自社に関するネット情報は、銀行にみられているものと考えましょう。事業性評価や本業支援を背景に、ネット情報に対する銀行の注目度は高まっています。社長はいっそう注意が必要です。
銀行はなぜネット情報に注目するのか?
会社が銀行融資を受けるにあたって、社長が気をつけるべきことはいろいろあります。そのなかで、意外と抜け落ちているのが「自社に関するネット情報」です。
自社のWEBサイトはもちろん、各種メディアの掲載記事、ネット上における自社に関する口コミや書き込みなど、自社に関するネット情報は多岐にわたります。
銀行が融資を検討する際には、それらのネット情報にも目配りをしていると言ったら驚くでしょうか。
実際に、自社商品がSNSの投稿で話題になっているのを見たことをきっかけに、銀行担当者が積極的に融資を提案してきた例もあります。なお、銀行は「人の目」だけで見ているわけでもありません。
最近では、AIによる与信管理を導入する銀行もあります。つまり、前述したようなネット情報を、AIが自動的・効率的に収集するようなしくみを、銀行が導入しているということです。
だとすれば、「社長さえも気づいていなかったネット情報」を、銀行がつかんでいることもあります。場合によっては銀行融資に悪影響もあるので(具体例は後述)、気をつけなければいけません。
ではなぜ、銀行はネット情報に注目するのでしょうか?
事業性評価と本業支援です。いずれも、金融庁が銀行に対して求めています。まず、事業性評価とは「財務データや担保・保証の有無に限らず、事業の内容や成長性を評価する」という考え方です。
とはいえ、事業の内容や成長性を評価するには、これまでのように決算書を見ているだけではわかりません。そこで、多種多様なネット情報が注目されることになります。ネット情報から、融資先の「定性情報」を入手しようというわけです。
また、本業支援とは「融資先の事業支援」をいいます。銀行がそれを行うことで、融資先の成長をうながすことができれば、銀行はより融資をしやすくるなるのでWin-Winです。
この点、本業支援をするためには、融資先の「経営課題」を知ることが欠かせません。といえば、おわかりのことでしょう。ネット情報をもとに、経営課題をあぶりだそうというわけです。
以上をふまえて、自社に関するネット情報は、銀行に見られているものと考えておきましょう。
ネガティブ情報を把握し、対処する
ネット情報について、もう少し深掘りをしてみます。まずは、ネガティブ情報です。つまり、「自社に関するよくない情報」ですが、当然、銀行融資に対しては悪影響になります。
よって、社長はまず、ネガティブ情報を「把握」することが大切です。いわゆる「エゴサーチ(自社についてネットで検索して調べる)」が、もっともお手軽な方法になります。
自社名や自社商品名などで検索をして、ネガティブ情報が出回っていないかを確認してみましょう。Google検索に加えて、X(旧Twitter)などのSNSでも検索することも忘れずに。
場合によっては、自社の社員とおもわれる人が、自社に関する悪口やグチをこぼしていることもあります。そういった情報を銀行員が目にすれば、やはり、融資審査には悪影響です。
では、ネガティブ情報が把握できたらどうするか?もちろん、対処することです。火消しの必要があれば、会社として「意見表明」や「情報開示」をすべきこともあるでしょう。
たとえばネット上に、自社商品に対する不満や不安に関する情報が見られるのであれば、それらを解消・軽減するための情報発信が大切です。逆に放置をすれば、さらにネガティブ情報が拡散するおそれがあります。
また、社員による情報発信については、可能な限り管理をすることも検討しましょう。具体的には、SNSの利用ルールを明文化することです(SNS社内規程を作成するなど)。
SNSを通じて、社員が自社の機密情報を発信しないのは当然として、モラルを守ること、トラブルを起こさないようにすることについて、目安となるガイドラインを作成、周知するのがよいでしょう。
牽制の意味も込めて、ガイドラインを逸脱するような行為は、懲戒処分の対象になることを就業規則に明記するのも1つの方法です。
以上のような「対処」をしていることについて、折を見て、銀行に伝えていきましょう。ネット情報にも感度が高い会社、管理意識・能力が高い社長との評価につながります。
なお、ネット上で確認できるネガティブ情報については、会社のほうから銀行にも説明をすることも検討しましょう。何も説明をせずに、事実とは異なる推測を銀行にされるのも不利益です。
ポジティブ情報を積極的に発信する
ネガティブ情報に続いて、ポジティブ情報についても考えてみましょう。たとえば、自社の新商品・新サービスに関する情報や、顧客からの良いクチコミ、好業績、メディアに取り上げられた実績など。
そういったポジティブ情報があれば、積極的に発信をすることで、融資審査に良い影響を与えられることがあります。にもかかわらず、ポジティブ情報を発信していない会社が少なくありません。
自社のWEBサイトが、さっぱり更新されていない…というのは、その典型です。実際のところ、ポジティブ情報がまったくない会社もありませんから、WEBサイトはポジティブ情報を発信することで、定期的に更新しましょう。
繰り返しになりますが、新商品・新サービスができたら、WEBサイトでも告知すること。顧客からの良いクチコミを集めて、「顧客からの声」として、WEBサイトに掲載するのもよいでしょう。
社長や社員が現場で聞いているクチコミは、必ずしも、ネット上にまで広がるものではありません。なので、会社がみずから、クチコミを収集して、ネット上に広げる必要もあるわけです。
また、売上好調などの好業績であれば、可能な範囲で公表していくことも検討しましょう。会社全体の売上額は公表しづらくても、一商品・一サービスの売上額や売上数量、増加割合(前年比〇〇%アップ!みたいな)などであれば、公表できることもあるはずです。
メディアに取り上げられた実績は、銀行に対して良い印象を与えるものでもあります。取り上げられた内容を、会社のほうでまとめなおして、自社のWEBサイトに掲載するのもよいでしょう。
というように、ポジティブ情報はなにかしらあるものですし、自社WEBサイトを更新するネタもまた、なにかしらあるものです。銀行がネット情報に注目しているからこそ、ポジティブ情報の積極的な発信は、銀行融資対策にもなります。
まとめ
自社に関するネット情報は、銀行にみられているもおと考えましょう。事業性評価や本業支援を背景に、ネット情報に対する銀行の注目度は高まっています。社長はいっそう注意が必要です。
ネガティブ情報を把握し、必要に応じて対処すること。ポジティブ情報は積極的に発信していくことを進めていきましょう。