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脱コロナの赤字は銀行への伝え方が大事

脱コロナの赤字は銀行への伝え方が大事

ひとくちに「赤字」といってもいろいろです。銀行から見て、融資ができる赤字とできない赤字があります。脱コロナを迎えたいま、赤字であるならば、銀行への伝え方が大事です。

目次

赤字といってもいろいろある。

きょうは、2023年6月13日。世の中は、脱コロナの状況にあります。コロナの影響も減って、業績が回復してきた会社があるいっぽうで、まだまだ厳しい… という会社もあるでしょう。

いまは、物価高騰や人件費高騰の影響もありますから、赤字の会社もけして少なくはありません。では、その「脱コロナの赤字」について。銀行への伝え方に気をつけましょう、というお話をしていきます。

ひとくちに「赤字」といってもいろいろです。銀行から見れば、「融資できる赤字」と「融資できない赤字」とがあります。この点で、本当は「融資できる赤字」にもかかわらず、融資できない赤字と見られるのではかないません。

そういったことがないように、脱コロナの赤字は、銀行への伝え方が大事になります。ポイントは次のとおりです↓

脱コロナの赤字は銀行への伝え方
  • 改善過程の赤字か?
  • 積極的な赤字か?
  • 資金繰りが回る赤字か?

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

脱コロナの赤字は銀行への伝え方

改善過程の赤字か?

いきなりですが、2つの赤字をイメージしてみます。

1つは、赤字の額が増えている過程にあるケース。もう1つは、赤字の額が減っている過程にあるケースです。前者は、状況が悪化に向かっている状態であり、後者は、状況が改善に向かっている状態である、ともいえます。

では、どちらのほうが「期待できるか?」といわれたら。もちろん、後者のほう(赤字の額が減っている過程にあるケース)でしょう。銀行も、そのように考えます。

ところが、決算書を見ているだけでは、どちらのケースかがわからないことはあるものです。その決算期の前半は赤字、後半は盛り返したものの、通期で見れば赤字という場合。決算書だけだと、「結局、赤字だよね」という見方になりかねません。

では、その決算期の「毎月の利益推移」がわかったとしたらどうでしょう? 当然、赤字から盛り返しているようすを、数字として確認することができます。

なので、決算書とあわせて「月次推移実績(会計ソフトで出力できます)」の資料も銀行に提示しつつ、改善過程における赤字であることを説明するのがよいでしょう。

また、決算後の試算表も提示することをおすすめします。銀行に決算書を提示するのは、税務申告がおわったころ(決算日から2ヶ月以上経過)でしょうから、決算後1〜2ヶ月分の試算表はできているはずです(できていなければつくりましょう)。

その試算表で、さらに改善している状況がわかれば、銀行に対して良いアピールになります。

脱コロナを迎え、通期で黒字とまではいかないが、改善過程にあるという会社は少なくありません。決算書だけではわからない「過程」を、銀行にしっかりと伝えていきましょう。

積極的な赤字か?

赤字というと、消極的なイメージをしがちですが。実は、積極的な赤字もあります。たとえば、不採算事業からの撤退にともなう費用が生じたことによる赤字とか。

不採算事業自体は消極的ですが、その事業から撤退すれば、以降の赤字を減らすことができるわけですから、将来的には「プラスの効果」があります。

ですから、撤退にともなう費用といっても、それは今回限りの費用であり、継続的に生じる費用ではありません。決算書(損益計算書)では、「特別損失」として表示しましょう。

すると、営業利益や経常利益は影響を受けませんから、「自社本来の収益力」をより正しくあらわすことができます。

これに対して、販売費及び一般管理費や、営業外費用に表示しないように注意が必要です。自社本来の収益力を過小表示・過小評価することになりかねません。

なお、決算書に表示しておしまいではなく、表示したうえで、銀行への説明もするようにしましょう。今回の赤字は、不採算事業からの撤退によるものであり、将来を見据えた積極的な赤字である、という説明です。

決算書を見ればわかるだろう、というのではいけません。銀行は、特別損失を「営業利益や経常利益を水増しするための小手先のテクニック」と見ている可能性もあります。

なにより、会社の方向性や取り組みは、社長の言葉であってこそ伝わるものです。決算書の数字だけでは、伝達力としては不十分であるものと考えておきましょう。

ちなみに、積極的な赤字の例としては、さきほどの不採算事業からの撤退のほかにも、遊休不動産(使っていない不動産)の売却や、不良在庫の処分などが挙げられます。

資金繰りが回る赤字か?

利益とおカネの動きは違う、というハナシは聞いたことがあるのではないでしょうか。もしも、「ないよ」ということであれば、こちらの記事もご参考にどうぞ↓

それはそれとして。利益とおカネの動きは違うので、黒字であってもおカネはない… ということがあります。逆に、赤字であってもおカネはある! ということもあるわけです。

赤字というと、おカネもないイメージがあるでしょう。事実、そうであることも多々ありますが、なかには、赤字でもおカネはあるんだというケースもあります。

だとすれば、それを銀行に伝えるようにしましょう。でもそれって、決算書を見ればわかるんじゃないの? と、おもわれるかもしれません。たしかに、決算書には現金預金の残高が記載されています。

ですが、赤字だとすれば、その現金預金も減っていくことがイメージされるものです(実際、赤字が続けば、中長期的には現金預金も減っていきます)。銀行も、そういうイメージを持ちます。

銀行が赤字の決算書を見たときに心配するのは、「この先、資金繰りは回るのか?」です。なので、決算書とあわせて、資金繰り表を提示するようにしましょう。

決算日以降、向こう1年ていどの資金繰り予定を表にします。それを提示しながら、いま赤字でも当面の資金繰りは回ること、そのあいだに利益改善をはかることを伝えるのです。

そのうえで、向こう1年の返済額(≒ 前年1年の返済額)くらいの融資を相談できるとよいでしょう。資金繰りに問題がないと判断できれば、銀行も融資を検討することができます。

ただ、決算書だけでは検討をするには、情報が不十分です。赤字でも融資を検討してもらうためには、資金繰り表が必要になるものと考えておきましょう。

まとめ

ひとくちに「赤字」といってもいろいろです。銀行から見て、融資ができる赤字とできない赤字があります。脱コロナを迎えたいま、赤字であるならば、銀行への伝え方が大事です。

本記事で挙げた、伝え方のポイントを押さえておきましょう。

    脱コロナの赤字は銀行への伝え方
    • 改善過程の赤字か?
    • 積極的な赤字か?
    • 資金繰りが回る赤字か?
脱コロナの赤字は銀行への伝え方が大事

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