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設備資金の融資を受けるなら運転資金の融資も受けなければいけない

設備資金の融資を受けるなら運転資金の融資も受けなければいけない

会社が銀行から設備資金の融資を受けるなら、運転資金の融資もあわせて受けましょう。その理由と、それでも運転資金の融資を受け忘れたときの対応についてお話しします。

目次

設備資金に運転資金はツキモノ

会社が銀行から融資を受けるときには、「資金使途(おカネの使いみち)」が必要です。その資金使途は、大きく分けて2つ。設備資金と運転資金があります。

このうち設備資金とは「設備投資をするためのおカネ」であり、いっぽうの運転資金は「設備投資以外に使うおカネ(仕入代金や経費の支払など)」です。

ここで1つ、注意点があります。それは、設備資金の融資を受けるなら運転資金の融資も受けましょう! ということです。これを聞いて、「どうして?」とおもわれるようであれば要注意。このあとのお話を確認するようにしましょう↓

このあとの話の内容
  • 設備資金の融資を受けるなら運転資金の融資も受ける理由
  • それでも運転資金の融資を受け忘れたらどうするか

では、順番にお話をしていきます。

設備資金の融資を受けるなら運転資金の融資も受ける理由

おもに、理由は2つあります。

理由1・運転資金の増加をともなうから

たとえば、あたらしい製造機械を購入するとします(設備投資)。

その製造機械によって、あたらしい製品をつくることができたり、従来の製品でもより生産量を増やすことができれば、その分、売上が増加するわけですが、だとすればどうなるか?

運転資金が増加します。売上が増えれば売掛金が増え、在庫も増えるのが自然です。結果として、「経常運転資金(売掛金+棚卸資産ー買掛金)」が増えます。

経常運転資金が増えるということは、その分のおカネが売掛金や棚卸資産に置き換わるということであり、結果として、資金繰りが悪くなる。これを忘れてはいけません。

売上増加が見込まれるときにはあらかじめ、運転資金増加分の融資を受けておきましょう、というのは財務のセオリーなのですが。設備投資の際には、設備資金の融資に気を取られ、運転資金の融資を受け忘れているケースがあります。

銀行担当者が気づいて、提案してくれることもあれば、してくれないことはあるものです。社長自身で気づけるようにしておきましょう。売上増加分の運転資金をあとから借りることはできますが、資金の手当てが遅れると最悪は黒字倒産ですから、じゅうぶんに注意が必要です。

理由2・思いどおりにいかないこともあるから

たとえば、1,000万円の製造機械を購入するとします(設備投資)。このとき、返済期間 10年で 1,000万円の融資を受けることができたとしたらどうでしょう。

毎年の返済額は 100万円であり(1,000万円 ÷ 10年)、その製造機械によって、毎年 100万円の利益をあげることが前提になります。ところが、思いどおりにはいかず、利益が少なかったらどうなるか?

当然、その分、資金繰りは悪くなります。というように、借入をともなう設備投資は、利益計画を見誤ると資金繰りに支障をきたすことを理解しておきましょう。

そのときには、銀行から融資を受ければいい。と、おもわれるかもしれませんが、それは難しいハナシです。設備投資の結果がうまくいっていないとわかれば、銀行は融資を躊躇します。

そもそも、設備投資にともなう借入は、設備投資による利益で返済すべきものであり、その利益が足りないからといって、「足りない利益を補うための融資」という考え方が、銀行にはありません。

だとすれば、設備投資がうまくいかないかもしれないことを想定して、設備投資と同時に運転資金の融資を受けておくことが1つの方法になります。設備投資の結果がうまくいっていないときには、運転資金の融資が受けにくくなることを覚えておきましょう。

それでも運転資金の融資を受け忘れたらどうするか

設備資金の融資を受けるときに、あわせて運転資金の融資を受けておきたいものですが。もし、すでに受け忘れている状況であればどうするか? おもな対応は3つです。

対応1・設備投資の効果を説明する

まずは、銀行に設備投資の効果を、数字で説明しましょう。前述した製造機械(返済期間 10年、金額 1,000万円)であれば、その製造機械によって、毎年 100万円の利益が出ているかどうかです。

出ているということであれば、運転資金増加分の融資については「前向き」な資金使途であることから、比較的融資は受けやすいと言えます。

問題は、じゅうぶんな利益が出ていないときです。これは「後ろ向き」な資金使途になりますから、前述したとおり、銀行は融資を躊躇します。

この場合、設備投資の「今後」の効果について、改善策・対応策などをふまえて、じゅうぶんな利益が見込めることを、銀行に対して説明できるようにしましょう。

対応2・現状の資金繰りをあきらかにする

銀行が融資をするときの関心事は、いつだって「貸したおカネを返してもらえるかどうか」にあります。返してもらえるかどうかとは、つまり、それだけのおカネがあるかどうかです。

この点で、まずは資金繰り実績を示すことをおすすめします。具体的には、過去3ヶ月〜6ヶ月ていどの「資金繰り実績表」を作成して、銀行に説明することです。

これにより、現状でどれだけの資金が不足しているのか、どうして不足しているのかを把握することができるようになります。必要な融資額の妥当性にもつながる部分です。

資金繰り実績表などなくても、試算表があればじゅうぶんじゃないか? と、おもわれるかもしれませんが。試算表は「粉飾」されている可能性を銀行は疑いますし(資金繰りは粉飾できない)、資金繰りの流れまでは見えないので不十分です。

というわけで、手間を惜しまず、資金繰り実績表をつくるようにしましょう。

対応3・資金繰りの改善見込みを伝える

現状の資金繰りに加えて、今後の資金繰りとして、資金繰りの改善見込みを伝えることも欠かせません。具体的には、向こう6ヶ月〜1年ていどの「資金繰り予定表」が必要です。

運転資金の融資を受けるにあたって、借りたおカネを返せることを、資金繰り予定表であきらかにしましょう。これを「口頭だけ」で伝えることに説得力はありません。結果として、融資が受けにくくなってしまいます。

前述した「理由2(利益が不十分)」のケースはとくに、資金繰り予定表が重要です。投資効果の改善策・対応策の結果も反映させたうえで、借りたおカネを返せることを、銀行に説明できるようにしましょう。

このとき大事なことは、改善策・対応策の具体性や妥当性です。なんの策もなかったり、抽象的すぎる策であれば説得力がありません(具体性の問題)。突飛すぎる策や的外れな策もまた説得力がありません(妥当性の問題)。

まとめ

会社が銀行から設備資金の融資を受けるなら、運転資金の融資もあわせて受けましょう。その理由と、それでも運転資金の融資を受け忘れたときの対応についてお話ししました。

設備投資のあとで、資金繰りに悩む会社は少なくありません。本記事の内容を押さえておきましょう。資金繰り悪化を防ぐのに役立つはずです。

    このあとの話の内容
    • 設備資金の融資を受けるなら運転資金の融資も受ける理由
    • それでも運転資金の融資を受け忘れたらどうするか
設備資金の融資を受けるなら運転資金の融資も受けなければいけない

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