銀行から融資を受けている会社が、日本政策金融金庫から融資を受けていないのであれば気をつけましょう。そこにはいくつものデメリットがあるからです、というお話をしていきます。
いまは問題に気づいていないだけ。
銀行から融資を受けている会社のなかには、民間金融機関からしか融資を受けていない会社、つまり、公的金融機関である日本政策金融金庫から融資を受けていない会社があります。
わたしの経験則からすれば、10社あったら2〜3社くらいは日本政策金融金庫から融資を受けていない(以前は受けていたが、いまは受けていない会社も含む)、といったところでしょう。
ではなぜ、日本政策金融金庫(以下、日本公庫)から融資を受けないのか? と、社長にたずねると。そもそも日本公庫の存在を知らない、借りかたがわからない、民間金融機関だけで問題ない、などといった回答があります。
いずれにせよ、日本公庫から融資を受けていない会社にはデメリットがあることを覚えておきましょう。民間金融機関だけで問題ないようにおもえても、「いまは問題に気づいていないだけ」ということもあります。
そのデメリットは、おもに3つ。次のとおりです↓
- 借入総額が減る
- 選択肢が減る
- 銀行からの評価が下がる
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
日本政策金融金庫から融資を受けていない会社のデメリット
借入総額が減る
日本公庫から融資を受けていないと、借入総額が減ってしまうことがあります。本当はぜんぶで 4,000万円を借入することができるのに、3,000万円しか借りることができていない… みたいなことです。
どうして、そんなことが起きるのか? それは、1つの銀行が取れるリスクの量は限られているからです。言い換えると、1つの銀行が融資をできる金額は限られている、ということでもあります。
銀行が1つの会社に融資をしすぎれば、もし、その会社がつぶれてしまった場合に、大きな損失をこうむることになります。そのリスクを避けるために、銀行は1つの会社にたくさんの融資をするのではなく、たくさんの会社に少しずつ融資をするわけです。
だとすれば、民間金融機関だけから借入できる金額は限られているのであり、民間金融機関に加えて日本公庫から借入をすることで、借入総額を増やすことができます。
また、日本公庫から借入をすることで、民間金融機関からの借入を増やすことも可能です。手順としては、日本公庫から借りたおカネを、融資を受けたい民間金融機関にあずけます。
おカネ(預金)は銀行にとって、融資をする際の安心材料(担保のようなもの)なので、より大きな額の融資を受けやすくなるのです。結果として、借入総額が増えます。
逆に、日本公庫から融資を受けていなければ、民間金融機関から受けられる融資の額が少なくなる可能性があり、結果として、日本公庫から融資を受けるよりも借入総額が減ることもあるわけです。
会社は、事業の成長とともに、必要になる資金が増える傾向にあります。より多くの借入が必要になるということです。そのときに、スムーズに借入ができるよう、日本公庫からも融資を受けることを検討しましょう。
選択肢が減る
取引をしている銀行(融資を受けている銀行)の数が多いほど、融資の選択肢が増えると言ってよいでしょう。わかりやすい例でいえば、A銀行で融資を断られたけど、B銀行にも相談してみよう、みたいなことです。
この点、民間金融機関と日本公庫(公的金融機関)の「審査」には違いもあることから、民間金融機関で融資を断られたとしても、日本公庫からは融資が受けられた! ということはあります。
だとすれば、業績悪化時などはとくに、会社にとって「ありがたい選択肢」になるはずです。ゆえに、ふだんから日本公庫とは取引を続けておいて(借り続けておいて)、関係性をつくっておくことをおすすめします。
逆に、日本公庫との取引がなければ、そのような選択肢が減るのがデメリットです。
ところで、「日本公庫は審査が甘いのか(民間金融機関に比べて)」とおもわれるかもですが、正しい理解ではありません。甘いのではなく、そもそもの「立ち位置」が違うのです。
民間金融機関が、「商売」として融資をしているいっぽうで、日本公庫には「民間金融機関を補完する」という役割が課せられています。たとえば、創業時や業績悪化時など、民間金融機関がリスクを嫌って融資を躊躇するところを、日本公庫が補おうというわけです。
とはいえ、日本公庫も、だれかれかまわず融資をするのではありません。公的金融機関として、支援をすべき相手かどうか・支援をしてもよい相手かどうかは見ています。
典型的な視点をあげると、「税金を滞納していないかどうか」です。日本公庫の貸出原資は「税金」ですから、その税金を納めていない会社にまで融資をするわけにはいきません。
よって、税金の滞納について、日本公庫は民間金融機関もさらに厳しい目で見ていることは覚えておきましょう。うっかりしていると、せっかくの選択肢を失ってしまうことになります。
銀行からの評価が下がる
日本公庫から融資を受けていることで、民間金融機関からの評価が上がることがあります。たとえば、創業したばかりのころです。事業実績がありませんから、銀行からの評価はえにくいことはわかるでしょう。
いっぽうで、日本公庫が「民間金融機関の補完」として、創業時でも融資をすることは前述しました。事実、日本公庫は積極的に、創業融資を展開しています。そういう意味では、借りやすい融資だと言ってよいでしょう。
結果、「日本公庫から融資を受けている」という実績ができます。これは、「日本公庫の審査をクリアした」ということでもあるので、民間金融機関から見れば評価の対象になるものです。
日本公庫から創業融資を受けていると、次に民間金融機関からの融資が受けやすくなるというのは、創業社長であれば押さえておくべきポイントになります。
また、業績悪化時にも、日本公庫と取引がある会社(日本公庫から融資を受けている会社)は、日本公庫と取引がない会社に比べて、民間金融機関からの融資が受けやすいと言ってよいでしょう。
民間金融機関は、「まだ、日本公庫から融資が受けられるかもしれない」と考えるからです。すでに、いっぱいいっぱいまで融資を受けている場合は別ですが、そこまででなければ、業績悪化時でも日本公庫から融資を受けられる可能性はあります。
繰り返しになりますが、日本公庫には「民間金融機関の補完」という役割があるからです。
日本公庫からの融資が受けられる「余地」があれば、それが1つの評価材料(安心)になって、民間金融機関も融資を検討するということはありえます。
逆に、日本公庫から融資が受けられる余地がない場合には、民間金融機関からの評価が下がるのはデメリットです。
ちなみに、いままで日本公庫から融資を受けたことがない会社が、業績悪化時にいきなり融資を受けようとするのは、いくら日本公庫といえども難易度が上がるため気をつけましょう。
民間金融機関からも「日本公庫からの融資は厳しいかもな」と見られれば、やはり、民間金融機関からの評価が下がることになります。
まとめ
銀行から融資を受けている会社が、日本金庫から融資を受けていないのであれば注意が必要です。問題はないようにおもえても、いまは問題に気づいていないだけかもしれません。
本記事で取り上げた3つのデメリットを、理解しておくようにしましょう。
- 借入総額が減る
- 選択肢が減る
- 銀行からの評価が下がる