2023年夏、報じられたニュースのなかから、今後の銀行融資・銀行対応に起きる変化を考えてみます。銀行融資を必要とする会社であれば、社長が押さえておくべきポイントです。
起こる変化をニュースから推測する。
日々、いろいろなニュースがありますが。きょうは、2023年8月24日。この夏に報じられたニュースのなかから、いくつかをピックアップしたうえで、今後の銀行対応について考えてみることにしましょう。
これから起こりうる「変化」を、ニュースから推測をしてみました。銀行融資を必要とする会社であれば(ほとんどの中小企業がそうであるはず)、社長が押さえておくべきポイントでもあります。
というわけで、とりあげるニュースは次の3つです↓
- 貸し倒れ費用の増加
- 原則、経営者保証不要
- 日銀のYCC修正
それではこのあと、順番に解説をしていきます。
2023年夏のニュースから考える今後の銀行融資・銀行対応
貸し倒れ費用の増加
いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済が本格化するなか、多くの銀行が「貸し倒れに備える費用」を増やしている、とのニュースがありました。結果、最終利益が減益になる銀行が増えている、とも。
つまり、銀行は「ゼロゼロ融資の返済ができなくなる会社が、出てくるだろう」と見ているわけです。だとすれば、今後の融資について、銀行の審査が厳しくなるのは言うまでもないでしょう。
実際のところ、すでに、その傾向は出始めているともいえます。では、どうしたら、今後も銀行から融資をスムーズに受けることができるのか?
端的にいえば、「利益」です。借りたおカネを返済できるだけの、じゅうぶんな利益を出せるかどうかになります。この話は、いまに始まったことではありませんが、より重視されるということです。
なお、ここでいう「利益」は2つあることを理解しておきましょう。1つは、「過去」の利益であり、もう1つは、「将来」の利益です。
まず、過去の利益とは、決算書や試算表などに掲載される利益をいいます。言い換えると、実績の利益であり、確定している利益です。決算書の利益が多いほど、融資が受けやすくなることは、社長であればご存知でしょう。
いっぽうで、将来の利益とは、計画上の利益をいいます。本来、借りたおカネを返すための利益は、過去の利益ではなく、将来の利益です。ところが、将来のことなどわからないから、過去の利益を参考にしていたにすぎません。
とはいえ、ゼロゼロ融資の返済が始まるいま、過去に利益が出ていたとしても、その利益は将来も出し続けることができるのか?は、銀行の強い関心ごとになりました。
結果として、以前よりも銀行は「将来の利益がどうなるか」を知りたい、と考えています。そこで必要になるものが「計画書(経営計画や事業計画)」です。
なので、融資の審査では、計画書に掲載される利益もあわせて評価されることが増えていくでしょう。いちぶの融資では、計画書の作成が前提条件になっているものもあります。
ただし、計画書をつくればいいわけではなく、「実現可能性が高い計画書」でなければいけません。「絵に描いた餅」と見られれば、逆効果です。計画書の作成スキルが重要になります。
原則、経営者保証不要
2023年4月以降、銀行には「経営者保証の説明義務」が課されるようになりました。融資をするにあたり、社長の連帯保証を取る場合には、説明が義務化されたわけです。
これを受けて、「原則、経営者保証を求めない」ことを公表する銀行が相次ぎました。その昔は、経営者保証を取るのがあたりまえだったことをおもうと、大きな変化だといってよいでしょう。
それはいい!これで我が社も、経営者保証がいらなくなるぞ。と、喜んでばかりもいられません。たしかに、経営者保証が減る流れにはありますが、それは、「経営者保証が不要」であることが妥当な会社に限られます。
たとえば業績が悪くて、返済力・返済原資に不安がある会社は、当然、経営者保証が必要です。なので、「経営者保証が不要になる」とは、「そもそも経営者保証を取る必要がないのに取っていた」みたいなことはなくしましょう、というハナシにすぎません。
では、「原則、経営者保証を求めない」ことを公表した銀行から、経営者保証が必要な会社(たとえば業績が悪い会社)が融資を受けようとしたらどうなるか?
銀行としては「メンドー」です。なぜなら、懇切丁寧に説明義務を果たさなければいけないから。融資先の納得を得られたかをきちんと記録に残して、金融庁に報告もしなければいけません。
だったらもう、経営者保証が必要な会社には融資をしないで、経営者保証が要らない会社(業績が良い会社)にだけ融資をすればよくない?という考え方もあるでしょう。
そこまで極端ではないにせよ、多かれ少なかれ、そういった考え方が生じる可能性はあります。だとすれば、社長は「経営者保証が不要な会社」を目指すことが大切だとわかるはずです。
経営者保証が不要な会社とは?具体的には、「経営者保証に関するガイドライン」が参考になります。ガイドラインには、3つの要件が掲げられているので、必ず押さえておきましょう。詳しくは、こちらの記事にまとめました↓
日銀のYCC修正
2023年7月末、日本銀行は金融政策決定会合にて、「YCC(イールドカーブ・コントロール=長短金利操作)の修正」を決めました。
カンタンにいうと、「長期金利(10年国債利回り)の上限引き上げ」です。いままでは、0.5%が上限だったところを、最大 1.0%までは許容しましょう、ということになります。
さらに言い換えると、、指値オペ(日銀が国債を買いまくって、意地でも金利を下げる手段)の水準が、従来の 0.5%から 1.0%にあらためられた、ということでもあります。
これにより今後は、長期金利が 0.5%〜1.0%のあいだでコントロールされることとなります。直近でも、0.7%近くまで上昇しました。これが、銀行融資の金利に無関係でないことはわかるでしょう。
すぐさま、融資金利が上がることはないにせよ、中長期で見れば、上がっていく可能性は高く、銀行もまた「上げていきたい」と考えています。では、社長はどう考えればよいか?
誤解を恐れずにいえば、「融資金利が上がることを容認する」ことです。銀行が金利を上げたいのであれば、極端におかしなほど高い金利でない限りは良しとする、ということになります。
極端におかしな金利でないかを知るには、日本銀行がWEBで毎月公表している「貸出約定平均金利」を参考にしてみましょう。
銀行としては、利息で稼げる融資先は「良いお客さま」ですから、銀行との関係性を深めることになるはずです。ただし、高い金利を容認するのは、プロパー融資に限ります。
逆に、信用保証協会の保証付き融資については、低金利であるべきです。会社が返済できなければ、信用保証協会が肩代わりをするため、銀行にはリスクがないのですから当然でしょう。
プロパー融資の金利が高くなるいっぽうで、銀行は回収不能のリスクを負っています。それでもなお融資を続ける、会社はきちんと返済を続けることで、関係性が深まるのがメリットです。
保証付き融資には、そこまでのメリットは期待できません。むしろ、保証付き融資ばかり受けていても、銀行との関係性は深まらないのです。
というわけで、「少々金利が高くなってもいいから」と、銀行にプロパー融資の依頼をしてみましょう。融資金利を引き上げたい銀行との思惑が合致すれば、Win-Winの関係を築くきっかけになります。
まとめ
2023年夏、報じられたニュースのなかから、今後の銀行融資・銀行対応に起きる変化を考えてみました。銀行融資を必要とする会社であれば、社長が押さえておくべきポイントです。
実際に変化が起きてから、慌てて対応するのではタイヘンでしょう。いまのうちから、起きうる変化を想定して、備えておくことをおすすめします。
- 貸し倒れ費用の増加
- 原則、経営者保証不要
- 日銀のYCC修正