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いちど粉飾決算をしてしまったら銀行対応はどうする?

いちど粉飾決算をしてしまったら銀行対応はどうする?

銀行融資を受けるにあたって、粉飾決算がマズいものであることは知っている。でも、いちど粉飾をしてしまった… そんなときにはどうすればいいのか? という銀行対応についてのお話です。

目次

そんなにマズいものとは知らなんだ。

会社が銀行から融資を受けるにあたって、「粉飾決算がバレる」とマズい。融資が受けられなくなる… ということは多くの社長が理解をしていることでしょう。

ちなみに、ここで言う「粉飾決算」とは「利益の水増し、資産の水増し」であり、決算書を加工することによって、実際よりも業績を良く見せようとする行為です。

粉飾のていど加減にもよりますが、最悪の場合、詐欺で訴えられることもありますし、一括返済を求められることもあります。以後の融資が受けられなくなることもあります。

そんなにマズいものだとはおもなかった。なので、ちょっとばかり粉飾をしてしまった… どうしよう…? というハナシを見聞きすることもあるわけで。そんなときの銀行対応について、このあとお話をしてみます。

具体的には、次のとおりです↓

いちど粉飾決算をしてしまったときの銀行対応
  • 早く解消する
  • 黒字のときに打ち明ける
  • 定期開示・定期報告する

これらの銀行対応について、このあと確認をしていきましょう。

いちど粉飾決算をしてしまったら銀行対応

早く解消する

とにもかくにも、早く解消することが第一です。たとえば、架空売上を計上して粉飾をしてしまった。この粉飾を解消するには、架空売上と同じ額の「本当の利益」を出さなければいけません。

ところが、粉飾決算をするような会社は、もともと業績不振であることが多いので、そうカンタンに利益を出せるものではなかったりもします。むしろ、翌期はさらに赤字が出そうだ。

そこで、さらに粉飾を重ねてしまう… なんてこともあるわけですが。こうなるともう、「本当の利益」では解消できないほど、多額の粉飾が積み上がってしまいます。

だから、そうなる前に、とにかく早く解消することです。銀行員の方々がみな、クチをそろえて言うのが「粉飾するくらいなら、赤字のほうがマシ」であることを覚えておきましょう。

赤字の会社には、融資を検討する「余地」がある。でも、粉飾する会社にはそれがない。粉飾とはウソであり、ダマそうとする悪意であり、そんな会社に銀行が融資できないのは当然です。

なので、できるだけ早く、粉飾を解消しましょう。少なくとも、さらなる粉飾を重ねない。これだけは絶対です。粉飾を重ねればそれだけ、罪は重くなってしまいます。

粉飾にもていど加減があることは前述しました。軽ければ許してもらえることでも、重くなれば許してもらうことはできません。だから、粉飾はもうやめること。そのうえで、できるだけ早く解消しましょう。

黒字のときに打ち明ける

粉飾はできるだけ早く解消しましょう、と言いました。実際に解消したときには、その旨を銀行に打ち明けるのがベストです。この点で、いくつかポイントがあります。

まず、黒字のとき(利益が出ているとき)に打ち明けることです。ここで言う「黒字」とは、「粉飾を解消するための損失を計上する前の利益が黒字」であることをいいます。

ところが、粉飾を解消する前の利益から赤字となると、「粉飾分の赤字は本当に解消できるのか?」と銀行は不安を感じるものです。すると、「いつ解消できるのか?」を追及されることにもなるでしょう。

それを避けるためには、黒字のときを逃さずに粉飾を打ち明けることです。せっかく黒字が出ているのに、粉飾を解消すれば黒字が減ってしまう(あるいは赤字になってしまう)からと、粉飾を隠し続けてしまうケースがあります。

結果、粉飾を解消するタイミング・打ち明けるタイミングを逃してしまうと、粉飾の罪は重くなるばかりです。銀行からは、粉飾を隠し続けている会社だと見られてしまいます。

いやいや、銀行にはまだ粉飾はバレていない。だって、銀行からはなにも言われていないのだから。というのであれば、それは違います。銀行は「わかっていても黙っているだけ」です。

粉飾を指摘することで、社長が逆ギレ。そこで揉めごとになるのもメンドーなので、黙ったまま新規の融資は断り続けるのが、賢明な銀行員の対応だといえます。

なお、粉飾について銀行に打ち明けるときには、「粉飾」という直接的な言葉を使うのは避けましょう。「過去の経理処理をあらためて見直しました」くらいがよいものと考えます。

なぜなら、「粉飾をしてました」と自白すれば、粉飾の「事実が確定」するため、そうなると銀行も明確に罰をくださざるをえなくなるからです。みなまで言わずとも… ということはあります。

定期開示・定期報告する

過去の粉飾を正直に打ち明けたとしても、銀行から疑いを持たれることはあるでしょう。「これからもまた、粉飾をするのではないか?」という疑いです。

そこでおすすめをしたいのが、「定期開示・定期報告」になります。具体的には、毎月の試算表と資金繰り表の開示、四半期ごとの報告です。

そもそも、1年に1度、決算書だけを銀行に渡している状態だと、銀行が粉飾を見抜く材料は決算書しかありません。ところが、毎月の試算表や資金繰り表があれば、材料は増えます。

たとえば、架空売上や架空在庫といった粉飾は、決算書に記載されたいちど限りの数字だけよりも、試算表に記載された毎月の数字があれば、それだけ見抜きやすくなります。売上や在庫について、毎月の推移が見れるので「異常値」に気づきやすくなるからです。

だったら、会社は「あえて材料を提供する」ことで、粉飾などしていないことをアピールする。それが「定期開示」の狙いです。なので、試算表と資金繰り表を毎月、銀行に渡すようにしましょう。

そのうえで、四半期にいちどは「定期報告」もします。毎月の試算表や資金繰り表をもとに、「今期決算の着地見込み(予定利益)」を伝えるのがポイントです。

銀行と現状を共有し、現状から見た着地見込みを提示していれば、銀行は「経緯」を把握できるようになります。決算で赤字になったとしても、経緯がわかっている分だけ、理解を示してくれやすくなるはずです。だとしたら、社長はムリに粉飾する動機もなくなります。

また、定期報告をしていれば、そのなかで銀行から「改善アドバイス」をもらえることもあるでしょう。アドバイスを活かして利益改善できれば、粉飾をする必要もなくなります。

まとめ

銀行融資を受けるにあたって、粉飾決算がマズいものであることは知っている。でも、いちど粉飾をしてしまった… そんなときにはどうすればいいのか? という銀行対応についてのお話ししました。

粉飾のていど加減にもよりますが、いずれにせよ粉飾となれば、けして小さくはないペナルティが待っていることをあらためて理解すること。早く解消すべきであり、そのタイミングや対応にも注意しましょう。

    いちど粉飾決算をしてしまったときの銀行対応
    • 早く解消する
    • 黒字のときに打ち明ける
    • 定期開示・定期報告する
いちど粉飾決算をしてしまったら銀行対応はどうする?

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