会社は不動産を持て、というハナシがありますが。そのハナシにはウソがある、ともいえるので気をつけなければいけません。不動産を持つことによるデメリットにも注目をしてみましょう。
もっともらしくはあるが気をつけるべきハナシ
ちまたには、「もっともらしくはあるが気をつけるべきハナシ」というものがあります。その一例が「会社は不動産を持て」です。でもなぜ、不動産が推奨されるのか?
端的にいえば、不動産の賃貸収入によって、本業収入の不安定さを補えるから。そして、不動産を所有することが、財務基盤の強化につながるから、という理屈です。
たしかに、賃貸収入が本業収入を補うことはあるでしょうし、不動産の担保価値によって融資が受けやすくなるといった、財務面でのメリットもあるでしょう。
また、融資の返済がおわれば、不動産の価値分だけ純資産が増加しますから、財務基盤はより強化されます。ですが、動産を持つことが必ずしも、会社にメリットをもたらすわけではありません。
むしろ、デメリットの大きい…ということもあります。だとすれば、「会社は不動産を持て」というハナシにはウソがある、ともいえるわけです。では、どのあたりがウソなのか?
おもなところでは次のとおりです↓
- 値下がりすることがある
- 管理コストがバカにならない
- 身軽ではいられなくなる
それではこのあと、順番に解説をしていきます。
「会社は不動産を持て」のウソ
値下がりすることがある
いうまでもありませんが、不動産の価格は変動をしています。よって、買ったときの価格よりも、いま現在の価格が値下がりすることはあるものです。
そのタイミングで売るとなれば、当然、損をします。また、売らないとしても、担保価値が下がることから、銀行融資が受けにくくなる…というのであれば、悪影響です。
もし、不動産を買わずに現金預金として保有をしていれば、そのようなことはありません。だとすれば、不動産を持つことがデメリットになったといえます。
この点、「会社は不動産を持て」というアドバイスは、値下がりのリスクを過小に見積もっているケースがあるので注意が必要です。では、値下がりをしないような不動産を買えばいい?
それがわかれば苦労はしません。実際、過去には不動産バブルがありました。多くの人たちが、「不動産の価値は上がり続ける」と思い違いをし、結果的には大きな損をこうむっています。
不動産投資を生業にしているような人であればともかく、本業の片手間に不動産賃貸を考えているような人が、「絶対に値下がりしない不動産」を見つけることは不可能だ、と考えておきましょう。
すでに、「含み損を抱えた不動産」が決算書に掲載されている会社も散見されます。それを見た銀行は、「融資をすれば、また同じような失敗(投資→含み損)をするかもしれない」とイメージするものです。
すると、融資が受けにくくなります。なので、不動産を持った結果、うまくいかなかった実績は、その後の銀行融資にも悪影響を与えることを忘れてはいけません。
管理コストがバカにならない
不動産を持つことで、賃貸収入を得ることができます。ですが、そのいっぽうで「管理コスト」も発生します。固定資産税や火災保険料、修繕費、広告宣伝費、支払利息など。
それらコストの見積もりが甘かったり、誤ったりすれば、コストが賃貸収入を上回ることも考えられます。つまり、不動産を持つことで、赤字を増やしてしまうこともありうるわけです。
この点、不動産賃貸を生業にしている人は別として、「ちょっと不動産賃貸をはじめてみました」みたいな人だと、管理コストを見過る可能性があることはわかるでしょう。
不動産の購入時には、売り手や仲介者などが、収支シミュレーションを提示してくれはするものの。そのシミュレーションに「甘さがないか(楽観的すぎないか)」を見極める目が必要です。
とはいえ、一朝一夕に見極められるほど、カンタンなものではありません。だから、不動産で失敗をする人が少なくないし、後を絶たないのです。
また、管理コストは「おカネ」のハナシだけではありません。「時間」や「心労」といったコストもあります。それらも、結果的にはおカネにつながるものではあり、無視できないコストです。
たとえば、不動産の維持管理について検討するためには、時間が必要になります。社長が、定期的・継続的に時間を取られ、その分、経営(本業)に充てる時間が削られるのはデメリットです。
検討するための直接的な時間ばかりではなく、経営のあいまにも、ちょいちょい不動産のことを考えてしまう(心労)のだとすれば、社長はさらに時間を奪われることになります。
その結果、経営がおろそかになれば利益が減るし、心労で体調を崩すようなことがあれば、やはり利益が減る…ひいては、おカネが減ることになりかねません。
不動産を持つことを考えるのであれば、収入だけではなく、管理コストにも目を向けましょう。
身軽ではいられなくなる
いちど不動産を持てば、そうカンタンに手放すというわけにもいきません。ちょっとおカネが必要だから、不動産を売ればいいとはいかないわけです。
少なくとも、預金を引き出す手軽さに比べれば、不動産を売っておカネにするのはタイヘンな手間だといえます。つまり、おカネを不動産に変えると、身軽ではいられなくなるのです。
それでも、売れればおカネになるのだからいいでしょ?というのであれば、気をつけましょう。
買ったときよりも、売るときに値下がりしているかもしれないことは前述したとおりです。そのうえで、売るときに借入(不動産を買うための)が残っていたらどうでしょう?
売ったはいいけど借入を完済できずに、むしろおカネがもっと必要になる…ということもありえます。となると、売るに売れません。
また、早く現金化したいからと売り急げば、買い手からは足元を見られるので、いっそう安い価格でしか売ることができなくなるものです。なので、高く売るためには時間も必要になります。
ちなみに、不動産を賃貸するのではなく、自社の事業で利用する場合もまた、身軽ではいられなくなるといえるでしょう。不動産を、事務所や店舗として利用している場合などです。
それらを移転をしたり、閉めたりするには、不動産を売る必要があります。いっぽうで、事務所や店舗を賃貸で借りていたのであれば、賃貸契約をおわらせればよいだけです。
不動産の売却と、賃貸契約の終了と、どちらが身軽であるかはいうまでもないでしょう。
まとめ
会社は不動産を持て、というハナシがありますが。そのハナシにはウソがある、ともいえるので気をつけなければいけません。不動産を持つことによるデメリットにも注目をしてみましょう。
動産を持つことが必ずしも、会社にメリットをもたらすわけではありません。
- 値下がりすることがある
- 管理コストがバカにならない
- 身軽ではいられなくなる