお話です。具体的には、次のとおりになります↓
- 売掛金・棚卸資産で返せる
- 借入と同時におカネも増える
- 会社がつぶれるよりはいいのなら
それではこのあと、それぞれの理由について、くわしく確認していきましょう。
銀行融資で「返せるかどうか」を考えなくてもよい理由
売掛金・棚卸資産で返せる
借りたおカネの返済原資は利益、というハナシがあります。これは、「半分正解、半分不正解」です。返済するのに利益が必要なケースもあれば、必要ないケースもある。そういうことです。
では、返済するのに利益が必要ないケースとは? 経常運転資金分の借入です。経常運転資金とは、「売掛金+棚卸資産ー買掛金」で求められる金額になります。
この経常運転資金は、会社が事業を続けている限り、立て替えなければいけない金額であり、銀行もそれを理解しているため、経常運転資金分の融資には積極的です。
加えて、銀行が積極的なのは、「売掛金・棚卸資産」は現金化すれば返済原資になるからでもあります。売掛金が不良債権であったり、棚卸資産が不良在庫でない限りは、いずれ現金化できるわけですから、なにかあってもその分のおカネで返済をしてもらえばいい。
銀行にしてみれば、売掛金や棚卸資産は担保のようなものであって、経常運転資金分の融資は比較的、安心・安全な融資だといえるのです。
これを、会社の側から見るとしたらどうでしょう? なにかあっても、売掛金を回収したり、棚卸資産を売ることで、その分の借入は返済することができる、と考えることができます。
だとしたら、経常運転資金分の借入については「返せるかどうか」を考えなくてもよい、という理屈が成り立つはずです。ただし、経常運転資金の金額は変動するものでもありますから、金額の変化には気をつける必要があります。
たとえば、当時の経常運転資金として 500万円の融資を受けたあと、売上が落ち込むなどして、いま現在の経常運転資金は 300万円だとすれば、差額の 200万円については返済原資が不足している(利益で返済する必要がある)ということです。
借入と同時におカネも増える
借入=借金が増える、と考えている社長がいます。これまた、「半分正解、半分不正解」です。なぜなら、増えるものは借金だけではありません。
正しくは、「借入=借金・おカネが増える」です。たとえば、1,000万円の借入をしたら、1,000万円の借金(負債)が増えるのと同時に、1,000万円のおカネ(資産)が増えます。
だとすれば、「借金で会社がつぶれる」というハナシはウソであることがわかるでしょう。たとえ、1億円を借りたとしても、1億円のおカネも増えるのであって、いつでも完済できる状況ですから、借金で会社がつぶれることはないのです。
それでも、会社がつぶれるのは、借りたおカネをなにかに使ったきり、増やせずに減らしてしまうから。結果として、借金だけが残った状態で会社をつぶしてしまいます。
すると、借金が原因で会社がつぶれたように見えることから、「借金で会社がつぶれる」などというトンデモ話が、まことしやかに語られるわけです。が、会社がつぶれた原因は借金ではなく、別のところにあることを理解しておきましょう。
繰り返しになりますが、借入をすれば、同時に同じ額のおカネも増えます。ですから、できるだけ借入をしておき、手元のおカネ(預金残高)を増やすことで、資金繰りはラクになります。
資金繰りがラクになれば、そのあいだ社長は、資金繰りの心配をしなくて済むのは大きなメリットです。資金繰りの心配を抱えた社長は、経営に集中できなくなります。経営がおざなりになるから、資金繰りはますます悪くなる… 悪循環です。
なので、借りることができるのであれば、借りられるうちに借りておくこと。過度に借入を恐れず、資金繰りをラクにすうることを考えてみましょう。
会社がつぶれるよりはいいのなら
もしもいま、手元のおカネがなくて、すぐに借入をしなければ会社がつぶれてしまうとしたら。借入をするか、それとも、借入するくらいならつぶれてもいいと考えるか?
良いか悪いかはともかく、多くの社長は「借入をする」ほうを選ぶものと考えます。返せるかどうかを迷っているひまはなく、迷っている場合でもないからです。
このような考え方が、「善いか・悪いか」を判断するのはナンセンスでしょう。万人に共通する善悪の問題というよりは、社長それぞれのポリシーの問題だからです。
なので、「借入するくらいならつぶれてもいい」と考える社長に対して、覚悟が足りない! といった非難をすることなどありませんし、それはそれで尊重されるべき選択に違いありません。
そのいっぽうで、「いざとなったら借入をする」と考える社長なのであれば、いざとなってはいない場面であっても、借りられるうちに借りておくのが筋ではないか、とはおもいます。
いずれ借りるのであれば、いま借りるのも、あとで借りるのもいっしょだからです。どうせ借りるなら、いま借りられるうちに借りておいたほうがいい。なぜなら、いざとなってしまった会社に、銀行が融資をしたいとは考えないからです。
社長が借りたいときほど借りられない、借りなくてもいいときほど借りやすい。というのが、銀行融資でもあります。
ですから、いざとなったら「返せるかどうか」を迷わないのであれば、いざとなっていない場面であっても「返せるかどうか」を迷うこともないはずです。一貫性を持ちましょう。
まとめ
銀行融資を受ける会社の社長が考える「返せるかどうか」。この点で実は、銀行融資で「返せるかどうか」を考えなくてもよい、その理由についてお話をしてきました。
返せるかどうかを考えなくてもよいなど、理由を知らずにいれば、ただの暴論に聞こえることでしょう。ですが、理屈を理解していれば、借入を「過度に恐れる」ことはなくなります。
結果として、ムダに資金繰りを悪くすることを避けられるのがメリットです。社長は、借入を過度に恐れることがないように気をつけましょう。
- 売掛金・棚卸資産で返せる
- 借入と同時におカネも増える
- 会社がつぶれるよりはいいのなら