財務安全性はおカネがあるかどうかが最重要指標

財務安全性はおカネがあるかどうかが最重要指標

財務安全性というと、さまざまな分析指標が挙げられますが。意外にも銀行は、もっとずっとシンプルに「おカネがあるかどうか」で見ている。その理由について、お話をしていきます。

目次

もっとずっとシンプルな見方がある。

会社が銀行から融資を受けるにあたっては、「財務安全性の高さ」がポイントになります。財務安全性とは平たくいえば、「きちんと支払いができるのかどうか」です。

この点、銀行も重視をしています。言うまでもありませんが、「貸したおカネをきちんと返済してもらえるかどうか」は、銀行にとって最大の関心事だからです。

その「財務安全性」について、ちまたには「安全性分析」なる考え方があり、さまざまな分析指標が挙げられています。おもなところでは、自己資本比率や流動比率、固定長期適合率、インタレスト・カバレッジ・レシオなどなど。

それらの分析指標で、自社の決算書を見るのも悪くはありませんが。意外にも銀行は、もっとずっとシンプルな目で、「財務安全性」をはかろうとしていることは覚えておくとよいでしょう。

では、「シンプルな目」とは具体的にどういうことなのか?

ずばり、「おカネがあるかどうか」です。ここで言う「おカネ」とは、預金残高のことであり、預金がどれだけたくさんあるかを、銀行は「財務安全性」の指標として見ていることになります。

このあとお話するのは、その見方の「理由」です。なぜ、銀行は「おカネがあるかどうか」で財務安全性をはかるのか? はかることができるのか? おもな理由は、次のとおりです↓

財務安全性の重要指標が「おカネがあるかどうか」である理由
  • おカネがあれば返済できるから
  • 推移を見れば安定度もわかるから
  • おカネ以外にはウソがあるかもしれないから

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

財務安全性の重要指標が「おカネがあるかどうか」である理由

おカネがあれば返済できるから

冒頭、財務安全性とは「きちんと支払いができるかどうか」だと言いました。銀行的には、「貸したおカネをきちんと返済してもらえるかどうか」だとも言いました。

この点、一般的には「返済原資=利益」といったハナシがあります。つまり、利益で返済をするのであり、利益がなければ返済はできない、という考え方です。

ところが、それは半分正解で半分不正解でもあります。なぜなら、利益がなくても、おカネさえあれば返済はできるからですね。実際に、赤字続きの会社であってもつぶれないのは、おカネがあるからにほかなりません。

銀行もまた、そのような見方をしています。おカネがある会社(預金残高が多い会社)は安全だ、という見方です。では、どのくらいのおカネがあれば安全と言えるのか?

最低でも、預金残高が平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の1ヶ月分以上、できれば、2ヶ月分以上が目安になります。もちろん、もっと多ければ多いに越したことはありません。

借入を減らしたいあまり、借入を控えたり、繰り上げ返済をすることで、預金残高が少ない会社があります。いくら借入が少なくても、銀行からは「財務安全性に問題がある会社」と見られれていることを理解しておきましょう。

もちろん、いたずらに借入を増やせばいい、というハナシではありません。借入はしなくていいのであれば、しないほうがいい。でも、預金が少なすぎるのであれば、借入をしたほうがいい。借入残高と預金残高はバランスです。

推移を見れば安定度もわかるから

預金残高は、「できれば平均月商の2ヶ月分以上」と前述しました。ただし、それは「一時点」の状況でもあります。いっぽうで、預金残高は日々変化している点にも注意が必要です。

なので、「いま預金残高が多ければいい」ということでもありません。この点、銀行は預金残高の「推移」も見ています。推移を見たうえで、財務安全性をはかっているわけです。

預金残高が多いときはどのくらいになるのか? 少ないときにはどのくらいになるのか? 預金残高の増減にはどのような規則性があるのか? といった見方を銀行はしています。

社長も、同じような見方ができるようにしておきましょう。具体的には、預金残高の毎日の残高を折れ線グラフにしてみると一目瞭然です。

さらに言うと、銀行には「預金平残(よきんへいざん)」という考え方があります。文字どおり、預金の平均残高です。毎日の預金残高を合計して、日数で割れば計算できます。

その預金平残をもとに、「おカネがある会社かどうか」をはかる。これもまた、預金残高の「推移」を織り込んだ見方だと言えるでしょう。

というように、預金残高を見ることで「一時点」の財務安全性がわかるのとは別に、預金残高の推移を見ることで、財務安全性の「安定度」もうかがいしることができます。

おカネ以外にはウソがあるかもしれないから

財務安全性をはかる有名指標として、「流動比率」が挙げられます。その計算式は「流動資産 ÷ 流動負債」です。このうち流動資産のなかには、売掛金や棚卸資産が含まれます。

では、決算書に記載されている売掛金のなかに、不良債権や架空債権が混じっていたらどうでしょう? 棚卸資産のなかに、不良在庫や架空在庫が混じっていたらどうでしょう?

いずれも、実際には「価値がない・存在しないモノ」であり、それらを含んだまま流動比率を計算すれば、過大評価することになってしまいます(実際よりも、流動比率が良くなってしまう)。

不良資産や架空資産を「ウソ」と捉えるのであれば、決算書には、さまざまなウソが潜んでいる可能性を否定できません。少なくとも銀行は、会社がつくる決算書にはウソがあるものと考えています。

銀行は、商売としておカネを貸しているのですから、疑ってかかるのも仕事のうちです。それでもなお、疑わずに信じることができるものがあるとしたら… そう、「おカネ」です。

おカネとは預金残高のことであり、預金残高について会社がウソをつくことはできません。預金残高は、銀行によって明らかにされているものだからです。

もちろん、通帳や残高証明を改ざんするという「暴挙」に出る手段はありますが、そこまでする会社はまれですし、救いようがありません。なので、銀行は預金残高に一定の信頼を置いています。

そのうえで、預金残高にはウソがないものとして、財務安全性をはかる指標として見ているわけです。

実は、社長のあずかり知らぬところで(自覚がなく)、決算書が事実とズレていることはあるもので。すると、決算書の表面的な数字だけでは、財務安全性を誤解する可能性があります。

ゆえに、社長もまた、まずは「預金残高」で財務安全性をはかる、という考え方もあるでしょう。

まとめ

財務安全性というと、さまざまな分析指標が挙げられますが。意外にも銀行は、もっとずっとシンプルに「おカネがあるかどうか」で見ている。その理由について、お話をしてきました。

おカネがあるかどうかが、銀行融資を受けるうえで大事だとわかれば、預金残高を増やす動機にもなるはずです。細かな分析指標の検討も悪くありませんが、まずは預金残高を増やしましょう。

財務安全性の重要指標が「おカネがあるかどうか」である理由
  • おカネがあれば返済できるから
  • 推移を見れば安定度もわかるから
  • おカネ以外にはウソがあるかもしれないから
財務安全性はおカネがあるかどうかが最重要指標

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