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「回収は早く、支払いは遅く」のウソ

「回収は早く、支払いは遅く」のウソ

会社の資金繰りについて、「回収は早く、支払いは遅く」との金言がありますが。実はウソがある、といったらどうでしょう?ウソだとしたら、代わりにどうすればいいのかをお話しします。

目次

金言も真に受けてはいけない。

会社の資金繰りについて、「回収は早く、支払いは遅く」との金言があります。

つまり、売掛金や受取手形など、売上代金の回収を早くすれば、資金繰りに余裕ができるということであり。買掛金や支払手形など、仕入代金やその他経費の支払いを遅くすれば、やっぱり資金繰りに余裕ができるよね、ということです。

これを杓子定規に解釈すれば、「そのとおり!」ではありますが。現実には「そうでもない」し、むしろ「ヤバいことになるんじゃね?」という危うさに、注意しなければいけません。

もっとも、少し考えればわかることではあるでしょう。回収も支払いも、「相手」があることです。こちらの都合を優先すれば、相手に不利益が生じますから、それでも「回収は早く、支払いは遅く」などと言っていると、取引を避けられることもあるでしょう。

だとすれば、「回収は早く、支払いは遅く」にはウソがあるともいえます。

では、どのあたりが相手の不利益なのか。その結果、取引を避けられると、自社には何が起きるのか。「回収は早く、支払いは遅く」の代わりに、自社が採るべき策とは?このあたりを、具体的にお話ししていくことにします。

回収を早めると何が起きるか

「回収は早く」については、大きく2つにわかれます。「売上代金を早く回収する」ことと、「棚卸資産を減らす」ことです。それぞれ、確認をしていきましょう。

売上代金を早く回収する

売掛金や受取手形の回収を早めれば、その分、手元のおカネは増えるので「短期的」には資金繰りが良くなります。ところが、中長期的に見た場合、必ずしも資金繰りは良くなりません。

なぜなら、回収を早めれば、相手(売上先)は資金繰りが厳しくなるからです。そのため、「もっと支払いを待ってくれるところに取引を変えよう」とおもわれてしまうこともありえます。

実際、取引を変えられれば、自社はお客さまを失うのですから、「回収は早く」が過ぎると「客離れが起きる」という可能性を忘れてはいけません。

実際に、取引を変えられないまでも、相手は「つらい思い」をしたり、回収条件の早期化を伝える自社の担当者もまた「つらい思い」をすることにはなるでしょう。いずれにせよ、痛みがともなうものです。

また、回収を早くする(相手からすると早く支払う)のであれば、「割引をしてくれ」と要求される可能性もあります。商取引においては、「早期支払い」と「割引交渉」は基本セットです。

値下げに応じなければ、「じゃあ、もう取引しません(ほかと取引します)」ということにもなりかねず。結果、自社が値下げに応じれば、自社の利益率が下がります。これは、大問題です。

せっかく回収を早められても、利益率が下がった分だけ入金が減れば、トータルの資金繰りとしては悪影響…ということもあるわけで。元も子もないハナシになってしまいます。

棚卸資産を減らす

棚卸資産とは、商品在庫のことです。おカネが在庫に置き換わっている状態であり、在庫が増えると資金繰りが悪化することは、社長であればご存知のとおりでしょう。

というわけで、「在庫はできるだけ減らすべし!」ともいわれます。在庫を早く売って、売上代金を回収すると考えれば、在庫(棚卸資産)を減らすこともまた、回収を早くするのと同義です。

このとき、在庫を減らすあまり、「品薄になる」としたらどうでしょう。当然、「売り逃し」の可能性が高まります。お客さまが買おうとしても、モノがなければ売ることはできません。

結果として、在庫があれば実現した売上を、逃してしまうことはあるわけです。だとすれば、売上が減った分、資金繰りが悪くなりますから、なんとも本末転倒なハナシだといえます。

また、在庫を減らして起きる問題は、それだけではありません。品揃えが悪くなるのだとすれば、場合によっては、「品揃えの良さ」という強みを失う可能性もあります。

会社にはそれぞれ、各社の強みがあるものであり、「品揃えの良さ」はその1つです。たとえば、1種類の鍋しか売らないお店と、10種類の鍋を売るお店とでは、後者が重宝されることがあります。

で、その重宝される理由が「品揃えの良さ」という強みだとして、在庫を減らすために、10種類が5種類になったら…それなら他にも同じようなお店があるなぁ、とおもわれることもあるでしょう。

結果として、客離れにつながるのだとしたら、その分だけ売上が減ることになって、やっぱり本末転倒なハナシだといえます。

支払いを遅らせると何が起きるか

続いて、「支払いは遅く」で起きる問題を確認していきましょう。前述した、売掛金・受取手形について、逆を考えればわかります。

買掛金や支払手形の支払いを遅らせれば、その分、手元のおカネは増えるので「短期的」には資金繰りが良くなります。ところが、中長期的に見た場合、必ずしも資金繰りは良くなりません。

なぜなら、支払いを遅らせれば、相手(仕入先)は資金繰りが厳しくなるからです。そのため、「だったら、値上げ(割引不可)をさせてほしい」とおもわれてしまうこともありえます。

実際、値上げされれば原価率が上がりますから、「支払いは遅く」が過ぎると「利益が減る」という可能性を忘れてはいけません。

値上げをされないまでも、相手は「つらい思い」をしたり、支払条件の延長を伝える自社の担当者もまた「つらい思い」をすることにはなるでしょう。いずれにせよ、やっぱり痛みがともなうものです。

さらに、値上げされる・されないにかかわらず、支払いを遅らせようとすると、相手から心配されてしまうこともあります。「資金繰りが逼迫しているのでは?会社がつぶれてしまうのでは?」という心配です。

結果として、取引が制限されたり、取引停止になってしまったらどうでしょう。仕入がじゅうぶんにできなくなるのですから、売上も減ってしまう。場合によっては、商売ができなくなってしまう。一大事です。

解決策は銀行融資を活かすこと

というわけで、「回収は早く、支払いは遅く」の金言にはウソ(問題)があることについて、具体的な事例を確認していきました。

回収を早めることもできない、支払いを遅くすることもできないなら、自社はどうすればよいのか。解決策は、銀行融資を活かすことです。

そもそも、「経常運転資金」という考え方があります。算式であらわすと、「売掛金・受取手形+棚卸資産ー買掛金・支払手形」です。会社はこの分のおカネがないと、資金繰りは厳しくなります。

売掛金・受取手形が棚卸資産が増えるほど、経常運転資金が増える(資金繰りが悪くなる)ことは算式からわかるでしょう。だから、「回収は早く」といわれるわけです。

いっぽうで、買掛金・支払手形が減るほど、経常運転資金は増える(資金繰りが悪くなる)ことがわかるでしょう。だから、「支払いは遅く」といわれるのです。

この点、銀行は「経常運転資金分の融資」には積極的であることを理解しておきましょう。会社が商売をするうえで、「経常運転資金」が必要であることはわかっているし、安全性が高い融資だからです。

仮に、売掛金500万円、棚卸資産300万円だとします(話をカンタンにするため、買掛金はゼロ)。このときの経常運転資金は、800万円です。

銀行は、800万円までの融資であれば「比較的安全だ」と考えます。なぜなら、売掛金や棚卸資産は、いずれ現金化されるものであり、だとすれば、そのおカネで回収ができるからです。

ゆえに、経常運転資金分のおカネであれば、銀行は貸しやすいし、会社は借りやすい。だったら、「回収は早く、支払いは遅く」の代わりに、融資を受けるのはどうでしょう。前述してきたような、「回収は早く、支払いは遅く」の問題を解決することができます。

とはいえ、売掛金のなかに不良債権があったり、棚卸資産のなかに不良在庫があったりすると、銀行もさすがに、その分の融資はできませんから注意が必要です。

また、銀行融資を受けるとはいっても、できるだけの「回収は早く、支払いは遅く」を検討したうえでという前提ではあります。なので、銀行融資を受けるいっぽうで、いたずらに回収が遅くなったり、いたずらに支払いが早くなるようではいけません。

まとめ

会社の資金繰りについて、「回収は早く、支払いは遅く」との金言がありますが。あまり真に受けるようだと、相手に取引を避けられ、むしろ、利益悪化や資金繰り悪化を招くので注意です。

では、どうすればよいのか。この点で、銀行融資を活かすことを検討していきましょう。相手とも良い関係・良い取引を続けながら、資金繰り改善をはかることができます。

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