会社はなぜ税金を払わなければいけないのか。法律で決まっているから。それも1つの理由ではありますが、本当の理由はまた別にありますよ。というお話をしていきます。
法律で決まっているから。
会社は税金を払わなければいけない、ということは社長であればみなが知っていることです。事業で利益が出れば、その利益に税率を乗じた金額の税金(法人税)を払わなければいけません。
これを知り、「だったら、税金を払わなくてもいいように、利益を出さなければいい。できるだけ、利益を抑えればいい」と考える社長がいます。
それはそれで、ひとつの考え方です。ただ、それでもなお、「会社は税金を払わなければいけない」とお伝えをするのが、本記事の狙いになります。
ではなぜ、会社は税金を払わなければいけないのか? 法律でそう決まっているから、税金を納めることは義務だから。たしかに、それも理由の1つではありますが、本当の理由はまた別です↓
- 節税効果が出ない
- 会社におカネが残らない
- 決算書の内容がよくならない
これらを見て、「どういうこと?」とおもわれるのであれば、このあとの説明を確認していきましょう。
会社が税金を払わなければならない本当の理由
節税効果が出ない
節税に関して、「個人事業でいくか、法人化するか」という論点があります。法人化することで、節税メリットをえられることがあるからです。ではなぜ、法人化すると節税になるのか?
端的にいえば、「利益の分散」です。個人事業の場合の税金は「所得税」であり、利益が多いほど税率が高くなるので、利益が多いほど税額は大きくなります。
これに対して、会社の場合の税金である「法人税」の税率は、利益の額とは関係なく一定です(厳密には違いますが、所得税に比べれば一定だと言えます)。
そこで、法人化して、じぶんが社長になり、社長への給与を支払うことで、事業から生じる利益を「個人(=給与)」と「会社(=給与支払後の利益)」に分散することができます。
結果として、個人の所得税率が下がり、会社の法人税率は一定なので、法人化する前と比べて税金が安くなる、というのが法人化による節税のしくみです。
ところが、社長に給与を支払ったうえで、会社が赤字だとしたらどうでしょう? 法人税を払うことがないので、法人税率が一定であることのメリットをえられません。
社長の給与については、余分に所得税を払っている… とも言える状態です。つまり、せっかく法人化をしても節税効果が出ない、むしろムダに税金を払っていることになります。
なので、法人化による節税効果を出すためには、会社は黒字でなければならない。言い換えると、会社は税金を払わなければならない、ということになるわけです。
会社におカネが残らない
会社の決算書は、貸借対照表と損益計算書とに分かれます。
このうち損益計算書の最下部に記載されているのが、「税引後利益」です。文字どおり、税金を支払ったあとの利益。これが何をあらわすかといえば、税金を支払ったあと、「手元に残るおカネ」です。
利益が出れば、税金(法人税)が生じるのだとすれば、手元におカネを残すためには税金を払わなければいけないことがわかるでしょう。税引後利益がプラスになるのは、支払う税金があってこそです。
なので、税引前利益がマイナス(赤字)になると、必然的に、税引後利益もマイナスになります。税引後がマイナスだということは、手元におカネは残らない。むしろ、減っているということです。
おカネが減り続ければ、いずれは資金繰りが破たんするので、会社はつぶれてしまいます。という、とてもあたりまえのハナシなのですが、実際には、ないがしろにされれていることが少なくありません。
税金を払いたくないからといって、あえて経費を増やして「節税」だと言う社長。たしかに税金は減りますが、それ以上におカネが減っていることに気づきましょう(経費の支払で)。
というように、会社がおカネを残すためには、税金を払わなければならないわけです。税金を払うといっても、利益以上に税金をとられることはありません。
法人税であれば、利益に対して 30%前後です。まるで、ぜんぶ税金で持っていかれるかのように考えている社長もいますが、残りの 70%は手元に残ることを覚えておきましょう。
決算書の内容がよくならない
良い決算書 =純資産が大きい、という見方があります。純資産とは貸借対照表の項目であり、「資産 ー 負債」で求められる金額です。自己資本、とも呼ばれます。
純資産が大きいということは、負債よりも資産が大きいということであり、それが良い決算書であることは直感的にもわかるでしょう(少なくとも、資産 < 負債 がマズいのわかるはずです)。
その純資産は、「資本金 + 利益剰余金」とあらわすこともできます。実際、決算書の「純資産の部」を見れば、そのような構成になっているので確認しておきましょう。
このうち、利益剰余金とは「過去の税引後利益の累計額」です。つまり、会社をはじめてから、いままでの税引後利益の累計が、利益剰余金の金額になります。
よって、税引後利益がプラスの決算を続けてきた会社は、利益剰余金が大きくなるわけです。利益剰余金が大きいと、純資産も大きくなりますから、「良い決算書」になります。
言い換えると、税金を払い続けてきた会社は純資産が大きくなって、良い決算書になる。そういうことです。では逆に、税金を払わずにきた会社はどうなるのでしょうか?
税金を払わなければ、税引後利益がプラスにならないことは前述しました。だとすれば、税金を払わないと、利益剰余金は増えませんから、純資産は多くならず、良い決算書にもなりません。
というわけで、良い決算書にするためには、税金をはらわなければならないのです。いいや、別に良い決算書でなくてもいい、とおもわれるかもしれませんが。
銀行融資を必要とするのであれば、そうもいかないことを覚えておきましょう。銀行は、良い決算書の会社に融資をしたいと考えます。ゆえに、銀行融資が必要であれば、税金を避けてはとおれない。これを忘れないようにしましょう。
まとめ
会社はなぜ税金を払わなければいけないのか。法律で決まっているから。それも1つの理由ではありますが、本当の理由はまた別にありますよ。というお話をしてきました。
社長が税金を避けることばかり考えていると、会社の持続・成長をさまたげることになりかねません。できるだけ税金を払うことも考えて、バランスをとりましょう。
- 節税効果が出ない
- 会社におカネが残らない
- 決算書の内容がよくならない