最近では、当座貸越の利用が広まっています。その当座貸越の枠を、減額される・取り上げられるのはどんなときなのか。例外ではあるものの、自社に当てはまるところがないかを確認です。
原則、枠はそのまま更新される
最近の銀行融資のトレンドの１つに、「当座貸越」が挙げられます。当座貸越とは、カンタンに言うと「好きなタイミングで借りたり返したりできる融資」です。
とはいえ、どのような会社でも当座貸越が利用できるわけではなく、基本的には、業績が良い会社が前提であり、相手の銀行から「枠（＝借入限度額）」を設定されることになります。
何にせよ、会社にとっては「自由度が高い融資」であり、当座貸越が利用できるよう、取引銀行（原則、メインバンク）に相談するのがおすすめです。
でもなぜ、いま、当座貸越がトレンドなのか？経常運転資金（売上債権＋棚卸資産−仕入債務）について、短期継続融資が求められているからです。詳しい経緯は別記事にまとめました↓
当座貸越は、手形貸付と並び、短期継続融資のいち手段とされています。ゆえに、当座貸越の利用が増えているわけです。ところが、その当座貸越には「懸念点」があります。
契約期間（通常は１年以内）があることから、契約更新時には、枠を減額されるかもしれない。あるいは、枠そのものを取り上げられる（契約更新されない）かもしれない、という懸念点です。
いずれも実現すれば、会社にとっては困ったことになるでしょう。
ところが、実際には、枠が減額されたり、取り上げられるのは「例外」だといえます。なぜなら、会社が困ることを銀行もわかっているからです。なので、原則、枠はそのまま更新されます。
そのうえで、どういった場合が例外にあたるのかを、社長は押さえておきましょう。具体的には次のとおりです↓
- 赤字かつ借りっぱなし
- ぜんぜん借りていない
- 経常運転資金が減少した
それではこのあと、解説をしていきます。
当座貸越の枠を減額される・取り上げられるとき
赤字かつ借りっぱなし
当座貸越が利用できるのは、基本的に業績が良い会社だと前述しました。当座貸越は、銀行から見て「貸しっぱなし」になる可能性があり、それが回収できなくなるのは困ります。
ですから、できるだけ業績が良い会社だけに、利用を限定するのは当然でしょう。この点、当座貸越の利用当初は業績が良くても、その後に業績が悪化することもあります。
ではもし、赤字が連続するようなことがあればどうでしょう？言うまでもなく、銀行は不安になります。当座貸越が貸しっぱなしになっているようであれば、危険を感じます。
そこで、「当座貸越の枠を減額して、いちぶ返済をしてもらう」、あるいは「枠を取り上げて、全部返済してもらう」といったことを、銀行は考えるわけです。
したがって、赤字が続いて、かつ、当座貸越の枠めいっぱいまで借りっぱなしが続いているようだと、枠を減額されたり、取り上げられる可能性が高いことを覚えておきましょう。
ちなみに、最悪の場合は一括返済ですが、あまり現実的ではないことから、分割返済になることも少なくありません。いずれにせよ、会社にとっては返済負担が増えるのが問題です。
ぜんぜん借りていない
業績が良い会社には、銀行は「借りてほしい」と考えます。業績が良ければ、貸したおカネを回収しそびれる可能性が低いからです。そこで、銀行のほうから、当座貸越の提案をしてくることもあります。
結果、当座貸越の枠ができたものの、会社のほうはいっこうに利用しない。つまり、ぜんぜん借りていないとなると、どうなるか。あるていど時間がたったところで、枠を取り上げられることがあります。
利用していないのだから、枠もいりませんよね、というハナシです。とはいえ、当座貸越は自由度が高い融資であり、会社にとっては「有用な資金調達手段」になります。
せっかく枠をもらったのであれば、今後のためにも、枠を維持しようとするのがおすすめです。というわけで、たまには借りたり返したりしてみる、という「利用実績」をつくりましょう。
借りたら利息がかかるじゃないか、とおもわれるかもですが。借りっぱなしにしなければ、それほどの額ではないでしょう。何より、「いざというときにも、〇〇万円までは借りられる」という枠がある安心感のほうが大きいはずです。
経常運転資金が減少した
当座貸越の枠は、経常運転資金の額を元に設定されます。経常運転資金を算式であらわすと、「売上債権＋棚卸資産−仕入債務」です。ご存知のとおり、その金額は常に変化をしています。
では、当座貸越の枠1,000万円が設定された当初、経常運転資金の額が1,000万円だったとして。その後、売上が減少するなどした結果、現状の経常運転資金が600万円になっているとしたらどうでしょう？
銀行は、「1,000万円は貸し過ぎだから、600万円でいいよね」と考えます。なので、差額の400万円については枠を減額しよう、ということにもなるわけです。
銀行は、融資をするときにはいつでも「資金使途」を確認しています。この場合の400万円は、資金使途が不明（あるいは、不適切な資金使途）と見られるため、枠が減額されるのです。
ゆえに、当座貸越を利用している社長はとくに、自社の経常運転資金の推移を確認しておくようにしましょう。推移を見ていれば、枠を減額されるかもしれないことは推測できます。
まとめ
最近では、当座貸越の利用が広まっています。その当座貸越の枠を、減額される・取り上げられるのは、どちらかといえば「例外」であり、原則は、枠はそのまま更新されるものです。
なので、枠を減額される・取り上げられることを、過度に恐れないようにしましょう。そのうえで、どういった場合が例外にあたるのかを、社長は押さえておくこと。自社に当てはまるものがないかを、確認しておくことが大切です。
- 赤字かつ借りっぱなし
- ぜんぜん借りていない
- 経常運転資金が減少した
