粉飾決算がいけないことなど、社長であればあたりまえに知っている。にもかかわらず、いざとなったら粉飾決算に走ってしまう… それが絶対にダメな理由を3つ、お話ししていきます。
そのための楔をいま、打ち込むために。
粉飾決算をしてはいけません、と言ったなら。そんなのあたりまえだろう? と、おもわれる社長が多いことでしょう。
ところがいっぽうで、いざとなったら粉飾決算をしてしまった… という社長が少なくはないのもまた事実です。では、その「いざ」とは?
業績が悪くなってしまい、赤字になったとき。このままでは、銀行から融資が受けられなくなってしまうかもしれない。そうなれば、資金繰りがもたない。だからもう、粉飾しかない。みたいな。
気持ちはわかりますが、それでもなお社長は、粉飾決算に走ってはいけません。絶対にです。その理由は3つあります。次のとおりです↓
- 必ずバレるから
- バレたら大変だから
- 経営判断できなくなるから
それではこのあと、順番に確認していきましょう。いざというときにも、粉飾決算の誘惑に耐える。そのための楔(くさび)をいま、打ち込むために。
社長が粉飾決算に走っては絶対にダメな理由
必ずバレるから
ちょっとくらい粉飾決算をしてもバレないだろう、と考える社長がいます。そのとおりです。ほんとうにちょっとくらいであれば、粉飾決算を見抜ける確率は高くありません。
ですが、実際に「ちょっとくらい」ですむのか? といえば、すまないケースがほとんどです。なぜなら、ちょっとくらいですむのなら、そもそも粉飾をする必要もないでしょう。
また、いちど粉飾をすれば、次の粉飾を呼び込むことになります。たとえば、架空在庫を増やした場合(利益を水増しすることができます)。翌年の決算では、その分の利益を出して、架空在庫を解消したいところです。
でも、いちど粉飾をするような会社が、業績を回復させることは難しく、またしても赤字… というのは「あるある」でしょう。そこで社長は、ふたたび架空在庫を増やすことを考えます。
2年にわたって架空在庫を増やすとどうなるか? 棚卸資産回転率(棚卸資産 ÷ 売上高)が異常値を示すこととなり、銀行は粉飾決算に気づきやすくなるものです。
というように、粉飾決算を重ねるほどに、粉飾決算による「歪み」は大きくなるため、銀行にバレやすくなります。そのうえ、粉飾決算を重ねるほどに、さらに重ねる可能性が高まるために、銀行にバレやすくなる。つまり、粉飾決算は必ずバレる命運にあるのです。
そんなこと、言うけどさ。ウチは粉飾決算をしているけれど、銀行から何も言われないよ。だからバレてないんだよ、と言う社長がいますが。それは、間違いです。
銀行はわかっていて、言わないだけであって、粉飾決算には気づいています。うかつなことを言って、社長と揉めるのもメンドーだから、気づかないフリをしている。あとは新規融資を控えて、徐々に既存融資の回収をはかればよいだけです。
バレたら大変だから
銀行が、粉飾決算に気づけば「新規融資を控える」と前述しました。これは、その先もずっとです。粉飾決算に気づかれた銀行からは、以後2度と融資が受けられないものと考えておきましょう。
おカネを貸す銀行の立場になってみれば、当然です。ウソをついてまでおカネを借りようとした相手を、信用することなどできません。
すると、どうなるか? 会社は、資金調達先を1つ失うことになります。あたらしい銀行を開拓する(初めての融資を受ける)のもカンタンではありませんから、社長にとっては大きな問題です。
さらに大きな問題のハナシもしておきましょうか。銀行は粉飾に気づいても、気づかないフリをしている、と言いました。ですが、それも「ていど」によります。
つまり、粉飾決算の金額があまりに巨額であり、手口があまりに悪質であれば、ダマってはいないケースはあるわけです。このとき銀行は、「残債の一括返済」を要求してきます。
そもそも、会社は業績が悪いから粉飾をしているのであり、そこへきて残債の一括返済となれば、とても応じられるものではないでしょう。結果、差し押さえとなれば、一巻の終わりです。
とはいえ、粉飾しなければどうせ終わりだ。だったら粉飾をするしかない。と、おもわれるのであれば、それは違います。粉飾をするくらいなら、赤字のまま決算をするほうがマシです。
なぜなら、リスケジュール(返済猶予、返済減額)できる可能性があるからです。リスケジュールできれば、そのあいだに業績改善を実現できることもあるでしょう。
ところが、粉飾決算している会社に対して、銀行がリスケジュールを認めることはありません。粉飾をすれば、リスケジュールすらできなくなることを忘れないようにしましょう。
経営判断できなくなるから
粉飾決算には、もう1つ大きな問題があります。というか、これがもっとも大きな問題だと言ってよいでしょう。それは、社長が「経営判断できなくなる」ことです。
前述したとおり、粉飾をすれば決算書には「歪み」が生じます。言い換えると、「決算書が事実を示さなくなる」ということです。すると、社長は「正しい業績」を把握できなくなります。
正しい業績とは、社長にとっては重要な「経営判断の材料」であるはずです。粉飾によって、その材料がなくなれば、社長はなにを頼りに経営判断をすればよいのでしょうか。
勘や経験、度胸に頼らざるをえません。では、それを見た銀行はどう考えるのか。「そんな状態では、会社がうまくいくはずがない」と考えます。融資なんてできるはずがありません。
いちど粉飾をすれば、粉飾を重ねることが多いのは、すでにお話をしたとおりです。粉飾を重ねるにつれて、「何が真実なのか?」はどんどんとわからなくなってしまいます。
はじめのうちは、どこに歪みがあるのか・どれくらいの歪みであるのかがわかっても、粉飾を重ねるごとに、どこに歪みがあるのかも、どれくらいの歪みがあるのかもわからなくなってしまう…
そうして、何が真実なのかがわからなくなるのは恐ろしいことです。だから、「いちどくらいなら(だいじょうぶ)」などとは考えないようにしましょう。その「たったいちど」が命取りになるのです。
まとめ
粉飾決算がいけないことなど、社長であればあたりまえに知っている。にもかかわらず、いざとなったら粉飾決算に走ってしまう… それが絶対にダメな理由を3つ、お話ししてきました。
粉飾決算は、いうなれば、地獄(倒産)への片道キップです。後戻りが効きません。その恐ろしさを、ようく理解しておきましょう。
- 必ずバレるから
- バレたら大変だから
- 経営判断できなくなるから