社長にとって、会社の「資金繰り」は気になるものの筆頭です。その資金繰りを悪くする「意外な原因」があります。解決策もふまえて、本記事で確認をしておきましょう。
どういうわけか資金繰りが悪い
社長にとって、会社の「資金繰り」は気になるものの筆頭だと言ってよいでしょう。資金繰りが悪いとなれば、なおさらです。おカネがなくなれば、会社はつぶれるのですから不安でしかありません。
この点、業績が悪くて資金繰りが悪くなるのであれば、「当然」となるわけですが、なかには「意外」な原因もあります。つまり、社長にしてみると「どういうわけか資金繰りが悪い…」と悩んでしまうケースです。
おもなところでは3つ、こちらになります↓
- 経常運転資金を分割返済
- 売上が増えている
- あらたに借入を増やした
これらの原因について、このあと、解決策もふまえて解説をしていきます。社長が理解しているかいないかで、資金繰りの良し悪しに大きな差が出るところです。押さえておきましょう。
会社の資金繰りを悪くする意外な原因
経常運転資金を分割返済
会社の代表的な借入として、「経常運転資金」の借入があります。経常運転資金とは、算式で言うと「売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産(在庫)ー仕入債務(買掛金・支払手形)」です。
経常運転資金とは、会社が事業を続けている限り、立て替える必要がある金額であり、その分のおカネを備えておく必要があります。そこで、銀行から「経常運転資金分の借入(資金使途を運転資金として)」をするのが財務のセオリーです。
では、たとえば、経常運転資金の金額が1,000万円だったとします(前述の算式で計算した結果が)。銀行から、その分の借入をするとして、5年の分割返済だとしたらどうでしょう。
毎月、返済を続けて1年たったら、当初借りた1,000万円は、800万円まで減少することになります(1,000万円ー1,000万円÷5年×1年)。差額の200万円分、資金繰りは悪化するわけです。
当然、2年たてば、資金繰りはさらに悪くなります。会社が必要とする経常運転資金は1,000万円で変わらないのに、借りたおカネは600万円にまで減っているからですね。
なので、減った分(この場合は400万円)の手当てをしないままでいると、「なんだか資金繰りが悪いぞ…」となってしまいます。では、どうするか?
方法は2つです。1つは、もともと借りていた金額(さきほどの例だと1,000万円)まで、借り直すこと(つまり、400万円を借りる)。これを、折り返し融資などと呼びます。
もう1つは、短期継続融資です。手形貸付や当座貸越といった借りかたをすることで、「実質的に借りっぱなし」の状態をつくります。
手形貸付であれば、期日(基本1年以内)が来たら、銀行の審査のうえで更新(手形の書き換え)する。これにより、「利息だけを払って、元金は返済なし」にすることができます。
当座貸越であれば、銀行とあらかじめ極度額を設定し、その額までなら、借りるのも返すのも自由です。経常運転資金分のおカネが不足するのであれば、やはり、元金返済なしにすることができます。
以前に比べると、短期継続融資に対応する銀行も増えているので、経常運転資金の額が大きい会社はとくに、利用を検討してみましょう。
売上が増えている
売上が増えていると、資金繰りが悪くなります。売上が「急増」しているときはとくに、です。と言ったら、驚かれるでしょうか。なかには、意外に感じる社長もいるものです。
が、前述の「経常運転資金」を理解していれば、当然だと気づきます。経常運転資金の算式を思い出してみましょう。「売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産(在庫)ー仕入債務(買掛金・支払手形)」です。
では、売上が増えると、算式の数字はどのように変化をするのか?まず、売上債権が増えます。棚卸資産も増えるでしょう。仕入債務も増えますが、売上債権や棚卸資産ほどではないはずです。
結果として、売上が増える前と、あとで比べると、経常運転資金の額は増加します。経常運転資金が増えると、その分、おカネが少なくなる(入金待ちが増える)ので、資金繰りが悪化するのがポイントです。
売上が増えると、おカネも増えるイメージがあるため、資金繰りは良くなるものと「誤解」をしている社長が少なくありません。たしかに、長期的に見れば、おカネも増えます。
しかし、短期的には、経常運転資金の増加によって、資金繰りが悪くなることを忘れてはいけません。これを大きく見誤ると、「黒字倒産」もありうるところです。
したがって、売上の増加については、できるだけ早く予測をすること。そのうえで、増加するであろう経常運転資金分の借入を、早めに銀行へ相談することが大切になります。
売上増加は、銀行から見て「ポジティブ」な材料ですから、前向きに検討してくれるはずです。ただし、売上増加の「確実性」を示す必要がありますから、受注書や契約書を見せるなどして、銀行に納得してもらえるようにしましょう。
あらたに借入を増やした
あらたに銀行から借入をした。これにより、資金繰りが悪くなることもあります。ふつうに考えれば、おカネを借りたのだから、資金繰りは良くなるはずなのに…おかしいぞ、というケースです。
原因は、借りかたにあります。たとえば、銀行から600万円を、返済期間60ヶ月で借りたとして。毎月の返済額は10万円です(600万円÷60ヶ月)。その後、残高300万円まで返済をしたとします。
ここで、300万円(すでに返済した分)を、同じく返済期間60ヶ月で、あらたに借入したとしたらどうでしょう。あらたに借入した分の、毎月の返済額は5万円です(300万円÷60ヶ月)。
当初の借入の返済額10万円とは別に、毎月の返済額が5万円増えることになります。
これにより、毎月の返済額が増えることから、手元資金の減りが早くなり、おカネを借りたにもかかわらず資金繰りが悪くなったと感じるわけです。
では、どうするか?あらたに借入をする際、300万円を別途借りるのではなく、600万円を借りて、そのうち、もともとの借入の残高を返済する、という借りかたをします。
正味300万円の借入をする、という点は変わりません(あらたに借入をしたあとの残高は、いずれの借りかたであっても600万円=もともと借入していた金額)。
あらたに借入した600万円については、当初と同じく返済期間60ヶ月とします。すると、毎月の返済額は、以前と変わらず10万円のままです。これなら、正味300万円のおカネを借りつつ、毎月の返済額も増えませんから、資金繰りはラクになります。
借りかたについては、銀行に相談することが可能です。にもかかわらず、なにも相談をせずに、銀行から勧められるまま、「別途300万円を借りる」といった借りかたには気をつけましょう。
まとめ
社長にとって、会社の「資金繰り」は気になるものの筆頭です。その資金繰りを悪くする「意外な原因」があります。解決策もふまえて、本記事で確認をしておきましょう。
社長が理解しているかいないかで、資金繰りの良し悪しに大きな差が出るところです。
- 経常運転資金を分割返済
- 売上が増えている
- あらたに借入を増やした