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あまたの財務指標をすべてよくするたった1つの方法【銀行融資】

あまたの財務指標をすべてよくするたった1つの方法【銀行融資】

あまたの財務指標をすべてよくする方法はあります。ずばり、利益を増やすことです。そのうえで、利益を増やすにあたっての注意点について、ぜんぶで3つをまとめてみます。

目次

利益を増やせばいい。

会社が銀行融資を受けるにあたって、「財務指標」の良し悪しが問題になることがあります。たとえば、自己資本比率とか、借入金月商倍率とか、債務償還年数とか。多かれ少なかれ、自社の評価につながるところです。

ひとくちに「財務指標」といってもいろいろで、はたしてぜんぶでいくつあるのかわからないほど、あまたの指標があります。

この点で、自社の財務指標の値を改善するためにはどうしたらよいのか? それぞれの財務指標ごとに考えてみる… というのも悪くはありませんが、おそらく途中で参ってしまうことでしょう。

なぜなら、ある財務指標を改善しようと、その財務指標を構成する数字を動かそうとすると、別の財務指標が改悪されてしまう。つまり、「あちらを立てればこちらが立たず」といったことが起きうるからです。

では、すべての財務指標を改善することはできないのか? といえば。けして、そんなことはありません。ずばり、「利益を増やす」こと。すると、中長期的に見れば、すべての財務指標は必ず改善します。

いっぽうで、利益ではなく、その他の数字を動かそうとするのは「小手先」にすぎず、「あちらを立てればこちらが立たず」に陥るものです。また、利益を増やしても、短期的に見ている限りは、改善しない財務指標もあります。

だから、まずは利益を増やすこと。そして、中長期的に見ることです。

そのうえで、利益を増やすにあたっての注意点も、あわせて確認しておくことにしましょう。ぜんぶで3つ、次のとおりです↓

利益を増やすにあたっての注意点
  1. 投資を減らすと、将来の利益が減る
  2. 借金を減らすと、将来の利益が減る
  3. 節税しすぎると、現在の利益が減る

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

利益を増やすにあたっての注意点

投資を減らすと、将来の利益が減る

利益を増やせば、中長期的にはすべての財務指標がよくなる、と前述しました。そこで、「利益を増やす」という、表面的な言葉にとらわれてしまうと見落としがちなことがあります。

それは、「投資」です。投資といっても、不動産投資や株式投資といった「値上がり益」を目的にしたものではありません。ここでいう「投資」は、事業に対する投資であり、将来、事業の利益を増やすための投資を指します。

たとえば、新商品の開発、既存サービスの改善、生産性を高める機械設備の購入、他エリアへの新店舗出店、人材採用・育成などなど。そういった投資は、将来の利益を増やすことに貢献します。

いっぽうで、そういった投資を「怠る」とどうなるか? 当然、将来の利益を増やす機会を失うことになるでしょう。すると、いまは利益が出ていても、将来はどうなるかわかりません。

とくにいまは「変化が速い時代」ですから、いまの利益が、1年後もアテになるとは言えない状況にあります。だからこそ、投資の必要性も高まるというものです。

ところが、投資を増やすと「目先の利益」は減ります。投資にともなう費用(減価償却費を含む)が増えるので、利益が減るわけです。だったら、財務指標も悪くなってしまうじゃないか… と考えて、投資を躊躇する社長がいます。

冒頭の話を思い出しましょう。財務指標を良くするためには、「利益を増やすこと」に加えて、「中長期的な視点を持つこと」です。短期的な視点で、目先の利益ばかりにとらわれないようにしましょう。

銀行もまた、中長期的な視点を持っています。なので、「投資が少ない会社」に対しては、将来の利益の減少を危惧するものです。銀行に対しては、自社がおこなっている投資(と、その効果)をアピールしていくとよいでしょう。

借金を減らすと、将来の利益が減る

借入が増えると、利息の支払いも増える。すると、利益が減るのだから、財務指標が悪くなってしまう。だから、借入はできるだけしない。少しでも借入を減らしていこうとする社長がいます。

この点で、借入を減らすには「おカネ(現金預金)」が必要です。借入を減らすために、現金預金が減ったとしたらどうでしょう? 前述した、投資もできなくなってしまいます。

たしかに、借入が増えると利息の支払いも増えますが、借入で増えたおカネを活かして、投資によって利益を増やすことができれば、利息の支払いを利益でまかなうことはできるはずです。

だとしたら、利息を支払ってでも、投資によって将来の利益を取りにいくのも、理にかなった選択肢だといえます。

また、借入を減らすために、現金預金が減ってしまうと、資金繰りが厳しくなるのも問題です。事実、繰り上げ返済を優先することで、手元の現金預金が少なくなっている会社もあります。

するとどうなるか? 社長は、資金繰りの不安が増える。場合によっては、資金繰りの算段に動かなくてはいけなくなる。そのあいだ、社長は「経営」に集中することができません。

経営とは、「きょう、あすのために手を打つ」ことであり、それができないのであれば、やはり、あす(将来)の利益は減ってしまうことになります。結果、将来の財務指標は悪化します。

借金はないに越したことはありませんが、「必要な借金もある」と考えるようにしましょう。少なくとも、経営に集中できないほど、おカネを減らしてまで借金を減らすのは愚策です。

それに、借金(銀行借入)を減らすということは、銀行から見ると「良いお客さま」ではなくなるということでもあります。融資は銀行にとっての商品です。

借入をしないというのであれば、その商品を買わないということであり、繰り上げ返済をするというのであれば、商品を返品するということであり、銀行からは嫌われる行為であることを理解しておきましょう。

節税しすぎると、現在の利益が減る

利益が増えると、支払う税金(法人税)も増えます。ならば、税引後利益が減ってしまうじゃないか。そこで、「税金を払うくらいなら経費を増やそう」と、考える社長もいるわけで。

たしかに、経費を増やして利益を減らせば、支払う税金は減ります。これを「節税」と呼ぶかどうかはともかく、結論、意味のある節税ではありません。

経費を増やして税金を減らしても、増やした経費以上に税金が減ることはありませんから(税率はおよそ 30%)、節税をしたことで、節税前よりも税引後利益は減ってしまいます。

すると、当然、財務指標は悪くなるのが問題です。これは、意外と多くの社長が間違えているところでもあるので、じゅうぶんに気をつけましょう。

納税をしてはじめて財務指標はよくなるし、納税をしてはじめて銀行からの評価も上がる、ということです。こんなことを言うと叱られそうですが、融資を受けたければ納税しましょう。

もちろん、ムダに税金を払う(税額控除を見逃す、とか)必要はありませんが、あえて利益を減らすような節税はしないことをおすすめします。

なお、経費を増やすのでも、それが「投資」であれば、話は別です。前述したとおり、投資は将来の利益を増やすためのものであり、それで目先の利益が減る分には問題ありません。

なので、経費を増やすときには、「それが節税目的なのか、それとも将来の利益を増やす目的なのか」を自問してみるのがよいでしょう。節税ばかりの社長は、銀行からも嫌われるので注意です。

まとめ

あまたの財務指標をすべてよくする方法はあります。ずばり、利益を増やすことです。そのうえで、利益を増やすにあたっての注意点について、ぜんぶで3つをまとめてみました。

意外と見落としがち、間違えがちなところなので、確認をしておきましょう。

利益を増やすにあたっての注意点
  1. 投資を減らすと、将来の利益が減る
  2. 借金を減らすと、将来の利益が減る
  3. 節税しすぎると、現在の利益が減る
あまたの財務指標をすべてよくするたった1つの方法【銀行融資】

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