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商工中金の民営化で採るべき中小企業の銀行対応

商工中金の民営化で採るべき中小企業の銀行対応

商工中金の民営化が近づいています。この点、中小企業はどう考えて、何をすればよいのか?何もせずにいると、せっかくの「資金調達の選択肢」を見逃してしまうことになりかねません。

目次

資金調達の選択肢が広がる

政府系金融機関の1つ、商工組合中央金庫(以下、商工中金)について。改正商工中金法の成立によって、2年以内の民営化に向かうこととなりました。

政府が所有する商工中金の株式(50%弱)をすべて売却しようというわけです。とはいえ、別のカタチで、政府のおカネは商工中金に残りもするので、本当の意味での民営化には時間がかかるでしょう。

それでも、「全国展開」する規模の商工中金が、民間金融機関に近づくことで、中小企業における「資金調達の選択肢」が広がることは間違いありません。ちまたの民間金融機関にしてみても、商工中金の存在は脅威にもなるはずですし。

でも具体的に、自社はどのような銀行対応をすればよいのか?商工中金の民営化にあたり、どう考えて、何をすればよいのか?と、悩んでしまう社長もいることでしょう。

そこで、本記事では、商工中金の民営化で採るべき中小企業の銀行対応について、このあとお話をしていきます。おもなところでは、次のとおりです↓

商工中金の民営化で採るべき中小企業の銀行対応
  • 取引銀行の1つに加える
  • 当座貸越を利用する
  • 他行へのアピール材料にする

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

商工中金の民営化で採るべき中小企業の銀行対応

取引銀行の1つに加える

まずは、商工中金を自社の「取引銀行(融資を受ける銀行)」に加えることを検討しましょう。そもそも、商工中金の存在を知らない社長もいます。

いっぽうで、中小企業のすべてが商工中金を利用できるわけではありません。商工中金は、比較的規模が大きな金融機関であり、ゆえに、1回あたりの融資額が大きくなる傾向にあります。

ちなみに、規模が大きな金融機関(都市銀行は典型例)ほど、低金利で大きな額の融資で利息を稼ぐ商売になるため、1回あたりの融資額が大きくなるものです。

逆に、小さな額の融資だと、融資コストに見合わないため、融資ができないことになります。

この点、商工中金の融資は、1回あたりの融資額が5,000万円前後になることが多いことから、年間売上高5億円を超えるくらいの会社が、商工中金のターゲットになるものと考えておきましょう。

なので、すべての会社が利用できるわけではありませんが、自社の規模を見ながら、商工中金の存在も忘れずに、取引銀行の1つとして検討することをおすすめします。

自社周辺の金融機関が少なく、取引銀行の選択肢がもともと少ないような会社はとくに、です。商工中金を取引銀行に加えることで、既存取引銀行に競争意識を生じさせることができます。

また、商工中金を「メインバンク」にすることも可能です(同じ政府系金融機関でも、日本政策金融公庫をメインバンクにすることはできません)。商工中金の民営化を、自社の取引銀行をあらためて見直すきっかけにしてみましょう。

当座貸越を利用する

当座貸越、という借り方があります。カンタンに言うと、「限度額の範囲内で、好きなときに借りたり返したりできる融資」です。よって、会社にとっては、使い勝手がよい融資だといえます。

であれば、会社は積極的に当座貸越を利用したいわけですが、銀行から見ればリスクがある融資であるため(貸しっぱなしになる可能性がある)、当座貸越には消極的な銀行も少なくありません。

この点、商工中金は、当座貸越を積極的におこなっている銀行だと言ってよいでしょう。実際に、当座貸越の実績を見てみると、2020年3月決算期には1.32兆円、2023年3月決算期には1.49兆円と、金額自体も大きいうえに、その額も増加しています。

だとしたら、会社は、当座貸越が利用しやすい状況にあるわけです。既存の融資(毎月分割返済)を、当座貸越に置き換えることができれば、毎月の返済負担がなくなり、資金繰りが改善します。

また、既存の融資はそのままに、あらたに当座貸越の枠(限度額)ができれば、いざというときの備えにもなるでしょう。いずれにせよ、当座貸越にはメリットがあります。

ゆえに、まずは、商工中金を取引銀行の1つに加えること。そのうえで、当座貸越の利用について、商工中金に相談をしてみるのがおすすめです。

他行へのアピール材料にする

商工中金は、審査が厳しいことで定評があります。とくに、粉飾決算については厳しく、商工中金からの融資があるということは「粉飾がない会社」としてのアピールにもなるほどです。

つまり、商工中金から融資を受けることが、他の銀行に対するアピール材料になります。結果、他の銀行から融資を受けやすくなる、融資条件の交渉がしやすくなるのはメリットです。

最近でも、とある企業の大きな粉飾決算がニュースにもなりました。いまも昔も、粉飾決算は銀行にとっての関心事です。粉飾については、会社がおもっている以上に、銀行が敏感であることを理解しておきましょう。

なお、商工中金は当座貸越に積極的だと前述しました。当座貸越の対象は、「経常運転資金」です。経常運転資金とは、「売上債権+棚卸資産ー仕入債務」の金額になります。

このうち、売上債権や棚卸資産を使って粉飾する(不良資産や架空資産を混ぜる)のは、粉飾の王道であり、ゆえに、当座貸越の融資にあたっては、粉飾の有無を厳しく見られることになります。

したがって、商工中金から当座貸越を受けられれば、粉飾がないクリーンな会社であることの証左にもなるわけです。というように、商工中金からの融資は、他行からの融資にも活かしていきましょう。

まとめ

商工中金の民営化が近づいています。この点、中小企業はどう考えて、何をすればよいのか?何もせずにいると、せっかくの「資金調達の選択肢」を見逃してしまうことになりかねません。

本記事で取り上げた銀行対応について、検討してみましょう。

商工中金の民営化で採るべき中小企業の銀行対応
  • 取引銀行の1つに加える
  • 当座貸越を利用する
  • 他行へのアピール材料にする
商工中金の民営化で採るべき中小企業の銀行対応

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