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銀行は他行の融資残高が減るのを嫌う

銀行は他行の融資残高が減るのを嫌う

銀行は、他行の融資残高が減るのを嫌います。なので、たとえ決算書の内容が悪くはなかったとしても、他行の影響により、融資が受けられなくなることはあるものです。対応策を押さえておきましょう。

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たとえ決算書が悪くなくても。

会社の銀行融資について。銀行は「自行の融資を増やしたい」と考えているのではないか?と、おもわれるかもしれません。つまり、他行よりもいっぱい貸したい、ということです。

ところが、必ずしもそうではないことを、社長は理解しておきましょう。では、銀行が何を考えるのか?それは、「他行の融資残高が減るのなら、ウチも貸したくない」ということです。

ご存知のとおり、融資の審査では、決算書(業績)の良し悪しを見られます。このとき、たとえ決算書の内容が悪くはなかったとしても、「他行の融資残高が減っている」ことが原因で、融資が受けられなくなることはあるのです。

というわけで、そのあたりをこのあと深掘りしていきます。社長は「銀行の考え方」と「具体的な対応策」とを押さえておきましょう。

特定の銀行だけ新規融資がない

A銀行、B銀行、C銀行の3行から融資を受けているとします。

このうち、A銀行とC銀行からは定期的に融資を受けることができているいっぽうで、B銀行からは融資を受けられずにいるとどうなるか?つまり、B銀行だけが融資残高を減らしている状況です。

すると、A銀行やC銀行からは「なぜ、B銀行からも融資を受けないのか?」と聞かれるようになります。それでもB銀行から融資を受けられずにいると、A銀行やC銀行は「B銀行から融資が受けられないのであれば、ウチも融資できない」と言い出すことになるでしょう。

銀行は、他行の動きを気にするものだからです。まず、B銀行が融資をしないのは「B銀行が何か重要な情報をつかんでいるのではないか(たとえば、粉飾決算に気づいているとか)」とA銀行やC銀行は考えます。

また、B銀行が融資を減らしているのに、A銀行やC銀行が融資をするのだとすれば、A銀行やC銀行は「B銀行に返済するためのおカネ」を貸していることにもなるわけです。A銀行やC銀行からすれば、好ましいことではありません。

なので、特定の銀行だけ新規融資がない(融資残高が減っていくだけ)という状態には、気をつける必要があります。特定の銀行が、メインバンクやサブバンクである場合など、会社にとって重要な銀行である場合にはとくに、です。

この点、社長は「すべての取引銀行から定期的に融資を受ける」のが、基本的な考え方になります。とはいえ、社長が「定期的に融資を受けているか」を把握していないことはあるものです。

借入残高推移表をつくっておく

そこで、「借入残高推移表をつくりましょう」というのが具体的な対応策になります。

ここでいう「借入残高推移表」とは、自社が融資を受けている銀行ごとに、毎月の借入残高の推移を3〜5年分ていどまとめた表です。これをつくっていない社長は、多いのではないでしょうか。

いっぽうで、銀行は「必ず」銀行ごとの残高推移を把握しています。だから、特定の銀行だけ新規融資がないことに気づくし、気にもするわけです。社長も同じように、気づけるようにしましょう。

そのためには、借入残高推移表を作成し、定期的に確認をすること。そのうえで、すべての取引銀行から、定期的に融資を受けるように段取りすることが大切になります。

なお、一般的に、いちど借りたことがある金額までは、比較的融資が受けやすいものです。たとえば、過去に残高3,000万円まで借りたことがあれば、その後、返済が進んで1,000万円減ったら、減った分の1,000万円は借りやすい、ということになります。

借りやすいのは、銀行に「融資実績・返済実績」があるからです。それらの実績は「信用」になります。いちどそこまで貸して、返済もしてくれているのだから大丈夫だろう、ということです。

にもかかわらず、残高が減った分の融資が受けられないのであれば、自社の業績が相当に悪いか、悪くなる見込みが高いか、あるいは粉飾決算などの問題があるかです。

なので、借りやすいとはいっても、「業績が良いうち」に定期的に融資を受けるようにしましょう。タイミングを逸して、業績が悪くなってからでは、融資を断られることになりかねません。

結果、特定の銀行だけから融資が受けられず、それが他行にまで影響してしまう…そうはならないように、借入残高推移表を見ながら、タイミングをはかることが重要です。

取引銀行を変更する場合に注意

関連して、社長が注意すべきことはまだあります。それは、取引銀行を変更しようとしているケースです。たとえば、C銀行からはこの先、融資を受けるのをやめようとしている、みたいな。

この場合にも、「特定の銀行だけ融資残高が減る」ことになります。銀行(C銀行以外)にしてみれば、C銀行の融資残高が減る理由はわかりません。

つまり、自社が借りたいのに断られているのか、そもそも借りるつもりがないのかが、銀行にはわからないわけです。そのため、「借りたいのに断られている」と見られることになります。

そうなれば、他行からの融資が受けにくくなるのは前述したとおりです。では、どうするか?

いうまでもありませんが、「取引銀行を変更する」旨を、銀行(C銀行以外)に説明しておくことです。そもそも借りるつもりがないことを、伝えておくということです。

これにより、自社に問題があって融資を断られているのではないとの理解をえられます。とはいえ、C銀行の代わりになる銀行がなければ、既存の取引銀行が「C銀行に返済するためのおカネ」を貸すのはちょっと…と躊躇することはあるでしょう。

ですから、やはり「業績が良いうち」に、取引銀行を変更する旨を伝えて、既存の取引銀行からさらに融資を受けられるように相談をしていくか、新規取引銀行を開拓することが重要です。

これが、業績が悪くなってからとなると、既存の取引銀行からはイヤがられますし、新規取引銀行の開拓も困難になります。銀行対応は、何ごとも「業績が良いうちに」がセオリーです。

まとめ

銀行は、他行の融資残高が減るのを嫌います。なので、たとえ決算書の内容が悪くはなかったとしても、他行の影響により、融資が受けられなくなることはあるものです。

社長は、そのあたりの「銀行の考え方」と「具体的な対応策」とを押さえておきましょう。

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