銀行融資について、メインバンクという考え方がありますが。以前に比べると、その考え方も変える必要が生じています。そこで、社長がいまこそメインバンクについて考えるべきことをまとめました。
メインバンクの位置付けも変わりつつある。
銀行融資を受けている会社の社長であれば、「メインバンク」という言葉を聞いたことがあるでしょうし、知っているともおもわれることでしょう。
そのメインバンクについて、少し前と比べると考え方を変える必要が生じています。銀行を取り巻く状況が変わったことで、銀行にとっての「メインバンク」の位置付けも変わりつつあるからです。
そのあたり、具体的にどのような状況にあるのか?状況をふまえて、社長がいまこそメインバンクについて考えるべきこととは何なのか?おもなところでは次のとおりです↓
- メインバンク以外の銀行の支援は手薄になる
- 自社のメインバンクをよりわかりやすくする
- メインバンクとの対話の質・量ともに増やす
それではこのあと、順番に解説をしていきます。
社長がいまこそメインバンクについて考えるべきこと
メインバンク以外の銀行の支援は手薄になる
現状、銀行員の多忙が問題になっています。多忙が原因で離職も増えて、人手不足からいっそう多忙になる。ではなぜ、そんなにも多忙になってしまったのか?
長らく続く低金利を背景に、融資先獲得競争が続いたからです。低金利のなかでも収益をあげるには、できるだけ多くの会社におカネを貸す必要があります。
結果として、銀行の融資先は増えました。会社から見れば、融資を受けている銀行の数が増えた、ということです。銀行としては融資先が増えるほど、管理の手間と時間がかかります。
こうして、銀行員はどんどん多忙になっていったわけです。そのような状況を受けて、金融庁は銀行に対して、融資先の数を絞り込むことを求めるようになっています。
融資先の数が減れば、銀行員の数が増えなくても対応しやすくなる。さらに言えば、もっと手厚い支援ができるようになる。それによって融資先の業績がよくなれば、資金ニーズが増して、銀行はさらに融資ができるようにもなる。銀行の業績もよくなってWin-Winです。
では、融資先の数をどのように絞り込むのか。端的にいえば、融資金額が少ない融資先からは、手を引くということです。
これまでは、融資先獲得競争から少額でも融資をしていたところ、その姿勢をあらためて、自行にとって重要な融資先を重点的に支援しましょう。というのが、金融庁の求めです。
社長はまず、この状況(の変化)を理解しておかなければいけません。
さきほど、融資金額が少ない融資先からは、銀行が手を引くようになるといいました。会社の側から見れば、借入金額が少ない銀行からは手を引かれる可能性があるということです。
借入金額が少ない銀行とは、「メインバンク以外の銀行」と言い換えるのであれば、今後は、メインバンク以外の銀行からの支援は手薄になるかもしれない。その認識を持つようにしましょう。
自社のメインバンクをよりわかりやすくする
繰り返しですが、銀行は、融資金額が少ない融資先からは手を引くようになります。この点、自社の姿勢が中途半端だと、どの銀行からも手を引かれてしまうこともあるでしょう。
いろいろな銀行からちょこちょこと借入をしていることで、各銀行の借入残高が分散しているような会社はとくに、です。
もちろん、既存の借入をいきなり引き上げる(回収する)などということはないでしょうが、新規の融資には応じないというカタチで、会社は借入がしづらくなっていくことが考えられます。
また、銀行は融資先の数を絞り込むことで、重要な融資先に重点的に支援をするともいいました。ここでいう「支援」は、融資に限りません。融資先の経営全般に関わる、もっと広い範囲での支援です。
これもまた、金融庁が銀行に対して求めていることでもあり、「本業支援」などとも呼ばれます。融資先の本業(の業績)を良くするような貢献ができれば、融資先は成長できるわけで、すると、銀行も融資を増やせるのWin-Winというのは、さきほどお話をしたとおりです。
では、手厚く本業支援までしてくれる銀行とお付き合いをするにはどうしたらよいのか。いちばんは、自社にとってのメインバンクをわかりやすくすることです。
メインバンクとは、ひとことで言えば「借入残高がもっとも多い銀行」をいいます。よって、借入残高にメリハリをつけて、銀行から見てもメインバンクをわかりやすくすることが大切です。
銀行は、融資残高が多い融資先に重点を置くようになるのですから、メインバンクがはっきりしていれば、そのメインバンクからの支援が受けやすくなるでしょう。
融資獲得競争のなかで、取引銀行の数を増やしすぎてしまっている会社もあります。各銀行の借入残高を確認してみましょう。目安として、メインバンクの借入残高は「借入総額の5割以上」をおすすめします。
メインバンクとの対話の質・量ともに増やす
では、自社にとってのメインバンクがあきらかであれば、そのメインバンクからは手厚い支援が受けられるのか?というと、そういうわけでもありません。
手厚い支援とは融資に限らず、経営全般に関わる、もっと広い範囲での支援だといいました。その支援を実行する過程では、「経営課題の把握」が必要になります。
自社の経営において、どこに課題があるのかをメインバンクが把握できなければ、支援をしたくても支援のしようがないからです。よって、社長は経営課題を銀行に伝えられるようにしましょう。
といっても、社長自身が経営課題を把握していないことはあるものです。もし、アタマのなかでは思い描けているとしても、銀行員を前に言語化できなければ、伝えられないのといっしょです。
なので、経営課題の把握とは、経営課題の言語化を意味します。文字としてまとめるところからはじめましょう。ちなみに、経営課題の把握の前段には「現状分析」があります。
現状分析の方法として、メジャーなのは「SWOT分析」です。そこで、SWOT分析の結果をメインバンクの銀行担当者に見せて、経営課題についてディスカッションをしてみるのもよいでしょう。
現状分析について、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
メインバンクは、手厚い支援をしよう・したいと考えているはずですから、基本的には、ディスカッションにも応じてもらえます。それでも応じてもらえないのだとすれば、銀行側(あるいは銀行担当者個人)に支援をする気がないということかもしれません。
この場合、自社にとってのメインバンクを見直す必要性もあります。これからは、銀行ごとに本業支援の姿勢にも差があらわれるでしょうから、社長には「銀行(本業支援をしてくれる)を選ぶ目」が必須です。
取引銀行によって、自社の業績に差が出るのか?と疑問におもわれるかもしれませんが。実際に差が出ているとのデータも示されています。銀行はどこも同じ、ではありません。
まとめ
銀行融資について、メインバンクという考え方がありますが。以前に比べると、その考え方も変える必要が生じています。
というわけで、社長がいまこそメインバンクについて考えるべきことをまとめてみました。いままでと同じままでいると、銀行からの支援が受けづらくなる可能性があるので要注意です。
- メインバンク以外の銀行の支援は手薄になる
- 自社のメインバンクをよりわかりやすくする
- メインバンクとの対話の質・量ともに増やす