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米国の銀行破たんに見る、日本の社長は銀行対応をどうするか?

米国の銀行破たんに見る、日本の社長は銀行対応をどうするか?

2023年3月に起きた、米国の銀行破たん。でも、日本の銀行はだいじょうぶ! と言い切れる保証はどこにもありません。というわけで、日本の社長の銀行対応について考えます。

目次

だいじょうぶ、だいじょうぶ、というのんき。

2023年3月、アメリカでは2つの銀行が相次いで破たんしました。これを見て、「日本の銀行はだいじょうぶか?」という視点もあるはずなのですが。

日本人は意外と「のんき」なところもあるようで、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」というフンイキが大勢を占めているように感じます。

もちろん、いたずらに不安をあおる意図はないものの。可能性としては、日本でも似たようなことが起きる可能性はあるのだから、備えがあったほうがいいだろうとはおもいます。とくに社長は。

なにしろ、社長は自社の資金繰りの責任を負っています。この点で、取引銀行が破たんをしたらどうするのか? もちろん、資金繰りの面で困ったことになるでしょう。

というわけで、このあとのお話は次のとおりです↓

このあとのお話の内容
  • 米国の銀行破たんはなぜ起きたのか?
  • 社長の銀行対応・その1 銀行選び
  • 社長の銀行対応・その2 リスク分散

それではこのあと、順番にお話をしていきます。

米国の銀行破たんはなぜ起きたのか?

まずはおさらい、ということで。アメリカの銀行破たんはなぜ起きたのか? なにが起きたのか? についてをカンタンにまとめてみます。

まずは、3月10日にシリコンバレー銀行が破たんしました。スタートアップ企業への貸し出しが特徴で有名な銀行です。総資産は 2,000億ドル(約 28兆円)。日本で言うと、地方銀行のなかでも3本指に入るくらい大きな規模にあたります。

ではなぜ、そんな銀行が破たんしてしまったのか? まずは、FRB(連邦準備理事会)による「利上げ」です。世界的に、中央銀行による金融緩和政策が続くなか、脱コロナの過程でインフレが起きています。そのインフレを抑えるための利上げです。

すると、企業は借入がしづらくなります。金利負担が大きくなるからです。企業の借入が減るとどうなるか? 銀行の業績が下がるので、その株価も下がります。また、金利が上がると債券価格が下がることから、シリコンバレー銀行が多額の債券売却損を計上したことも、株価の下落につながりました。

こうなると、銀行は市場からの資金調達もしづらくなる… 総じて資金繰りが厳しくなる…

このようすを見て先行きの不安感から、シリコンバレー銀行の預金口座からおカネを引き出す動きが起きはじめます。そのようすを見た人たちがさらに、おカネを引き出すという連鎖。いわゆる「取り付け騒ぎ」により、シリコンバレー銀行は破たんするにいたったわけです。

社長の銀行対応・その1 銀行選び

アメリカの銀行破たんが起きた理由がわかったところで、日本の銀行について考えてみましょう。同じようなことが、絶対に起きない! とまでは言い切れないはずです。

実際、日本の銀行のなかには、企業への貸し出しよりも、有価証券運用に熱心な銀行もあります。今後、利上げが進むなかで債券価格が下落すれば、やはり損失は発生するわけです。

だとすれば、有価証券運用が多い銀行には注意をしたほうがよいでしょう。有価証券運用が多い銀行とは、言い換えると「預貸率(貸出金 ÷ 預金)」が低い銀行ともいえます。

なお、各銀行がどれくらい有価証券運用をしているかは、ディスクロージャー誌を見ればわかります(ネットで閲覧可能)。自社の取引銀行のディスクロージャー誌を並べて見て、比較をしてみるとよいでしょう。

また、不動産業への貸し出しが多い銀行(=不動産投資ローンに積極的な銀行)についても注意が必要だといえます。なぜなら、金利が上がると不動産需要は下がるからです(多くの場合、不動産を買うときにはローンを組むから)。

だとすれば、金利が上がることで、そういった銀行の業績が傾く可能性があります。低金利のときには「強み」であったことが、利上げをきっかけに「弱み」になることもあるわけです。

そのあたりもふまえて、自社の取引銀行の状況を把握し、あらためて銀行選びについて考えてみるのがよいでしょう。銀行もいろいろです。

今後、中長期で見れば、日本の金利も上がります(いまが低金利なのでいつかは)。そのときに、今回のアメリカと同じようなことが起きるかもしれない。その視点を持っておきましょう。

銀行選びについて、くわしくは Kindle本にまとめましたので、ご興味あればどうぞ↓

社長の銀行対応・その2 リスク分散

ところで、もしも、日本の銀行が破たんしたらどうなってしまうのか? ペイオフ(預金保護)が発動されることになります。ただし、その上限は1つの口座につき 1,000万円です。

なので、1つの口座にすべての預金をあずけている、それも 1,000万円を超えて多額の預金をあずけていることにはリスクがあります。

とはいえ、さすがに国も放ってはおかないだろうから、だいじょうぶだろう。国が救済してくれるだろう。などとタカをくくっているかもしれませんが、怖いのは破たんだけではありません。

取引銀行が破たんまではしないにしても、なにかの加減で、預金の引き出しができなくなる・しづらくなる… ということくらいは起きるかもしれないわけで。

そのときに、1つの口座に預金が集中しているのでは困ってしまうでしょう。そう考えると、自社の預金は「あるていど分散」して、複数の銀行にあずけておくのがよさそうです。

怖いことはまだあります。自社が、銀行破たんに備えていたとしても、自社の取引先は備えていないかもしれません。結果、自社の取引先が、銀行破たんに巻き込まれて破たんする… ことがないともいえません。

だとすれば、社長は取引先の破たんにも備えておく必要があります。1つの方法は、倒産防止共済(経営セーフティ共済)です。取引先の倒産による連鎖倒産に備えて、最大 800万円まで、おカネを積み立てることができます。しかも、積み立て額は経費になるので節税にもなります。

業績が良いうちに、資金繰りが順調であるうちに、積み立てておくのがおすすめです。

まとめ

2023年3月に起きた、米国の銀行破たん。でも、日本の銀行はだいじょうぶ! と言い切れる保証はどこにもありません。というわけで、日本の社長の銀行対応について考えてみました。

なにが起きるのかはわからず、起きてからでは遅すぎることもあるでしょう。自社の資金繰りについて、責任を負っている社長だからこそ、いまできる銀行対応を検討しておきましょう。

    このあとのお話の内容
    • 米国の銀行破たんはなぜ起きたのか?
    • 社長の銀行対応・その1 銀行選び
    • 社長の銀行対応・その2 リスク分散
米国の銀行破たんに見る、日本の社長は銀行対応をどうするか?

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