銀行は決算書を重視するというハナシに対して、決算書だけを見ているわけじゃないというハナシもあります。ただそれでもなお、銀行は「まず決算書」である理由についてのお話です。
決算書は二の次三の次なのか?
銀行が融資を検討するときには、「決算書(の良し悪し)」を重視するというハナシは、社長であればご存知のことでしょう。
いっぽうで、「銀行は決算書だけを見ているわけじゃない!」というハナシもあって、「どっちやねん!」とツッコみたくなる状況があるかもしれません。
この点について、「それでもなお、まずは決算書が大事」である理由について、本記事ではお話をしてみます。
たしかに、「決算書だけではない」という一面はあるものの、「決算書(の良し悪し)は二の次三の次」と捉えるのであれば、それは勘違いというものです。
そんな勘違いをしないように、「それでもなお、まずは決算書が大事」である理由がこちらになります↓
- 数字がともなわなければ融資できない
- 粉飾決算さえも見なければわからない
- 数字でなければはかれないものがある
これらの理由について、このあと順番に解説をしていきます。
それでもなお、まずは決算書が大事な理由
数字がともなわなければ融資できない
わかりやすいように、すごく極端な例を挙げますが。とてもすばらしい経営理念を掲げている会社があったとしても、さっぱり利益が出ない… いつまでたっても利益が出ない…
となると、銀行も融資はできません。言うまでもなく、「貸したら返ってこないから」です。銀行は「利益 = 返済力」と考えているので、利益が出ない会社に融資ができないのは当然でしょう。
なお、ここで言う「利益」は、過去の利益ばかりでなく、将来の利益も含まれるわけですが、「さっぱり利益が出ない… いつまでたっても利益が出ない…」といった過去があると、やはり将来の利益が危ぶまれることとなります。
だから、決算書で利益を出すことが重要になるのです。もちろん、これは「対銀行」に限った話ではなく、会社にとっての「そもそも論」でもあります。つまり、「会社は利益を出してナンボ」。
そもそも、会社は「営利を目的」とした組織です。営利などと言うと、「品がない」とおもわれるかもしれませんが、けしてそんなことはありません。
利益を出せるから、人を雇うことができるし、仕入れができるし、価値あるものをつくって、お客さまに提供できる、社会に貢献できる、ということになります。利益を出せなければ、その「連鎖」が成立しません。
話が、少々それましたが。要は、会社は利益を出すのが目的であり、その利益は決算書を見なければわからない。だから、まずは決算書が大事なのだ、ということを理解しておきましょう。
ちなみに、利益が出そうになると、納税を嫌って利益を減らそうとする(経費を増やそうとする)社長がいます。銀行の見方は「利益 = 返済力」なのですから、社長みずから、返済力を放棄している、つまり、融資を受けにくくしていることを忘れてはいけません。
粉飾決算さえも見なければわからない
中小企業の決算書には、「多かれ少なかれ何かしらの粉飾(利益の水増し)がある」というのが銀行の見方です。いやいや粉飾などしていない、とおもわれるかもしれませんが。
自覚なき粉飾・悪意なき粉飾はあるもので、「多かれ少なかれ何かしら」は、多くの中小企業にあてはまる、というのはわたしの経験則でもあります。それは、それとして。
中小企業の決算書には粉飾があるのだから、見たって意味がない! というハナシを見聞きすることがあります。銀行だって、粉飾があるとおもって見ているのだから、そんなに決算書を見たってしかたがないだろう、と。
たしかに、中小企業の決算書に粉飾は多く見られますが。それとて、「実際に見てみなければわからない」ことです。決算書を見て、確かめて、はじめて粉飾があるかどうかがわかります。
そのうえで、粉飾があれば信用できない決算書となり、粉飾がなければ信用できる決算書という切り分けが可能です。
その切り分けをさておいて、「どうせ粉飾があるのだから、決算書なんて見てもしかたがない!」というのは、決算書から目をそらしたい社長の言い逃れにすぎない、と言ってよいでしょう。
だから、銀行は「まず決算書」なのです。ひとまずは決算書を見て、あとのことはそれからです。
銀行が決算書だけを見ているわけではないのは事実ですが、それは「まず決算書」を見たうえでのことだと理解しておきましょう。
数字でなければはかれないものがある
再三の繰り返しになりますが、銀行の見方は「利益 = 返済力」です。では、利益をどのようにはかるのか? といえば。数字を使うほかありません。
社長のなかには、具体的な利益の「額」までは把握しておらず、「わりともうかっている」とか、「利益は増えている」とか、「去年よりも良い」とか、曖昧模糊に表現をするケースがあります。
ですが、それを聞いた銀行としては、どう評価してよいかわかりません。「で、利益は結局いくらなの?」ということでしかありません。だから、まず決算書を見るわけです。
この点、「毎月の試算表」を見る、という選択肢もありますが。わりと多くの中小企業では、試算表が毎月はつくられていなかったり、それこそ、不正確(≒ 粉飾)であったりするものなので、銀行としては「まず決算書」を重視する経緯もあります。
いずれにせよ、利益をはかるには数字しかありません。もっとも、はかりたいものは利益ばかりではなく、いろいろです。売上高や原価率、自己資本、預金額など。いずれも数字ではかることで、銀行は評価をして、融資の可否を検討することになります。
だとしたら、会社が融資を受けるにあたって、決算書がいかに重要であるかがわかるはずです。社長は、「あらかじめ決算書のできあがりをイメージする」ようにしましょう。
言うまでもありませんが、決算日を過ぎたら、決算書の内容を変えることはできません。それがわかっていながら、いざ決算書ができあがってから、「こんなはずじゃなかった…」などという後悔はありえません。
なので、決算日よりも前に、あらかじめ、決算書のできあがりをイメージしながら、決算日に向かってそこへ近づけていくことが、銀行融資の受けやすさにもつながります。
まとめ
銀行は決算書を重視するというハナシに対して、決算書だけを見ているわけじゃないというハナシもあります。ただそれでもなお、銀行は「まず決算書」である理由についてお話をしました。
たしかに、「決算書だけではない」という一面はあるものの、「決算書(の良し悪し)は二の次三の次」と捉えるのであれば、それは勘違いであることを理解しておきましょう。
- 数字がともなわなければ融資できない
- 粉飾決算さえも見なければわからない
- 数字でなければはかれないものがある