融資を受けやすくする方法を教えてください!という気持ちはわかりますが。ノウハウばかりに気を取られると、一番大事な方法を見過ごしてしまうかもしれませんよ、というお話です。
些末なテクニックを知りたがる。
社長や税理士の銀行融資支援をしていると、しばしば聞かれるのが「融資を受けやすくする方法」です。つまり、何をすれば融資が受けやすくなるのか?
この点、あれやこれやと「ノウハウ」を聞きたがる人もいるわけですが。忘れていはいけないことがあります。それは、融資を受けやすくする一番の方法は「利益を出すこと」、これです。
これを忘れて、さまざまなノウハウに手を出すのは本質からズレていますし、それらノウハウは「利益を出すこと」に比べたら些末なテクニックだといっても過言ではありません。
にもかかわらず、「利益を出すこと」がおざなりにされてしまうのはなぜなのか?利益を出すなど、そんなことはわかっている!と言いながらも、軽視されているのはなぜなのか?
このあと、そのあたりのお話をしてみようかとおもいます。
利益ありきでないと説得力がない
そもそも、「借りたおカネの返済原資は利益」が銀行の考え方です。これが赤字の会社となると、赤字の穴埋めとしておカネが必要になりますから、おカネを貸せば、穴埋めに使われておしまい…
ということはあるわけで、だから銀行は、赤字の会社を嫌うのです。すると、赤字の会社の社長は、「いまは赤字だけれど、これからは黒字になります(あるいは、します)」と言って、融資を受けようとします。
ところが、「いま赤字」の会社においては、「将来黒字」になるという蓋然性は低いものです。つまり、「黒字になります(あるいは、します)」という言葉は説得力に欠けてしまいます。
少なくとも、「いま黒字」の会社が、「将来も黒字です」というのに比べれば、説得力が欠けることはわかるでしょう。銀行は、「いま赤字なのに、どうやって黒字にするの?」と疑っているわけです。
もちろん、経営計画書をはじめ、いろいろな書類や情報を用意することで、その疑いをやわらげることはできますが。それでも、いま黒字の会社に比べれば、いま赤字の会社の計画書は信じてもらいにくいことはあきらかです。
なので、計画書を評価してもらうにもまた、利益が必要だということになります。ここは、意外と多くの社長が見過ごしているので気をつけましょう。
現状、利益が不十分なのに(受けようとしている融資に対して)、将来の利益(これからは売上が増えます!)を力説する社長が少なくないし、それを銀行からは冷ややかに見られていたりします。
だから、いま利益ありきが大事なのであり、利益ありきでないと社長の話にも説得力が出ないことを理解しておきましょう。融資を受けやすくする一番の方法は、利益を出すことなのです。
利益なき銀行対応は寝言である
などというと、「言い過ぎだ!」と叱られてしまいそうではありますが。それでもあえて、注意喚起としては間違っていないものと考えます。
たとえば、税理士やコンサルタントなどが、お客さまに銀行対応のアドバイスをするとして。さまざまなノウハウを惜しみなく伝えたとしても、「利益」に対するアドバイスがなければどうでしょう。
繰り返しになりますが、「借りたおカネの返済原資は利益」が銀行の考え方なのであり、融資を受けやすくする一番の方法は「利益を出すこと」です。
にもかかわらず、利益を出すことについてのアドバイスもなく(あるいはそこそこに)、ノウハウばかりの話をするのでは、片・手落ちというものでしょう。
言い換えると、各種ノウハウは、利益を出すこととセットではじめて、十分な効果を発揮するということです。だとすれば、利益なき銀行対応は寝言であるといえます。
もちろん、ノウハウ自体が悪いわけではなく、ノウハウも利益しだいで役立つものです。あくまで、「あわせて利益も忘れずに」というお話にすぎません。
わかった、わかった。何回、それ言うんだよ。利益を出すのは大事なことはわかったよ。そうおもわているかもですが。それでもなお、実際には、利益を出すことがおざなりにされてしまうのはなぜなのか?
利益を増やすのは社長の仕事
利益を出すことがおざなりになるのは、銀行対応をアドバイスする側(税理士やコンサルタントなど)から見れば、「それは社長の仕事だから」でしょう。
つまり、「利益を出すのはわたし(たち)にできることではない」ということであり、それができるのは社長であり、それをするのが社長の仕事だ。利益の増やし方を聞かれるのも困る…
そう考えているから、「利益を出すこと」というアドバイスが欠けてしまったり、そこそこにされてしまうことがあるわけです。
この点、たしかに、会社の利益を出すことは社長の仕事ではあるものの、それとアドバイスが不十分であることには関係がありません。
銀行融資を受けるにあたって、利益を出すことが一番の方法なのですから、「利益ありき」であることはアドバイスに含まれるべきものだと考えます。そのうえで、利益をどう増やすかは社長の仕事です。
などと、切り捨てるかのような言い方をすれば、「なんて冷たい」「なんて無責任な」とおもわれるかもしれませんが。利益を出すことへのアドバイスが不十分であるよりかは、冷たくもないし、無責任でもないでしょう。
とはいえ、利益を出すことが大事だなどと「あたりまえ」のことを言われても、「それができれば苦労はしない」と考えたくなるのが社長です。ゆえに、おざなりになります。
誤解を恐れずにいえば、現実逃避として、利益を出すことがおざなりになるし、目先のノウハウに逃げがちになるわけです。いやいや、そんな正論をぶちまけられてもねぇ…と、おもわれるかもしれません。
なので、利益を増やすための「具体的な方法」を考えるのは社長にしても、その過程としての「考え方」については、わたしもお話をするようにしています。
例を挙げるのなら、「節税を考えすぎないように」とか「値上げをしぶらない」とか。もっと、理屈めいた考え方もありますが(アンゾフの成長マトリクス、とか)、利益を増やすヒントは意外とシンプルなものだったりもします。
まとめ
融資を受けやすくする方法を教えてください!という気持ちはわかりますが。ノウハウばかりに気を取られると、一番大事な方法を見過ごしてしまうかもしれませんよ、というお話をしました。
一番大事な方法とは「利益を出すこと」です。銀行対応は、利益ありきで考えていきましょう。