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資金繰り表をつくるときに借入について織り込むべきこと【銀行対応】

資金繰り表をつくるときに借入について織り込むべきこと【銀行対応】

銀行から融資を受ける会社は、資金繰り表をつくりましょう。このとき、「借入について織り込むべきこと」を忘れずに! でないと、銀行対応に役立ちませんよ、というお話です。

目次

つくっていても役立てられない。

銀行から融資を受ける会社は、「資金繰り表(資金繰り予定表)」をつくりましょう! というハナシは、1万回くらいしています。

なぜなら、資金繰り表をつくっている中小企業は少なく、つくっていてもそれを銀行対応に役立てている会社はほとんどない、と言ってよいからです(注・モロトメ調べ)。

資金繰り表をつくっている会社は、銀行が融資を検討しやすく、また、資金繰り表を銀行対応に役立てることができれば、融資がより受けやすくなることは間違いありません。

ではなぜ、資金繰り表をつくっていてもなお、銀行対応に役立てることができないのか? それは、資金繰り表をつくるときに「借入について織り込むべきこと」を知らない社長が多いからです。

そこで、本記事ではその点をお話ししていきます。具体的には、次のとおりです↓

資金繰り表をつくるときに借入について織り込むべきこと
  • 借入希望額
  • 返済予定額
  • 次月繰越額

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

資金繰り表をつくるときに借入について織り込むべきこと

借入希望額

そもそも、資金繰り表をつくるときには、少なくとも「向こう1年」を対象につくりましょう。3ヶ月や6ヶ月だと、予測や備えとしては短すぎます。

向こう1年の資金繰りに問題がないことを示せれば、銀行も安心をして融資ができるというものです。そのうえで、「借入希望額」を織り込みましょう。つまり、向こう1年でいくら借りたいのか? を資金繰り表に落とし込みます。

たとえば、「5月に運転資金で 1,000万円、8月に設備資金で 2,000万円」といった具合です。

この点、「まだ融資が決まっていないのだから」と、借入予定については何も記載しない資金繰り表が散見されます。それでは、銀行もいくら借りたいかわかりません。

もちろん、借入希望額を口頭で伝えることもできますが、文書化することに意味があります。文書化は、管理能力の1つです。文書化できる会社・社長を、銀行は評価することを覚えておきましょう。

向こう1年を見通している点で、「計画的な借入だ」という評価にもつながります。いっぽうで、いつも慌てて「すぐに貸して」と融資の相談をしようとする会社・社長は、銀行に好まれません。

それに、資金繰り表として可視化することで、社長自身も資金繰りが明快になるはずです。

また、資金繰り表に借入希望額を織り込むことで、借入希望時期(先ほどの例だと5月や8月)には、銀行のほうから融資提案をしてもらいやすくなる、というメリットもあります。

こちらから「貸して」と言うよりも、銀行から「借りて」と言われるほうが、銀行融資は受けやすくなるものです。資金繰り表を利用して、融資提案を促す環境をつくりましょう。

返済予定額

借入希望額を資金繰り表に織り込みましょう、という話をしました。だとすれば、あわせて「返済予定額」も織り込みましょう。借入額だけ織り込んで、その返済額を織り込まないのでは、資金繰り表が意味のないものになってしまいます。

なお、ここで言う「返済予定額」とは、希望する借入に対する「元金返済」と「利息支払」です。とはいえ、借りられるかもわからないし、融資条件だって決まっていないのに、金額はどうやって決めればよいのか…?

妥当とおもわれる条件で、仮決めすればOKです。運転資金の融資であれば、3〜5年の返済期間で。設備資金の融資であれば、対象となる設備の耐用年数で、というように考えます。

たとえば、1,000万円の運転資金について、返済期間5年であれば、毎月の返済額はおよそ16.7万円です。この金額を、資金繰り表に落とし込みましょう。では、利息はどうするか?

わたしはよく、「金利 3%」として計算をしています。当然、最終的に金利を決めるのは銀行ですが、資金繰り表をつくるときに大事なのは、「おおよその利息が計上されているか」です。

なので、資金繰り表に利息がまったく記載されていないのは問題ですが、実際とは少々異なる金額であっても問題はありません。

そのうえで、この低金利の時代に金利3%で計算をするのは、少ないよりは多いほうが「堅実」でいいよね、と考えてのことです。また、保証付き融資の場合、信用保証料が「年利1%」くらいに相当することがあるので、その分も含めての3%でもあります。

たとえば、1,000万円の融資で金利3%であれば、毎月の利息は「1,000万円 × 3% ÷ 12ヶ月」です。厳密には、返済した分だけ利息は減っていきますが、当初1年の話であれば、同額でもよいでしょう。やはり堅実な数字ですから、問題になることはありません。

次月繰越額

ここまで、資金繰り表には「借入希望額」と「返済予定額」を織り込みましょう、という話をしてきました。さいごにもうひとつ、「次月繰越額」についてお話をします。

ここで言う「次月繰越額」とは、資金繰り表の最下段にある項目のことです。文字どおり、資金(現預金)が次月にいくら繰り越されるのかを記載します。

借入希望額と返済予定額を織り込んだあとで、その次月繰越額を眺めてみましょう。資金繰り表の対象期間が1年であれば、12ヶ月分の次月繰越額を順番に眺めていきます。

このとき、次月繰越額が将来に向かって減っていくようであれば問題です。なぜなら、遅かれ早かれ資金ショートすることをあらわしているからです。なので、そのような状態の資金繰り表を、銀行に提示してはいけません。

そこを理解せずに、次月繰越額が減っていく資金繰り表をつくっている社長がいます。その資金繰り表を銀行に提示するのでは逆効果ですから、気をつけましょう。

ではどうするか? 言うまでもなく、「次月繰越額が増加していくようす」を資金繰り表に織り込むことです。

もし、次月繰越額が減っていくようなら、売上計画を見直したり、コスト削減を検討したりで、事業から生じる収支の改善をはかりましょう。

事業から生じる収支で、借入返済額をまかなえるかどうかがポイントになります。次月繰越額が減っていくとは、言い換えると、返済に見合うだけの利益を出せていないということです。

事業から生じる収支を見直してもなお、次月繰越額が減っていくのであれば、借りること自体に問題があるとも言えます。借りるのではなく、リスケジュールする(返済の減額・猶予)とどうなるかについても、資金繰り表で検討してみましょう。

まとめ

銀行から融資を受ける会社は、資金繰り表をつくりましょう。このとき、「借入について織り込むべきこと」を忘れずに! でないと、銀行対応に役立ちませんよ、というお話をしました。

まずは、資金繰り表をつくること。でも、ただつくるだけではダメであることを理解しておきましょう。銀行融資の受けやすさ、資金繰りの良し悪しに大きく影響するところです。

資金繰り表をつくるときに借入について織り込むべきこと
  • 借入希望額
  • 返済予定額
  • 次月繰越額
資金繰り表をつくるときに借入について織り込むべきこと【銀行対応】

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