銀行は晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる、とはいうけれど。それでも、銀行が雨の日でも差し出すときはあるものです。じゃあ、それはどんなときなのか?についてのお話です。
商売としては至極まっとう。
銀行の融資に対する姿勢を揶揄する表現として、「銀行は晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」というものがあります。
傘は「融資」をあらわし、晴れの日は「業績が良いとき」を、雨の日は「業績が悪いとき」をあらわしているのであり、つまり、会社が借りたいときには借りられず、借りる必要もないときばかりに貸そうとしてくる、といった感じです。
とはいえ、これを聞いた社長が、「銀行はなんて勝手なんだ!」と怒るようではいけません。なぜなら、「晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」のは商売として至極まっとうだからです。
銀行の貸し出し原資は、基本的に、預金者からあずかった預金であり、それを業績の悪い会社に貸した挙げ句、回収できなくなったら?結果、預金者が引き出しできなくなれば、タイヘンです。
だから、社長はまず、銀行が「晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」のは当然だ、ということを理解しておきましょう。そのうえで、晴れの日に融資を受けておくことが大切です。
少々前置きが長くなりましたが、ここからが今回の本題になります。それでも、銀行が雨の日でも差し出すのはどんなときなのか?おもなところでは、次のとおりです↓
- 世の中の緊急時
- 公的金融機関による融資
- メインバンクの役割として
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
銀行が雨の日でも差し出すのは?
世の中の緊急時
最近でいえば、新型コロナです。世の中全体の緊急時でした。経済活動が抑制されたことで、多くの会社の売上が減少し、ひいては資金繰りに大きなダメージが生じるという、まさに緊急時です。
そこで、国や地方自治体が主導のもと、融資が実行されていきました。代表例として、いわゆる「ゼロゼロ融資」が挙げられます。多くの会社が利用した融資です。
前述したとおり、本来であれば、業績が悪くなった会社に対して銀行は融資を躊躇します。雨の日には傘を取り上げる。ところが、コロナという雨は「例外」でした。
放っておけば(銀行が融資をしなければ)、多くの会社が資金ショートを起こしてつぶれてしまう。そうなれば、世の中は大混乱になります。だから、国は銀行に対して「貸しなさい」というメッセージを発しました。
いまなら、信用保証協会の保証を付けることで、たとえ会社が返済できなくなっても、銀行が損失をこうむらない(信用保証協会が肩代わりする)ように融資ができますよー、というメッセージです。
結果として、実際にも多件数・多額の融資が実行されました。
このような緊急時の融資は、コロナに限りません。かつての東日本大震災など自然災害においても、そのときどきで緊急時の特別対応が用意されます。
ただし、その特別対応を過信するのは危険です。なぜなら、緊急時には多くの会社が、特別対応に殺到します。銀行の窓口は混雑しますから、融資を受けるまでには時間がかかるのです。
そのとき、すでに資金が少なければ、融資を受けるまでに資金ショートを起こしてしまうこともあるでしょう。なので、そうはならないように、やはり晴れの日にうちに備えておくことです。
公的金融機関による融資
民間の金融機関(都市銀行、地方銀行、信用金庫など)に対して、公的金融機関があります。中小企業にとって代表的なのが、日本政策金融公庫です。
また、半官半民(完全民営化に向けて移行中)の商工中金も、公的金融機関の特徴をもった金融機関だといえます。
いずれにせよ、公的金融機関は、「雨の日でも傘を貸すことがある」のが特徴です。それはなぜなのか?公的金融機関には、「民間金融機関を補完する」という役割があるからです。
長く事業を続けていれば、赤字になることもあるでしょう。そのときに、すべての民間金融機関が「雨の日だから貸さない」となれば、たくさんの会社がつぶれてしまいかねません。
そういった民間金融機関が融資を躊躇するような場面であっても、「前向きに融資を検討する」のが公的金融機関です。誤解なきように申し添えると、絶対に融資をしてくれるわけではありません。
いまは雨だけど、近いうちに晴れるのかどうか?という視点でのチェックはあります。ですから、公的金融機関に融資を申し込むときでも、「いかに業績改善を実現できるか」の説明が求められることを社長は理解しておきましょう。
また、赤字の会社に加えて、創業したばかりの会社に対しても、銀行は融資を躊躇します。創業してまもなくつぶれてしまう会社は、けして少なくないからです。
この点、日本政策金融公庫は、創業融資にも積極的であることを覚えておくとよいでしょう。
なお、信用保証協会も「公的」な機関です。融資をするのは民間金融機関ですが、そこに信用保証協会が保証を付けることで、銀行が融資をしやすくする点では、保証付き融資は「公的金融機関による融資」と同様だといえます。
以上をふまえて、社長はふだんから、公的金融機関とのお付き合いもしておくこと(借入実績をつくっておくこと)が大事であり、保証付き融資についてはいざというときのために保証枠(限度額がある)を空けておくことが大切です。
メインバンクの役割として
メインバンクの定義について議論の余地はありますが、端的にいえば、メインバンクとは「借入残高が一番多い銀行」です。
借入が多いということは、一番融資をしてくれているということであり、一番融資をしてくれているということは、一番自社のことを評価してくれている銀行だといえます。
だとすれば、少々業績が悪くなったとき(雨の日)にでも、メインバンクが融資をしてくれることはあるものです。また、メインバンクが支援の姿勢を見せるからこそ、サブバンク以下の銀行も支援を検討することができます。
したがって、たとえ雨の日であっても、メインバンクの役割としてメインバンクが融資をしてくれることはあるわけです。ということは…?メインバンクが自社にとって重要だとわかるでしょう。
逆に、自社にメインバンクと呼べる銀行がなければ、いざというときには困ったことになります。ところが、メインバンクと呼べる銀行がない会社も散見されるところです。
複数の銀行から融資を受けているものの、どの銀行の借入残高も似たりよったり…結果として、どの銀行からも「ウチはメインバンクではない」と見られているような会社があります。
また、借入残高ばかり多くても、そのなかみがすべて保証付き融資だとしたら、メインバンクとは呼べません。銀行自身が、ぜんぜんリスクを負っていないからです。
よって、本来はプロパー融資(信用保証協会の保証が付かない融資)の残高がもっとも多い銀行が、メインバンクだといえます。とはいえ、一朝一夕にプロパー融資を受けられるものでもありません。
日ごろから、銀行との関係性を深めて、プロパー融資を受けられるようにしておきましょう。でないと、雨の日にはどの銀行からもそっぽを向かれることになりかねません。
まとめ
銀行は晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる、とはいうけれど。それでも、銀行が雨の日でも差し出すときはあるものです。じゃあ、それはどんなときなのか?についてお話をしました。
いちばんは、雨の日に傘を借りずに済むこと。晴れの日に借りておくことです。とはいえ、いざというときのために、雨の日でも借りられる「例外」を押さえておきましょう。
- 世の中の緊急時
- 公的金融機関による融資
- メインバンクの役割として