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社長が知るべき財務の算式5選

社長が知るべき財務の算式5選

「未来のおカネ」について、計画・意思決定をするのが財務。その財務を、社長が考えるうえで役立つ算式を紹介です。知っているかいないかで、資金繰りに差が出ます。

目次

経理と財務は違うんです。

社長には、「財務」の視点が欠かせません。財務だなんて、小難しい言葉を使っちゃって。経理じゃダメなんですか?というのであれば、ダメなんです。財務じゃなくちゃダメなんです。

では、経理と財務の違いとは?経理が「過去のおカネ」の記録・整理であるのに対して、財務は「未来のおカネ」の計画・意思決定をいいます。過去か未来かが、大きな違いです。

会社の未来を考えるのは、ほかの誰でもなく、社長の仕事。ほかの社員に任せられるものでもありません。では、その未来に関する「財務」を考えるうえで、役に立つ算式のお話をします。

えー、唐突に算式なのー?と、おもわれるかもしれませんが。算式で求められた結果をきっかけに、社長が「未来のおカネ」について、計画・意思決定ができるようになるものです。

というわけで、社長が知るべき財務の算式を5つほど。こちらになります↓

社長が知るべき財務の算式5選
  • 経常運転資金
  • 簡易キャッシュフロー
  • 債務償還年数
  • 預金月商倍率
  • 債務超過の有無

これらの算式について、このあと順番に解説をしていきます。知らずにいると、必要以上に資金繰りが悪化するところでもありますから、ぜひとも押さえておきましょう。

社長が知るべき財務の算式5選

経常運転資金

経常運転資金=売上債権+棚卸資産ー仕入債務

算式中の「売上債権」とは、売掛金や受取手形のこと。「棚卸資産」とは、在庫のこと。「仕入債務」とは、買掛金や支払手形のことです。で、この算式から何がわかるのか?

会社が最低限、用意しなければいけないおカネがどれほどか、がわかります。

売上債権と棚卸資産は、ともに入金されるのを待っているおカネであり、多ければ多いほど資金繰りは悪くなる。いっぽうで、仕入債務は支払いを待ってもらっているおカネであり、多ければ多いほど資金繰りはラクになる。

ですから、入金を待っているおカネ(売上債権・棚卸資産)と、支払いを待ってもらっているおカネ(仕入債務)の差額が、会社が用意しなければいけないおカネだ、ということになるわけです。

その分のおカネがないと、資金繰りがまわりません。そこで、経常運転資金分のおカネを銀行に借りるのが、財務のセオリーです。

銀行も、基本的には積極的に融資するところですから、しっかりと借りるようにしましょう。逆に、借りられるものを借りずにいると、必要以上に資金繰りが悪くなってしまいます。

銀行からおカネを借りるには、「なんのために・いくら借りたいか」を伝えなければいけません。ここで、経常運転資金の算式が必要になります。自社の数字を算式にあてはめて、金額を計算できたら、「経常運転資金として、〇〇万円を借りたいです」と伝えましょう。

なお、経常運転資金の算式にあてはめる数字について、くわしくはこちらの記事も参考にどうぞ↓

簡易キャッシュフロー

簡易キャッシュフロー=税引後利益+減価償却費

簡易キャッシュフローによって、会社の「返済力」がわかります。つまり、借りたおカネの返済(元金部分)は、「税引後利益+減価償却費」が原資であり、ゆえに返済力を示すわけです。

税引後利益は、言い換えると、「税金を払ったあと手元に残るおカネ」です。だとすれば、赤字の場合にはおカネが残らないのであり、返済原資はありません…ということになってしまいます。

よって、銀行から借入をしたいのであれば、税引後利益は大きいほどよいとわかるでしょう。ところが、税金を嫌って、あえて利益を減らす社長がいるので、気をつけなければいけません。

なお、税引後利益に減価償却費を加算するのは、減価償却費が「支出をともなわない費用」だからです。なんのこっちゃ?ということでしたら、減価償却の勉強もしておきましょう↓

厳しいことを言うようですが、社長が減価償却のことがわからないようでは「勉強不足」です。

それはさておき、銀行も融資審査のときには、簡易キャッシュフローを評価しています。繰り返しになりますが、簡易キャッシュフローは「返済力」をあらわしているからです。

この点、決算書から見た「簡易キャッシュフロー」は、「過去の返済力」でしかありません。ですが、本来は「未来の返済力」で考えるべきところでしょう。

なので、社長は「未来の返済力」である、未来の利益を増やすことができるように計画し、その計画の実行につとめることが大切です。銀行にも、計画書を提示して説明できるとよいでしょう。

債務償還年数

債務償還年数=(借入金残高ー現金預金)÷簡易キャッシュフロー

債務償還年数を計算することで、「いまの利益水準(=簡易キャッシュフロー)だと、あと何年で借入を返済できるか」がわかります。

1つの目安として、債務償還年数の結果が10年以上なら、借りすぎです。その場合には、簡易キャッシュフローを増やすことで、債務償還年数の短縮をはかることになります。

以上をふまえて、社長は、債務償還年数を計算することで、「すでに借りすぎではないか?あとどれくらい借りられそうか?」を考え、借入計画を検討するようにしましょう。

ちなみに、あとどれくらい借りられそうかは、債務償還年数の算式を変形すれば計算できます↓

あとどれくらい借りられそうか=簡易キャッシュフロー×10ー(既存の借入金残高ー現金預金)

なお、借入金残高から現金預金をマイナスしているのは、現金預金があれば、その分の借入金はいつでも返済できることから、借入がないのといっしょだからです。

借入を増やしましょう、と言うと、「借金が増えるからイヤだ」と考える社長がいます。が、借入をしても、借金だけが増えるわけではありません。借金と同額のおカネも増えます。

だから、借入をした瞬間には、実質的な借金が増えることはないのです(それでも借金が残って、おカネが減るのは別の問題です)。「借入金残高ー現金預金」の見方ができるようになりましょう。

預金月商倍率

預金月商倍率=預金残高÷(年間売上高÷12ヶ月)

預金が平均月商の何倍あるか、がわかる算式です。目安として、最低でも2倍以上。できれば、6倍以上をおすすめします。それだけあると、財務の安全性がじゅうぶんに高まるからです。

社長は、現在の預金月商倍率を把握するだけではなく、それをもとに、将来の預金月商倍率の「目標」を定め(3倍とか、6倍とか)、目標に向かって預金を増やす打ち手を講じましょう。

この点、利益を増やして預金を増やすのも1つの方法ですが、借入を増やして預金を増やすのも1つの方法です。借入を利用すれば、利益で増やすよりも短時間で、目標達成に近づけます。

借入が、借金を増やすだけでないことは、前述したとおりです。借入を過度に嫌わず、財務の安全性を高める手段として、考えられるようになりましょう。

ところで、預金月商倍率が高いと、財務の安全性も高まると言いました。おカネがあれば、いざというときにも、時間稼ぎができるのがメリットです。おカネは、自社の防御力を高めます。

いっぽうで、攻撃力をも高めるのがおカネです。おカネがあれば、新規事業をはじめやすくもなるので、将来にわたって利益を確保しやすくもなるでしょう。変化が速い時代ですから、既存事業だけでは、遅かれ早かれ利益は減少に向かいます。

というわけで、社長は、自社の防御力・攻撃力のアップを目指し、預金月商倍率をいかに高めるかを考えていきましょう。

債務超過の有無

資産>負債

債務超過とは、「資産<負債」の状態であり、言うまでもなく危険な状態です。なので、債務超過にならないように、「資産>負債」を目指すことになります。

決算書について、売上や利益(損益計算書)を見ている社長は多いのですが、資産や負債(貸借対照表)まで見ている社長は、意外と少ないものです。

すると、知らないうちに債務超過になっていたり、債務超過にはなっていなくても、債務超過の手前ギリギリ…ということもありえます。なので、社長は必ず、資産と負債も確認しましょう。

この点、銀行はとてもよく確認をしています。資産のなかに、架空資産や不良資産がないか?あれば、その分を減額して資産を見ています。結果、「資産<負債」になることもあるので注意が必要です。

社長もまた、資産の「なかみ」を精査する目を持ちましょう↓

そのうえで、いかに「資産>負債」の状態をキープするかです。なお、「資産>負債」は「純資産>0」と置き換えることもできます(貸借対照表を見ればわかるはず)。

純資産はおもに、資本金と利益剰余金とで構成されています。資本金は、増資や減資がなければ動きませんから、純資産が動くとすれば「利益剰余金の増減」です。

その利益剰余金は、「過去の税引後利益」の累積であることを覚えておきましょう。つまり、税引後利益が大きいほど、利益剰余金も大きくなる。すると、純資産も大きくなりますから、「資産>負債」もキープしやすくなります。

この視点(どれくらい利益剰余金を増やしたいか)もふまえて、社長は利益計画を考えるようにしましょう。

まとめ

「未来のおカネ」について、計画・意思決定をするのが財務。その財務を、社長が考えるうえで役立つ算式を紹介です。知っているかいないかで、資金繰りに差が出ます。

知らずにいると、必要以上に資金繰りが悪化するところでもありますから、ぜひとも押さえておきましょう。

社長が知るべき財務の算式5選
  • 経常運転資金
  • 簡易キャッシュフロー
  • 債務償還年数
  • 預金月商倍率
  • 債務超過の有無
社長が知るべき財務の算式5選

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