社長であれば、借入シェアを見ているでしょうか。まずは、それを計算して把握するところからです。そのうえで、社長が借入シェアを見て確認すべきことについて、ぜんぶで3つお話をしていきます。
まずは計算して把握する。
銀行から融資を受けている社長であれば、「借入シェア」を見ているでしょうか。ちなみに、ここでいう「借入シェア」とは、借入総額に占める各銀行ごとの借入残高の割合です。
たとえば、自社の借入総額が5,000万円だとして。そのうち、A銀行の借入残高が3,000万円だとしたら、A銀行の借入シェアは「3,000万円÷5,000万円」で、60%となります。
これを他の取引銀行についても計算をして、社長は把握しているのか?ということです。もし、していないというのであれば、すぐにはじめましょう。まずは計算をして、把握するところからです。
そのうえで、社長が借入シェアを見て確認すべきことがあります。おもなところでは3つ、次のとおりです。
- 預金とのバランスはどうか
- メインバンクはあきらかか
- 順位の入れ替わりはないか
それではこのあと、順番に解説をしていきます。
社長が借入シェアを見て確認すべき3つのこと
預金とのバランスはどうか
たとえば、A銀行の借入シェアが60%である場合、A銀行はそれに見合った預金をあずけてほしいと考えるものです。預金があれば、いざというときに借入と相殺できます。
自社の預金総額が3,000万円だとしたら、そのうちの60%、つまり1,800万円は自行にあずけてほしい。A銀行はそう考えているということです。
では、借入シェア40%のB銀行があったとして、自社はB銀行に1,800万円の預金をあずけているとしたらどうでしょう。借入シェア60%のA銀行は「不公平だ」と考える、ということです。
したがって、借入シェアに応じて、預金をあずけることが「基本」になります。ただし、借入もいろいろです。銀行が完全にリスクをとって貸しているものもあれば、リスクをとらずに貸しているものもあります。
前者はプロパー融資であり、後者は信用保証協会の保証付き融資です。では、A銀行の借入がすべて保証付き融資(銀行側の責任共有ゼロの場合)だったとしたらどうでしょう。
A銀行は融資をするにあたって、リスクをとっていないことになります。だとすれば、預金をあずける必要はない、というものです。
いっぽうで、B銀行の融資がすべてプロパー融資ならどうでしょう。B銀行は完全にリスクをとって融資をしているということです。だとすれば、B銀行にすべての預金をあずけるのが筋だとわかるでしょう。
というように、借入シェアは「表面的な残高」だけで見るのではなく、銀行のリスクを考慮した「実質的な残高」で見ることが大切になります。
自社の借入について、各銀行からの借入が「プロパー融資なのか、保証付き融資なのか」を把握していない社長もいます。それでは、借入シェアの把握が不十分になることを理解しましょう。
メインバンクはあきらかか
たとえば、自社が3つの銀行から借入をしているとして、それぞれの銀行の借入シェアが、すべて33%だとしたらどうでしょう。つまり、どの銀行からも同じだけ借りているということです。
すると、メインバンクがどの銀行かがわからなくなってしまいます。自社の業績が良いときには、それでもなんとかなるものの、業績が悪くなってきたときには問題が起きるものです。
いっぱんに、業績が悪くなったときに、その会社を支えるのはメインバンクの役割となります。メインバンクが支える(融資をする)ことで、サブバンク以下の銀行も支援を検討することができるのです。
ところが、メインバンクがないとなると、どの銀行も「様子見」となります。自行だけが支援をした結果、返済をしてもらえない…といった「ババを引く」のはイヤだからです。
では、メインバンクとはどのような銀行なのか?端的にいえば、借入シェアがいちばん高い銀行です。銀行からしても「わかりやすい指標」であり、銀行は借入シェアをよく見ていることを覚えておきましょう。
その借入シェアが横並びであったり、あまり差がついていないとなると、「メインバンクがどこだかわからない」あるいは「メインバンクがない」となるわけです。
よって、社長は借入シェアを見ながら、各銀行の借入シェアに「メリハリをつける」ことを考えましょう。目安として、メインバンクの借入シェアは50%前後がおすすめです。
なお、このときの借入シェアについても、「実質的な残高」でも確認するのがよいでしょう。いくら借入シェアが高くても、保証付き融資だけなのであれば、その銀行はリスクをとっておらず、業績が悪くなったときには、支えるどころか逃げ出す可能性があります。
順位の入れ替わりはないか
銀行は借入シェアをよく見ている、といいました。この点で、順位の入れ替わりにも注目をしています。いちばんは、メインバンクの入れ替わりです。
いままでは、A銀行が借入シェアがトップでメインバンクだったところ、あらたに融資を増やしたB銀行が借入シェアでトップになった、みたいな。
こうなると、A銀行としては「おもしろくない」ということになるでしょう。これをきっかけに関係性が悪化することで、以後の融資が受けにくくなることはありえます。
それなら、B銀行をメインバンクにすればいい、とおもわれるかもしれませんが。B銀行のほうは、「別にメインバンクにまでなるつもりはない」と考えていることもありえます。
よって、順位が入れ替わることがないか(とくに、メインバンクの入れ替わり)、社長は借入シェアを見ながら注意を払うようにしましょう。
B銀行からの融資セールスにうっかり乗っかってしまい、気がついたら借入シェアが逆転していた…というケースは避けたいものです。
なお、メインバンクが入れ替わることで、その他の銀行からの融資に影響が出ることもあります。たとえば、メインバンクがA銀行からB銀行に入れ替わった場合、ほかに取引銀行があれば、それらの銀行は「メインバンク(A銀行)に見限られたのかな?」とも考えるからです。
たとえ、自社が意図的にメインバンクを入替えたのであっても、銀行からはわからないものでもあります。見限られたのであれば「ウチも融資はやめておこう」となりかねません。メインバンクに見限られるのは、危険な会社の兆候だからです。
なので、もし、メインバンクを意図的に入れ替えるのであれば、その理由や経緯を、ほかの取引銀行にも説明するようにしましょう。ただし、それとて信じてもらえるかはわからない、という点には注意が必要です。
まとめ
社長であれば、借入シェアを見ておきましょう。まずは、それを計算して把握するところからです。そのうえで、社長が借入シェアを見て確認すべきことについて、ぜんぶで3つお話をしてきました。
借入シェアは銀行が気にしているものの1つであり、融資の受けやすさにも影響するところですから、必ず確認をしておくようにしましょう。
- 預金とのバランスはどうか
- メインバンクはあきらかか
- 順位の入れ替わりはないか