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社長は連鎖倒産を甘くみてはいけない

社長は連鎖倒産を甘くみてはいけない

倒産が増えている、というニュースがあります。だとすれば、自社が連鎖倒産に巻き込まれる可能性が高まっているわけですが。連鎖倒産を甘くみている社長がいるので気をつけましょう、というお話です。

目次

連鎖倒産って何だっけ?

脱コロナのいま(2023年11月20日現在)、社長であれば「倒産が増えている」というニュースは見聞きしていることでしょう。

あわせて、信用保証協会の代位弁済(会社が返済できないため、信用保証協会が肩代わりして銀行に返済する)の件数が増加傾向で推移していることも、見逃せないニュースです。

この点、最近の円安や物価高騰、人手不足、ゼロゼロ融資の返済本格化などが、原因として挙げられています。コロナを乗り越えたとはいえ、厳しい経営環境にあるといってよいでしょう。

ではその「倒産」について、意外と社長が甘く見ているケースは少なくないようです。

そもそも、公表されている倒産件数を見る限り、国内の企業数から見ればわずかなものだ、考えていたり。うちの業績は悪くないのだから、うちは倒産などしない、と考えていたり。

では、お聞きします。「連鎖倒産」は想定しているでしょうか。連鎖倒産とは、文字どおり、他社の倒産のあおりを受けて、別の会社も連鎖的に倒産することをいいます。

と聞いて、ややもすると「いやいや、連鎖倒産だって想定している」とおもわれるかもしれませんが。それでも、社長は連鎖倒産を甘くみているといえる理由があります。おもに次のとおりです↓

社長が連鎖倒産を甘くみているといえる理由
  • 行方知れずもある
  • そもそも与信が甘い
  • 備えが不十分である

これらに当てはまるものがないか、確認をしておきましょう。1つでも当てはまるようなら、連鎖倒産を甘く見ている可能性があり、連鎖倒産に巻き込まれる可能性が高まります。

社長が連鎖倒産を甘くみているといえる理由

行方知れずもある

さきほど、「公表されている倒産件数を見る限り、国内の企業数から見ればわずかなもの」という話をしました。たしかに、公表されている倒産件数からみれば、そのとおりです。

国内の企業数に占める、倒産件数の割合は「ごくわずか」となるでしょう。ところが、公表されている倒産件数のなかには含まれていない、実質的に倒産した会社も存在しています。

その典型例が「行方知れずになった会社」です。イメージとしては、いわゆる「夜逃げ」が挙げられます。自社としては、明確に倒産したのかはわからないが、売上代金の回収はできない…

だとすれば、売上先が倒産したのと実質的には変わりません。自社にとって売上先の倒産が問題なのは、「売上代金が回収できない」ことなのであり、「本当に倒産したのかどうか」ではないはずです。

事実、長く事業を続けていれば、いちどくらいは「行方知れずになった売上先があった…」という経験をしている社長は、少なくないものと推測します。

したがって、公表されている倒産件数だけをもって、「ごくわずか」などと誤認しないように気をつけなければいけません。さらにいえば、行方は知れていても、売上代金を回収できないこともあるでしょう。

つまり、売上先が資金難におちいっており、売上代金をなかなか支払ってもらえないという状況です。これもまた、倒産に近い状態だといえます。

もし、その売上先が、自社にとって大口の売上先であれば、自社の資金繰りにも支障をきたして、最悪の場合には連鎖倒産…というおそれもあるわけです。

なので、公表されている倒産だけではなく、行方知れずや支払遅延など、実質的な倒産であれば、もっと身近なものであり、意外と起こりうる可能性が高いことを理解しておきましょう。

そもそも与信が甘い

こんなことをいうと怒られるかもしれませんが、中小企業の「与信管理は総じて甘い」といえます。では質問です。社長は売上先の「倒産可能性」を調査・把握しているでしょうか?

おそらく、わりと多くの中小企業では、具体的な調査などしておらず、定期的に把握をしようともしていないのではないか、と推測します。だとすれば、与信管理が甘いといってよいでしょう。

するとどうなるか?当然、連鎖倒産に巻き込まれる可能性が高まります。倒産する可能性が高い相手に商品を売り続けて、売掛金が増えていく。気がつけば相手が倒産して、売掛金が未回収に…

この点、日ごろから売上先の倒産可能性を調査していれば、売上先の変調(業績悪化)に気づきやすくはなるでしょう。では、どのように調査をすればよいのか。

相手との関係性にもよりますが、決算書の提出を要求する方法があります。とはいえ、それはちょっとできない、あるいは、決算書を見てもよくわからないというのであれば、信用調査会社を活用しましょう。

代表的なところでは、帝国データバンクがあります。売上先について、調査依頼をかけて、状況を調査してもらうわけです。ただし、1件あたり数万円ていどのコストがかかります。

そこまでのコストはかけられないというのであれば、1件あたり数千円ていどで、帝国データバンクや東京商工リサーチが所有する企業情報(信用情報)を取得するのもよいでしょう(G-Searchというサービスがおすすめです)。

なお、いちど調査をすればよいというわけではなく、定期的に調査をすることで、状況把握を続けることが大切になります。定期的に調査をするから、変調にも気づくというものです。

自社にとって大口の売上先についてはとくに、高頻度(1年に1回ていど)での調査をおこなうようにしましょう。いうまでもなく、倒産(実質的な倒産含む)したときの影響が大きいからです。

備えが不十分である

連鎖倒産についても想定している、と考えている社長にまたまた質問です。もし、大口の売上先が倒産したときには、自社の資金繰りが何ヶ月もつのかは把握していますか?

いや、そこまではちょっと…というのであれば、備えとしては不十分であり、連鎖倒産を甘く見ているともいえます。なので、いまから備えることにしましょう。資金繰り表の作成です。

このとき、「売上先の倒産」というシナリオを、資金繰り表に織り込むのがポイントになります。つまり、売上代金の未回収が発生した前提(もし、一番の売上先の売上代金が回収できなくなったら…?とか)で、資金繰り表を作成してみるわけです。

すると、自社の資金繰りがどれだけもつのかがわかります。もともと資金繰り表をつくっているという会社でも、「売上先の倒産」というシナリオを想定していないことが少なくありません。

資金繰り表はひとつだけつくるのではなく、複数のシナリオをつくることで、社長が「備え」をする参考になります。なのでぜひ、「売上先の倒産」というシナリオも用意しましょう。

そのうえで、いざシナリオが現実化したときの対策を講じる必要があります。1つの選択肢が、中小企業基盤整備機構が運営している「経営セーフティ共済(倒産防止共済)」です。

自社の取引先が倒産したときには、掛金総額の10倍(最大8,000万円)まで借入をすることができます。これがあれば、いざというときの備えとして役に立つでしょう。

なお、掛金は毎月5,000円〜20万円のあいだで自由に決められ、最大800万円まで掛金を積み立てることが可能です。掛金は経費扱いなので、黒字のときには税金を減らす効果もあります。

預金だけでは備えとして心もとない…ということであれば、経営セーフティ共済の加入も検討してみましょう。連鎖倒産に巻き込まれる可能性を減らすことができるはずです。

まとめ

倒産が増えている、というニュースがあります。だとすれば、自社が連鎖倒産に巻き込まれる可能性が高まっているわけですが。連鎖倒産を甘くみている社長がいるので気をつけましょう、というお話をしました。

2024年は、さらに倒産が増える可能性もあるため、より注意が必要です。今回のお話の内容を押さえて、連鎖倒産への備えをおすすめします。

社長が連鎖倒産を甘くみているといえる理由
  • 行方知れずもある
  • そもそも与信が甘い
  • 備えが不十分である
社長は連鎖倒産を甘くみてはいけない

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