新規融資を申し込んでも、銀行から断られてしまう。そんなときの銀行対応についてお話をします。いずれも、あらたな融資を受けるのと同じ効果をえられる対応です。
あらたな融資を受けるのと同じ効果
社長から、「新規融資が受けられない…」というご相談をいただくことがあります。つまり、融資を申し込んでも銀行から断られてしまう。いったいどうしたらよいのか? とのご相談です。
そこで、決算書を確認したり、社長に状況を聞いてみたところ、たしかにこれ以上の融資を受けるのは難しそうだという場合にどうするか。
おもな銀行対応は、3つあります。次のとおりです↓
- 短期継続融資に切り替える
- 既存融資の借り換えをする
- リスケジュールを依頼する
これらの銀行対応によって、あらたな融資(いわゆる「真水のおカネ」)をえられるわけではありませんが、「効果」としては、あらたな融資を受けるのと同じだといえます。
どうしても新規融資が受けられないときのために、それぞれの銀行対応について押さえておきましょう。このあと、順番に解説していきます。
新規融資が受けられない…ときの銀行対応3つ
短期継続融資に切り替える
経常運転資金分のおカネを、「証書貸付(毎月分割返済)」で借りている会社は少なくありません。経常運転資金とは「売上債権 + 棚卸資産 ー 仕入債務」にあたる金額であり、会社が事業を続けている限り、ずっと立て替える必要があるおカネです。
では、決算書から経常運転資金を計算してみたところ、1,000万円だったとします。そこで、1,000万円のおカネを、「運転資金」として銀行から借入しました。ここまではOKです。
ところが、証書貸付で借りている場合、毎月返済を続けていくことで、借りた 1,000万円のおカネはどんどんと目減りしていきます。いっぽうで、経常運転資金として必要なおカネは減りません。
結果として、資金繰りが悪くなっている会社はけして少なくないのです。金融庁も、これを問題視していて、その解決策として推しているのが「短期継続融資」です。
短期継続融資とは、経常運転資金について「手形貸付(期限一括返済)」や「当座貸越(限度額までは借入・返済自由)」による融資をいいます。
手形貸付は、期限を迎えた時点で審査のうえ、状況に変化がなければ期限を更新して手形を書き換える。これにより、会社は実質的に「借りっぱなし」が可能です。当座貸越も、借入・返済が自由なので、やはり「借りっぱなし」にすることができます。
なので、いま「証書貸付」で借りている部分を、「短期継続融資」に切り替えてもらうことができれば、その分の毎月返済がなくなります。仮に、毎月 30万円の返済をしているのだとすれば、1年で 360万円の借入をしたのと同じ効果です。
経常運転資金の金額が大きい会社ほど、短期継続融資に切り替える効果は大きくなります。まだ証書貸付で借りているという場合には、銀行に相談をしてみましょう。
ただし、短期継続融資は銀行にとってはリスクがある融資です(実質、貸しっぱなしなので)。そう考えると、ほんとうは自社の業績が良いときに相談をすべきだといえます。
そうはいっても、すでに業績が悪くなってしまった… ということもあるでしょう。それでも、積極的に支援をしてくれるとすれば「メインバンク」です。まずは、メインバンクから相談してみましょう。
既存融資の借り換えをする
では、短期継続融資への切り替えがムリならどうするか? 次に考えたいのが、既存融資の借り換えです。たとえば、いま現在 1,000万円の借入があるとして、残りの返済期間が2年であれば、1年間の返済額は 500万円になります。
では、その 1,000万円を、返済期間5年の融資で借り換えることができたらどうでしょう。1年間の返済額は 200万円になりますから、1年で 300万円(500万円 ー 200万円)を借りたのと同じ効果です。というように、借り換えで返済期間を延ばせれば、資金繰りは改善します。
ただし、そのような借り換えもまた、銀行にとってはリスクになります。完済までの期間が長くなってしまうからです。よって、借り換えの相談をするのも、ほんとうは自社の業績が良いときであることを理解しておきましょう。
なお、借り換えの対象が「保証付き融資」であれば、信用保証協会の「借り換え保証制度」もありますので、銀行はリスクを押さえられて取り組みやすいケースもあります。まずは、メインバンクに相談をしてみるとよいでしょう。
ちなみに、借り換えをするときには、「銀行ごと」の借り換えもありますが、「他行の分」も含めた借り換えもあります。たとえば、A銀行で、B銀行の借入も含めて借り換える、ということです。
これはこれで1つの方法ですが、その場合、借り換えられた銀行(B銀行)は、自行の借入を取られることになりますから、おもしろい状況ではありません。場合によっては、その銀行との関係性が悪くなり、以降は融資が受けられなくなることもあるので気をつけましょう。
リスケジュールを依頼する
短期継続融資もダメ、借り換えもダメとなったらどうするか? リスケジュールを検討する必要があります。ここでいうリスケジュールとは、返済の猶予です。銀行にお願いをして、一定期間、元金の返済をゼロに(あるいは減額)してもらいます。
仮に、毎月 100万円の返済をしていた会社が、リスケジュールによって毎月の返済をゼロにできれば、1年で 1,200万円の借入をしたのと同じ効果です。
ただし、リスケジュールをしているあいだ(もともとの返済に戻すまでのあいだ)は、原則、あらたな融資を受けることができなくなります。というのが、リスケジュールのデメリットだと言われますが、そもそもあらたな融資が受けられないからリスケジュールをしているのであって、本質的なデメリットでもないでしょう。
そうはいっても、リスケジュールは「銀行との約束を違える行為」ですから、気軽に依頼するものでもありません。まずは、短期継続融資や借り換えを検討して、ダメならリスケジュールという順序になります。
実際のところ、会社の資金繰りが厳しい状況で、短期継続融資や借り換えの相談をして、銀行がそれを断る場合には、「リスケジュールで支援することなら可能です」と回答されるケースはあるものです。
メインバンクがリスケジュールで対応すると、他行もリスケジュールに応じざるをえないとの対応になりますので、リスケジュールについても、「まずはメインバンクから」の順序が大切です。
メインバンク以外の銀行にリスケジュールの相談をしても、「メインバンクは何と言っていますか?」と聞かれるので、話が先に進まなくなってしまいます。
まとめ
新規融資を申し込んでも、銀行から断られてしまう。そんなときの銀行対応についてお話をしました。いずれも、あらたな融資を受けるのと同じ効果をえられる対応です。
どうしても新規融資が受けられないときのために、それぞれの銀行対応について押さえておきましょう。
- 短期継続融資に切り替える
- 既存融資の借り換えをする
- リスケジュールを依頼する