借金をすれば返済をしなければ、その負担感が気分が悪い。だから、銀行借入をするのもイヤだ。というのであれば、ちょっと待った。返さなくていい銀行借入もありますよ、というお話です。
借金をイヤがる理由には誤解がある
わたしのブログ記事をお読みの方であれば、もはや耳タコかもしれませんが。わたしは日ごろから、借金を推奨しています。
なお、ここでいう「借金」とは、会社・事業における銀行借入のことです。いわゆる「高利貸し(サラ金やヤミ金など)」までは含まないことを、申し添えます。それはそれとして。
借金をイヤがる社長も少なくありませんが、イヤがる理由に「誤解がある」と感じるケースも少なくありません。借金をすれば返済をしなければならず、その負担感が気分が悪いのだと。
ですが、「返さなくてもいい借金がある」といったら驚かれるでしょうか。銀行借入のなかには、返さなくてもいいものがあるのです。これで、負担感がやわらぐのであれば…ということで、このあと「返さなくてもいい銀行借入」についてお話をしていきます。
具体的には次のとおりです↓
- 余裕資金の借入
- 経常運転資金の借入
- 経営者保証なしの借入
それでは、順番に確認していきましょう。
返さなくてもいい銀行借入
余裕資金の借入
ここでいう「余裕資金」とは、文字どおり、「資金繰りに余裕をもたせるために借りるおカネ」をいいます。事例で、考えてみることにしましょう。
たとえば、預金残高が300万円の会社があったとして。毎月の入金が1,000万円、支出も1,000万円だとします。この場合、入金と支出のタイミングによっては、資金ショートを起こすのが問題です。
なので、社長は気が気でならず、ときにはじぶんのサイフからおカネを出し入れしながら、会社の資金繰りをやりくりすることになります。つまり、資金繰りが厳しい状態です。
ではここで、銀行から1,000万円を借りることができたらどうでしょう。当然、その分だけ資金繰りはラクになります。入金より支出が先行したとしても、資金ショートは起きません。
資金繰りに余裕ができるので、社長は資金繰りの不安・負担から解放されます。結果として、社長の仕事(経営)により集中できるようになる。銀行借入による、大きなメリットです。
でもさぁ、1,000万円を借りたら返さなければいけないじゃない?やっぱり気分が悪い、とおもわれるのであれば違います。この1,000万円について、返済の負担はありません。
なぜなら、借りた1,000万円をそのまま返済すればいいだけだからです。さきほどの事例に戻ると、銀行から1,000万円を借りるといっても、それを何かに使ってしまうわけではありません。
借りた1,000万円は手元に置いておく、という前提です。借入によって預金残高は1,300万円となり、1,000万円を支出しても、1,000万円の入金があれば、ふたたび預金残高は1,300万円です。
なので、借りた1,000万円は手つかずであり、完済することができます。だとすれば、実質的には借りていないのと同じことであり、返さなくてもいい借金だと考えられるでしょう。
借金に負担を感じる社長は、借りたおカネが「消えてなくなる」ことを前提にしていますが、そうとばかりはいえないということです。むしろ、消えてなくなるほうが例外だと考えましょう。
借入をすれば、同時に同額の預金が増えます。そのおカネで、設備や事業に投資をするのだとしても、それ以上の利益をあげる(おカネが増える)ことが前提です。
この点、投資やムダ使いをしない限り、借りたおカネが消えてなくなることはありません。
経常運転資金の借入
またまた、さきほどの事例について。1,000万円は返さなくてもいい、といいましたが。実際には、毎月分割で返済をしなければいけないはずだ!と、おもわれたかもしれません。
たしかに、多くの銀行借入は毎月分割返済です。ところが、経常運転資金については「期日一括返済」として、毎月の返済をしないこともできます。
ちなみに「経常運転資金」とは、「売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産(在庫)ー仕入債務(買掛金・支払手形)」で計算される金額であり、会社が事業を続ける限り、立て替える必要がある金額です。
なので、経常運転資金分のおカネがないと、会社の資金繰りは厳しくなります。事例の会社が、銀行借入をせずに、預金残高が300万円だけ…などというのは典型例です。
そこで、経常運転資金として1,000万円を「期日一括返済」で借りることができたらどうでしょう。毎月の返済はありませんから、まさに「返済しなくてもいい借金」となります。
いやいや、期日がきたら返済しなければいけないじゃないか。しかも、一括で。と、おもわれるのであれば、それもちょっと違います。
たしかに、期日一括返済ではあるものの、期日が来たときには、銀行があらためて審査をしたうえで、問題がなければ期日を延長(更新)してもうらうことができるのです。
結果として、借りっぱなし。このような経常運転資金の借りかたを「短期継続融資」と呼びます。希望するのであれば、銀行にそうお願いをしてみましょう。
ただし、赤字続きであったり、預金が少なすぎるなど、銀行から見て危ない会社は断られることはあります。また、いちど短期継続融資を受けることができても、その後の業績が悪くなったり、経常運転資金の金額が減少したりすると、期日を延長してもらえないこともあります。
とはいえ、それもまた例外です。例外ばかりに注目をしていると、銀行借入のメリット(=社長が経営に集中できる)を見逃すことになってしまいます。気をつけましょう。
経営者保証なしの借入
銀行借入というと、「経営者保証あり(=社長の連帯保証)」があたりまえだとおもわれている社長もいるでしょう。ところが、いまは状況が変わりつつあります。
原則、経営者保証なしを掲げる銀行もあらわれました。国の後押しもあり、経営者保証なしの融資が拡大しているのです(新規融資における、全体の3割強)。
2023年4月からは、銀行には経営者保証の説明義務が課され、今後はますます、経営者保証なしの融資が浸透していくものとおもわれます。もう、昔とは違うのです。
では、経営者保証なしで銀行借入ができるとどうなるか。もし、会社が返済できなくなったとしても、社長個人(場合によってはその家族)にまで返済を求められずにすむということです。
もちろん、原則、借りたものは返さねばなりませんが、万が一の場合に「返さなくてもいい借金」と考えることはできるでしょう。
万が一にも返さなくてはいけない負担から、借入を嫌う社長もいますが。そこには誤解があるわけですから、考えをあらためていかねばなりません。
とはいえ、必ずしも経営者保証なしで借入できるわけではない点に、注意が必要です。銀行ごとに考え方の違いはありますし、業績や状況に問題がある会社は、さすがに経営者保証なしというわけにはいきません。
そのあたり、くわしくは動画にまとめていますのでご参考にどうぞ↓
まとめ
借金をすれば返済をしなければ、その負担感が気分が悪い。だから、銀行借入をするのもイヤだ。というのであれば、そこには誤解があるかもしれません。
なぜなら、銀行借入のなかには、返さなくてもいいものがあるからです。そこを理解したうえで、銀行借入のメリットを考えるようにしてみましょう。誤解したまま、メリットをみすみす逃して苦しむことがないように。
- 余裕資金の借入
- 経常運転資金の借入
- 経営者保証なしの借入