資金繰り表はたまにつくるだけ、銀行から言われたらつくるだけ、という会社は少なくありません。が、それをあらためるきっかけになればと、資金繰り表を定期的に更新する価値をまとめてみました。
杓子定規な助言で済ますのも不親切。
突然ではありますが、社長に質問です。資金繰り表を定期的に更新しているでしょうか?
ここでいう資金繰り表とは、向こう1年ていどの「入金・支出・預金残高の推移」をあきらかにするための表をいいます。その様式や、つくり方についてはこちらの動画にゆずるとして↓
そもそも、資金繰り表をつくっていることに加えて、定期的に更新をしているか?もう少し具体的にいうと、1ヶ月ごとにそこから先の向こう1年の資金繰り表に書き換えているのか?
と、たずねると。たまにつくるだけ、銀行から言われたらつくるだけ、という会社が少なくないようです。この点、「資金繰り表は定期的に更新しましょう」と杓子定規な助言で済ますこともできますが。
それではあまりにも不親切だろうともおもいますので、「資金繰り表を定期的に更新する価値」をまとめてみることにしました。おもなところでは、次のとおりです↓
- おカネの流れを理解できる
- イメージとのズレが小さくなる
- 銀行融資が受けやすくなる
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
資金繰り表を定期的に更新する価値
おカネの流れを理解できる
冒頭、資金繰り表とは「入金・支出・預金残高の推移」をあきらかにするための表だといいました。ややもすると、資金繰り表などなくても、そんなことはわかっているとおもわれるかもしれません。
ですが、資金繰り表なくして、おカネの流れ(とくに将来の)を理解するのは難しいものがあります。なぜなら、「利益」と「おカネ」の増減は必ずしも一致はしないからです。
たとえば、借入金の返済。年間利益が100万円、年間返済額が200万円の会社があったとしたら、おカネはどうなるでしょうか。答えは、「利益100万円ー返済200万円=不足100万円」です。
借入金の返済は「経費」ではないので、利益の計算には含まれません。よって、利益のなかから返済をしなければならず、利益が出ていればおカネが増えるというものでもないわけです。
にもかかわらず、「利益の増減=おカネの増減」と捉えている社長がいます。すると当然、資金繰りを見誤ることになります。だから、資金繰り表をつくる必要があるのです。
その資金繰り表を定期的に更新する、つまり、継続的に資金繰り表をつくることで、社長はおカネの流れをより理解できるようになるでしょう。
また、おカネの流れというのは、会社ごとに「クセ」があるものです。たとえば、季節変動。毎年〇月はおカネが増えるいっぽうで、〇がつはおカネが減る、みたいな。
資金繰り表を定期的に更新していると、おカネの流れについて、1年を通じて、どの時期にどのくらいの金額の違いがあるかが見えてきます。これもまた、社長がおカネの流れをより理解できる、といってよいでしょう。
イメージとのズレが小さくなる
繰り返しになりますが、資金繰り表とは「入金・支出・預金残高の推移」をあきらかにするための表であり、推移の対象は「向こう1年ていど」となります。
向こう1年ていどとは、言い換えると「将来」であり、誰もが正確に予測できるものではありません。なので、資金繰り表と実際とを比べれば、当然にズレは生じます。
それでも、資金繰り表を定期的に更新していると、ズレが小さくなることは実感できるはずです。おカネの流れ(のパターン)を見続けることで、資金繰り表づくりの精度は高まります。
これは、前述した「おカネの流れを理解できる」ようになるからでもあり、更新を続けることで経験値が増えるからです。いっぽうで、経験値が少ない社長の資金繰り表は、イメージとのズレが大きくなる傾向があります。
それが理由で、「資金繰り表なんてつくっても意味がない(どうせ、つくったとおりにはならない)」と、つくるのをやめてしまう社長もいるわけですが。尚早にすぎる、というものでしょう。
なにより、会社はおカネがなくなればおしまいです。極端をいえば、いくら黒字であろうとも、おカネが足りなくなれば倒産してしまいます。
資金繰り表が将来を対象にしている以上、完全に予測できないのはあたりまえです。それでも、会社にとって大事なおカネの流れをできる限り予測し、できる限り備えることに意味があります。
完璧を求めるのではなく、最善を尽くす、ということです。資金繰り表を定期的に更新することで、完璧に「近づく」ことはできます。
銀行融資が受けやすくなる
資金繰り表はたまにつくるだけ、銀行から言われたらつくるだけ、という会社が少なくないと前述しました。銀行もまた、その現状をようく知っています。
そのうえで、そういった会社を銀行はどう見ているのか?いうまでもありませんが、「危険な会社」という見方です。おカネを貸したら返ってこないのではないか?との不安が増します。
資金繰り表をたまにつくるだけ、言われたらつくるだけなのであれば、社長が「おカネの流れ」を把握できていないのではないか、と銀行は想像するからです。
そして、その想像はおおむね正しいものであり、資金繰り表がおざなりにされている会社は、往々にして「おカネが足りなくなってからあわてて」銀行に駆け込むことになります。銀行としてはウンザリです。
これに対して、資金繰り表を定期的に更新している会社はどうでしょう?ふだんから、向こう1年ていど先まで、おカネの流れを予測できているため、おカネが足りなくなることにも早く気づきます。
すると、まだ手元の資金に余裕があるうちに融資の依頼ができるので、銀行としてもまだ安心です。よって、融資は受けやすくなります。
また、おカネが足りなくなることに早く気付けば、融資の依頼をするだけではなく、経営改善の手を打つこともできるでしょう。早く手を打つほど、効果は早くあらわれるものであり、あわてて手を打つのでは間に合わないこともありえます。
というように、資金繰り表があると「場当たり的」ではなくなり、「計画的」になれる。銀行は、計画的な会社を好むことを覚えておきましょう。この点、資金繰り表を定期的に更新しているだけでも、銀行に対しては加点要素です。
まとめ
資金繰り表はたまにつくるだけ、銀行から言われたらつくるだけ、という会社は少なくありません。が、それをあらためるきっかけになればと、資金繰り表を定期的に更新する価値をまとめてみました。
その価値とは、いうなれば、社長にとってのメリットです。したがって、資金繰り表を定期的に更新していなければ、そのメリットをみすみす逃していることを理解しましょう。
- おカネの流れを理解できる
- イメージとのズレが小さくなる
- 銀行融資が受けやすくなる