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借入金は総額ばかりでなく内訳も見る

借入金は総額ばかりでなく内訳も見る

会社の借入金について、社長は、借入金の有無や、借入金額の大小に注目しがちです。この点で、借入金は「総額」ばかりでなく、「内訳」も見ましょう、というお話をしていきます。

目次

なければないほうがよいもの。

脱コロナを迎え、ちまたでは「過剰債務」が問題になっています。コロナ禍で増えた、銀行からの借入金が多すぎる、返済負担が大きすぎる、ということです。

何にせよ、借入金はなければないほうがよいものであり、社長は「借入金の有無」や「借入金額の大小」に注目しがちだといえます。

この点で、借入金は「総額」ばかりでなく、「内訳」も見ましょう、というのが本記事のテーマです。とはいえ、借入金の「内訳」とは、具体的にどういうことなのか?次のとおりです↓

借入金は総額ばかりでなく内訳も見る
  • 各銀行のシェア
  • 銀行ごとの残高推移
  • 銀行ごとの毎月返済額

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

借入金は総額ばかりでなく内訳も見る

各銀行のシェア

まずは、各銀行の残高が、借入総額に占める割合を確認してみましょう。たとえば、借入総額が5,000万円、そのうちA銀行の残高が2,500万円、B銀行の残高が1,500万円、C銀行の残高が500万円だとしたら…?

各銀行の残高シェアは、A銀行が50%、B銀行が30%、C銀行が10%です。では、何のために各銀行のシェアを確認するのか?メインバンクがどこかを把握するためです。

基本的には、残高シェアがもっとも大きい銀行がメインバンクになります。さきほどの例であれば、A銀行です。したがって、A銀行との関係性を深めていくことが大切になります。

すると、自社の成長を積極的に支援してくれるようになるし、自社のピンチにも親身な対応を期待できる、というのが「メインバンクがある」ことのメリットです。

メインバンクがあきらかになれば、サブバンク以下の銀行も安心して、融資をすることができるため、すべての取引銀行から、スムーズに支援が受けられるようになるのもメリットでしょう。

逆に、メインバンクがなかったり、はっきりしなかったりすると(シェアが似通っている)、前述したようなメリットが得にくくなるのが問題です。

なので、各銀行の残高シェアを見ながら、メインバンクの残高シェアを管理するようにしましょう。知らないうちに、A銀行とB銀行の残高シェアが入れ替わっていた…などということがないように、です。

ちなみに、A銀行の残高(2,500万円)がすべて、信用保証協会の保証付き融資で、B銀行の残高(1,500万円)がすべて、プロパー融資だとしたらどうでしょう?

保証付き融資は、銀行にとってリスクが小さい融資であり、プロパー融資は、銀行にとってリスクが大きい融資ですから、A銀行はB銀行よりもリスクをとっていないことになります。

すると、自社のピンチにも親身な対応は期待できず(自社がつぶれても信用保証協会が肩代わりしてくれるから)、そんなA銀行をメインバンクと呼ぶことはできません。

ですから、残高シェアを見るときには、保証付き融資や担保付き融資などを除いた場合のシェアも確認しておきましょう。残高シェアではA銀行のほうが大きくても、リスクをとっているB銀行のほうがメインバンクだ、という状況もあるわけです。

銀行ごとの残高推移

銀行ごとに、1年前の残高といまの残高とを比較してみましょう。増えているのか、減っているのか、その推移を確認します。これによって、何がわかるのか?

まずは、銀行の「融資姿勢」がわかります。増えていれば、積極的に融資をしようとしている。減っていれば、融資には消極的であり、引き上げようとしているのかもしれません。

銀行は基本的に、融資残高を維持しようとするものです。貸すのが商売であり、貸さなければ返済ばかりとなって融資残高が減ってしまいます。だから、減った分は貸そうとするのが銀行です。

にもかかわらず、融資残高が減っているのであれば、その銀行は自社に対する融資に消極的であり、また、自社のほうも働きかけが弱い、ということでもあります。

もし、銀行が融資に消極的であったとしても、よほど業績が悪いなどの状況でなければ、もともと融資をしていた金額までの融資、いわゆる折り返し融資には応じるものです。

だとすれば、融資残高が減っている銀行に対しては、自社が折り返し融資の相談を怠っているともいえます。なので、銀行ごとの残高推移を確認して、折り返し融資のモレがないかを確認しましょう。

また、残高が一定額で落ち着いている銀行に対しては、「さらに残高を伸ばせないか」という視点も大切です。

融資金額が増えると、支店決済から本店決済になることもあり、難易度も上がりますが、いちど実績ができれば、以降も増えた融資金額がベースになるため、融資残高の水準を引き上げることができます。

自社の業績がよいタイミングなどを見計らって、融資残高の増額にチャレンジしてみましょう。

銀行ごとの毎月返済額

借入金の総額は把握していても、毎月の返済額は把握していない社長がいます。気をつけましょう、社長がイメージしているよりも、毎月の返済額が大きいことはあるものです。

たとえば、ぜんぶで3本の借入があるとします。それぞれの残高は、1,500万円、1,000万円、500万円です(総額は3,000万円)。いずれの借入も、返済期間は5年だとします。そのうえで、それぞれの毎月返済額は、いずれも50万円です(毎月の返済総額は150万円)。

では、この3本の借入を、1本の新規借入で「借り換え」したらどうでしょう。新規借入の金額は3本の借入総額と同じ3,000万円、返済期間も3本の借入と同じ5年です。すると、毎月の返済額は50万円になります。

借り換え前の毎月返済額は150万円でしたから、借り換えによる資金繰り改善効果は大きなものだとわかるでしょう。

というわけで、銀行ごとの借入本数や毎月返済額を確認して、1本にまとめたほうがよいかを検討することも大切です。知らないうちに、借入本数が増えていることもあるので、気をつけなければいけません。

なお、複数の銀行の借入をまとめることも、方法としては可能です。ただし、まとめられた側の銀行(借入がなくなる銀行)にしてみれば、おもしろくはありませんので、注意が必要です。

借り換えによって、銀行との関係性が悪化することはありますので、まずは、同じ銀行内の借入をまとめることから検討するのがよいでしょう。

まとめ

会社の借入金について、社長は、借入金の有無や、借入金額の大小に注目しがちです。この点で、借入金は「総額」ばかりでなく、「内訳」も見ましょう、というお話をしてきました。

借入金の内訳とは、具体的にどういうことなのか?本記事で挙げた3点を押さえておきましょう。

借入金は総額ばかりでなく内訳も見る
  • 各銀行のシェア
  • 銀行ごとの残高推移
  • 銀行ごとの毎月返済額
借入金は総額ばかりでなく内訳も見る

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