プロパー融資の必要性が高まっています。ゆえに、会社はこれまでのように保証付き融資が借りられればOK、というわけにはいきません。ではなぜ、プロパー融資の必要性が高まっているのか?
それってどういうこと?は要注意
会社の銀行融資について、プロパー融資の必要性が高まっています。と聞いて、「それってどういうこと?」とおもわれるのであれば気をつけましょう。今度、銀行から融資が受けにくくなる可能性があるからです。
そもそもプロパー融資とは、信用保証協会の保証がない融資であり、いわゆる保証付き融資の対局にあたります。会社が返済できなくなったときには、信用保証協会が肩代わりする保証付き融資に対して、プロパー融資の場合には肩代わりはありません。
ゆえに、銀行は保証付き融資に比べるとプロパー融資は貸しづらく、会社にとっては借りにくい融資です。それでも、これからはプロパー融資の必要性が高まり、会社はプロパー融資が受けられるようにならなければならない。
ではなぜ、プロパー融資の必要性が高まっているのか?おもな理由は次のとおりです↓
- 保証付き融資が厳しくなっている
- 官民協調の流れが進み出している
- 事業性評価に取り組む必要がある
それではこのあと、それぞれの理由を解説していきます。
プロパー融資の必要性が高まっている理由
保証付き融資が厳しくなっている
保証付き融資を、会社が返済できなくなるとどうなるか?信用保証協会が肩代わりをして、銀行に返済することは前述しました。これを「代位弁済」といいます。
その代位弁済が、コロナ以降、高水準で推移しているのはご存知でしょうか。全国信用保証協会連合会が毎月、信用保証実績のデータを公表しています。これによれば、令和5年度の代位弁済件数は、前年同月比で142.3%〜186.7%という高水準です。
つまり、借りても返済できなくなった会社が増えているということであり、信用保証協会としても、代位弁済をこれ以上は増やしたくなく、うかつにあらたな保証ができない状況にあります。
事実、保証債務残高は頭打ちです。あらたに保証承諾はしているものの、保証債務残高は増えていない。これは、既存融資の借り換えで対応していることをあらわしています。
なので、借り換えはできたとしても、あらたに額を増やすような融資を受けることは難しくなっている…というのが、保証付き融資の現状です。
倒産企業が増えているとのデータもあるうえに、来春には再び、ゼロゼロ融資の返済ピークを迎えることから、今後もしばらくはこの状況(保証付き融資が借りにくい)が続くものと想像します。
したがって、社長が「かつての保証付き融資」をイメージしていると、のちの資金繰りでおもわぬ苦労をすることはあるでしょう。保証付き融資なら借りられるだろうとタカをくくっていたら、実際には借りられませんでした…みたいなケースに注意が必要です。
保証付き融資が厳しくなるのなら、プロパー融資を受けられるようにならなければいけません。いちばんは、利益をきちんと出すことであり、加えて、銀行とのコミュニケーションの量・質を改善することが求められます。
官民協調の流れが進み出している
少し前のハナシになりますが、2018年に中小企業信用保険法の改正がありました。このなかには、「なんでもかんでも保証付き融資にするな」という内容が織り込まれています。
回収不能リスクを嫌って、プロパー融資を避けて保証付き融資ばかりにする銀行と、安易に保証付き融資ばかり受けようとする会社に、改善を促そうとする趣旨です。
具体的には、「信用保証協会が保証をするなら、あわせて銀行はプロパー融資もしなさいよ」ということになります。いわゆる「官民協調」です。
ところが、まもなくコロナ騒動が起きたために「それどころではなくなった」という経緯があります。結果はご存知のとおり、多額の保証付き融資(ゼロゼロ融資)ばかりとなりました。
その騒動もいよいよ収束し、脱コロナを迎えたいま、あらためて官民協調の流れが進み出している状況です。信用保証協会は、プロパー融資がない・少ない会社への保証は手控えますし、公的金融機関である日本政策金融公庫もまた、同様に考えています。
ですから、社長は「プロパー融資が受けられないと、公的融資が受けにくくなる」ことを覚えておきましょう。公的融資が受けにくくなれば、当然、資金繰りは悪くなってしまいます。
各信用保証協会の保証制度を見ていると、「民間銀行のプロパー融資(たとえば、5割以上の額など)と同時に実行」などというものも増えました。
今後は、この官民協調の流れが速くなること、そうなればプロパー融資を受けられるようにならなければいけないことを、社長は理解しておきましょう。
事業性評価に取り組む必要がある
流れ(トレンド)という点ではもうひとつ、「事業性評価」があります。事業性評価とは、「財務データの良し悪しや、担保・保証の有無に依存せず、事業の内容や将来性を評価する考え方」をいいます。
この点、金融庁は銀行に対して、事業性評価による融資を求めるようになりました。つまり、過去の数字(決算書の良し悪し)ばかり見ていないで、将来(事業の良し悪し)も見て審査をしなさいよ、と金融庁は言っているわけです。
そう言われてしまっては、銀行も無視はできません。もともと、事業性評価はコロナ前からいわれていたことですが、脱コロナを迎えて、いよいよ本格的に取り組みがはじまることになります。
ここで、プロパー融資です。前述したとおり、今後は官民協調の流れがあるのですから、銀行はリスクを負ってプロパー融資も増やさなければいけません。そのリスクをできるだけ抑えるためには、「目利き」が必要です。
その目利きにあたるものが「事業性評価」になります。とはいえ、事業性評価に取り組むにも、銀行独力では限度があるものです。なにせ、決算書だけを見ていても、事業の良し悪しまではわかりません。
よって、会社側の協力が必要になります。つまり、社長のほうから、事業性評価に役立つ情報を銀行へ提供する必要があるわけです。具体的には、経営理念・経営方針や、現状分析、経営課題、経営戦略、行動計画・数値計画など。
これまで、銀行には伝えてこなかった情報も、これからは伝えていくことが重要になります。ひいては、プロパー融資の受けやすさにつながるところであり、社長は「情報伝達」に積極的に取り組んでいきましょう。
まとめ
プロパー融資の必要性が高まっています。ゆえに、会社はこれまでのように保証付き融資が借りられればOK、というわけにはいきません。そこで、プロパー融資の必要性が高まっている理由をお話ししてきました。
- 保証付き融資が厳しくなっている
- 官民協調の流れが進み出している
- 事業性評価に取り組む必要がある
社長はこれらの理由を理解して、プロパー融資を受けられるように取り組みを進めていきましょう。プロパー融資が受けやすいタイミングなど、くわしくは動画にまとめましたので参考にどうぞ↓