会社が銀行から融資を受けるにあたって、据置期間を設定したほうがいいのか? と悩む社長がいますが。原則、設定しないほうがいい。その理由についてお話をしていきます。
原則、設定しないほうがいい。
銀行から融資を受けている(あるいは、受けようとしている)社長の悩みの1つに、「据置期間を設定したほうがいいのか?」があるようです。
実際、銀行融資の相談をお受けしているなかで、そのような質問をいただくこともあります。この点、いろいろな考え方があるとはおもいますが、わたし自身の考え方がこちらです↓
『原則、設定しないほうがいい。3つの理由があるから』
というわけでこのあと、銀行融資は据置期間を設定しないほうがいい理由について、お話をしていきます。具体的には次のとおりです↓
- 後半の資金繰りが厳しくなるから
- 返済実績ができなくなるから
- 借入コストが膨らむから
これは、意外と気づいていなかったり、勘違いをしている社長もいますので、ぜひ確認をしておきましょう。
銀行融資は据置期間を設定しないほうがいい理由
後半の資金繰りが厳しくなるから
たとえば、「返済期間5年」の融資について「据置期間1年」とした場合、完済までの期間は何年になるのか?
答えは5年です。知っている人にとってはあたりまえではありますが、意外と「6年」だと考えている社長も少なくないので、気をつけなければいけません。
つまり、まずは据置期間(元金返済がなく、利息だけを支払う期間)が1年あって、そのあと5年かけて返済すればいい。そう考えているケースがある、ということです。
ところが、正しくは「据置期間1年、そのあと4年で返済」になります。したがって、「据置期間は返済期間のなかに含まれる」ことを覚えておきましょう。
すると、どうなるか? 据置期間がおわったあとの返済負担が大きくなります。たとえば、返済期間5年、据置期間1年で 1,500万円の融資を受けたとして。据置期間がおわったあとの毎月の返済額は、31.25万円です。
これに対して、据置期間を設定しなかった場合、毎月の返済額は 25万円になります。1ヶ月あたり 6.25万円、1年にすると 75万円もの差になるわけです。
言うなれば、据置期間とは返済の先送りであり、できることならやめたほうがいい。だから、「原則、据置期間は設定しないほうがいい」ということになります。では、「例外」はあるのか?
あります。たとえば、新型コロナのような不測の事態で融資を受けるようなケースです。まさに不測であり、回復までにどれくらいの期間を要するのかわかりません。
だったら、「できる限り先送り」しておいて、時間をかせいでいるあいだに回復をはかる。というのは、1つの考え方です。そこをムリして、はじめから返済をすることで資金が足りずにつぶれてしまうのでは、意味がありませんので。
また、設備投資のためのおカネ(設備資金)の融資を受けるにあたり、その投資から利益が得られるまでに時間がかかる場合には、それまでのあいだ据置期間を設定するのも1つの方法です。
というような「例外」にあたらない限りは、据置期間を設定しないことをおすすめします。
返済実績ができなくなるから
言うまでもありませんが、据置期間とは「返済をしない期間」のことです。返済をしないということは、「返済実績ができない」ということになります。
銀行融資では、「返済実績が信用になる」ものです。おカネを借りるのには信用が必要ですが、「過去、借りたおカネをきちんと返済していた」ことも信用になります。
ですから、返済実績を積み上げるほど、次の融資が受けやすくなることを理解しておきましょう。すると、据置期間を設定することが、よくないことだとわかるはずです。
たとえば、ある銀行が自社に融資をできる金額の上限が「1,000万円」だとします。実際に 1,000万円を借りたあと、返済を続けて残高は 600万円になりました。
このとき銀行は、「400万円はきちんと返してくれたから、その分はまた貸してもだいじょうぶそうだな」と考えています。なので、いちど借りた金額までの融資は受けやすいのです。
ところが、据置期間を設定している場合はどうでしょう。据置期間のあいだは、残高が減りませんから、追加の融資はできないことになります。
また、据置期間がおわって返済をはじめるにしても、据置期間がない場合と比べると返済が遅れますから、次の融資を受けるまでに時間がかかることにもなります。
というように、据置期間を設定していると、返済実績ができず、次の融資が受けられなくなったり、次の融資を受けられるまでに時間がかかる、というデメリットがあるわけです。
次の融資を考えるのであれば(ふつうは考えるべきです)、できるだけ多くの返済実績を積み上げることを優先して、据置期間を設定しないことをおすすめします。
借入コストが膨らむから
さきほど、据置期間とは「返済をしない期間」だと言いました。これにより生じるデメリットはまだあります。借入コストが膨らむことです。
まずは、利息。銀行から融資を受けたら、会社は利息を支払わなければいけません。このときの利息は、借入残高の利率を乗じて計算します。据置期間のあいだは残高が減りませんから、利息の金額が大きくなる… と、わかるでしょう。
いっぽうで、据置期間を設定しなければ、残高は毎月減っていきますから、その分、支払う利息も少なくなります。どちらがいいか? といえば、利息は少ないほうがよいはずです。
また、保証付き融資の場合には、「信用保証料」も借入コストになります。信用保証料は、信用保証協会に対して、会社が支払わなければいけない費用です。
その信用保証料は、据置期間を設定すると金額が大きくなるしくみになっています。金額や期間にもよりますが、これがけっこうバカになりません。
したがって、据置期間を設定する場合には、利息と保証料がダブルで増える… というデメリットがあります。結果として、同じ金額を借りるにしても、据置期間を設定する場合には、設定しない場合に比べて、資金繰りをより圧迫することには注意が必要です。
この点もふまえて、据置期間は「原則、設定しないほうがいい」ということになります。
まとめ
会社が銀行から融資を受けるにあたって、据置期間を設定したほうがいいのか? と悩む社長がいますが。原則、設定しないほうがいい。その理由についてお話をしてきました。
意外と気づいていなかったり、勘違いをしているところでもありますから、確認をしておくようにしましょう。のちのちの資金繰りや、銀行融資の受けやすさに影響する部分です。
- 後半の資金繰りが厳しくなるから
- 返済実績ができなくなるから
- 借入コストが膨らむから