銀行借入をおすすめすると、「返済できなかったら困るから借りたくない」と回答する社長がいます。でも、なぜ返済できないことが前提なのか?返済できる前提で考えられないのか?そんなお話です。
返済できる前提で考えればいいのに。
わたしは、日々の発信を通じて「銀行借入」をおすすめしています。言うまでもありませんが、「銀行借入には大きなメリットがあるから」です。
もちろん、デメリットもありますが。そのデメリットと比較してなお、メリットのほうが大きい。といった理解にもとづき、社長には銀行借入をおすすめしています。
では、大きなメリットとは何なのか?端的にいえば、社長が抱える「資金繰りの手間や不安」を軽減することができることです。社長の仕事は資金繰りではありません。経営です。
この話を続けると長くなるので、それくらいにして。銀行借入をおすすめすると、よくある返答が「返済できなかったらどうするのか?だから借りたくない」というものです。
気持ちはわかります。でも、なぜ返済できないことを前提にするのでしょうか。返済できる前提で考えれば、前述したメリットを積極的に取りにいくこともできるはずです。
なお、返済できないことを前提にしてしまう、おもな理由がこちらになります↓
- 赤字になったら…
- 高金利になったら…
- 返済が個人まで及んだら…
それではこのあと、順番に確認をしていきましょう。
返済できないことを前提にしてしまう理由
赤字になったら…
おカネを借りたとしても返さなければいけない。では、赤字になったらどうするのか?返せなくなってしまうじゃないか。だから、銀行借入なんてしないほうがいい。したとしても、最低限でいい。
と、考える社長がいます。では、質問です。借入をするから赤字になるのでしょうか。逆に、借入をしないと黒字になるのでしょうか。この質問への回答は、「No」ですよね。
銀行借入をしようがしまいが、赤字になるときはなります。事業は良いときばかりではありません。山あり谷ありです。そして、事業を長く続けていれば、赤字になる確率も高まります。
では、追加の質問です。いつか、自社が赤字になったとして。赤字が原因でおカネが足りなくなったらどうしますか。銀行借入できるとしたら、借りますか借りませんか。
この質問への回答は、多くの社長が「借りる」でしょう。いやいや、赤字になることを心配して借入を避けておきながら、いざ赤字になったら借入したいというのはおかしくないですか?
はい、おかしいです。あきらかに矛盾しています。ではなぜ、赤字になったときには借入すると考えるのか。おわかりのとおり、「借入しなければ、つぶれてしまうから」です。
だったら、赤字になる前の借入をしておきましょう。なぜなら、赤字になってから借入をするのはカンタンではありません。銀行は晴れの日に傘を差し出して、雨の日に取り上げるのですよね?
別にイジワルをしているのではなく、商売でおカネを貸すのですから当然でしょう。銀行は、ボランティアでおカネを貸しているのではありません。危ない会社におカネを貸す道理はないのです。
この点、黒字のときには、銀行も安心をして融資ができます。会社は借りやすい状況です。加えて、融資条件(金利や担保・保証など)の交渉もしやすくなります。
いっぽうで、赤字の場合には、融資条件の交渉などできません。そんなことをしたら、銀行に「じゃあ、なおさら貸せない」といわれておしまいです。
どうせ赤字になったら借入するのであれば、「赤字になったら…」との前提は、おかしなものであることに気づきましょう。もちろん、赤字にならないように努めるのは大前提です。
高金利になったら…
これからは金利が上がるというし、だとすれば、返済負担が大きくなる。それなら銀行借入はしないほうがよいのではないか。と、考える社長がいます。
たしかに、長い目で見れば、金利は上がっていくでしょう。そういう意味では、返済負担も大きくなるでしょう。けれども、そのときには自社の利益率も高まります(高まらなければ問題)。
よって、増えた利益によって、金利上昇分の負担もカバーできる、というのがわたしの考えです。
ところが、金利負担を嫌って借入を避けると、その分、手元の資金は少なくなりますから、せっかくの成長機会に乗り遅れる可能性があります。必要な投資を怠ると、いずれ衰退する…みたいな。
また、金利が上がると読んでいるのなら、なおのこと「いまのうち(金利が上がる前)」に借入しておくほうがよいでしょう。固定金利で借入すれば、いまの低金利を活かせます。
固定金利・変動金利に限らず、世の中の金利が上がると、銀行は融資を渋る(慎重になる)傾向があるので、会社にしてみれば借入しづらくなるのも問題です。
それこそ、いずれ赤字になったらどうするのか?借入しづらいうえに、借入できたとしても金利が高いのでは「二重苦」となってしまいます。このあたりの「しくみ」は理解しておきましょう。
加えて、「金利の下げ方」を押さえておくことです。これまでは、そもそもが低金利なので、社長が金利の下げ方を知らずとも、大きな差にはなりませんでした。
ですが、これから金利が上がれば、そうもいきません。金利の下げ方を知っているかいないかで、同じ借入をするのでも、金利に大きな差が出る可能性が高まります。
なので、「高金利になったら…」と心配をするのであれば、金利の下げ方を学びましょう。過度に金利を恐れて、借入を避けることもなくなるはずです。
学び方の1つとして、よろしければこちらの動画も参考にどうぞ↓
返済が個人まで及んだら…
会社が返済できなければ、その返済が社長個人(じぶん)にまで及ぶ。それはイヤだから借入しない。と、考える社長がいます。
つまり、社長が会社の連帯保証人になっていると(経営者保証)、会社が返済できない場合には、社長個人が返済を求められることになる、ということです。
でもいまは、「経営者保証があたりまえ」の時代ではありません。むしろ、「経営者保証なしがあたりまえ」に向かって、舵が切られました。原則、経営者保証なしを表明している銀行もあります。
現状ではまだ、新規融資のうち「経営者保証なし」は30%ていどですが、今後はさらに増えていくでしょう。5年ほど前には15%ていどだったことを考えれば、すでにだいぶ増えましたし。
2023年4月には、銀行に「経営者保証の説明義務」も課され、国も経営者保証なしの融資を後押ししています。もう「経営者保証があたりまえ」ではないのです。
だとすれば、「返済が個人まで及んだら…」などと心配をしている場合ではありません。どうしたら、経営者保証なしで融資を受けられるかに、アタマを悩ませるべきです。
銀行は、融資先の選別をはじめてもいます。経営者保証なしにするのは、良い会社のみ。経営者保証なしにできないような良くない会社は、そもそも融資をしない。取引自体を減らしていく、といった考え方です。
それはさておき。実際に、経営者保証なしで融資が受けられるようになれば、社長の「借入に対する抵抗」も下がるでしょう。結果、借入をすることで、前述した借入のメリットも享受できるようになります。
とはいえ、どうしたら経営者保証をなしにできるのか?くわしくは、こちらも動画にまとめています。よろしければ参考にどうぞ↓
まとめ
銀行借入をおすすめすると、「返済できなかったら困るから借りたくない」と回答する社長がいます。でも、なぜ返済できないことが前提なのか?返済できる前提で考えられないのか?
というわけで、返済できないことを前提にしてしまう理由について、お話をしてきました。
じぶんの考えに当てはまるものがないか。あれば、あらためて考え直すきっかけにしてみましょう。資金繰りの改善につながるところです。
- 赤字になったら…
- 高金利になったら…
- 返済が個人まで及んだら…